脳神経

痛みの脳科学〜痛みを伝える神経伝達(RVM)

痛みには脳神経が関わっているというのが最近のトレンドとしてありますが、その中でもRVMと呼ばれるものが注目されることが多く、痛みの感じ方を調整していると考えられています。

ここで関連する文献を紹介しながら、RVMの働きについて迫っていきたいと思います。

 

ポイント

  • RVMは脳から脊髄への信号である下降性の神経伝達に関わっているとされています。
  • RVMには痛みを増強するオン細胞と痛みを抑制するオフ細胞があると考えられています。
  • 痛みを感じやすい人はRVMや脳幹などの活動量が変化し、下降性神経伝達に変化が生じている可能性が示唆されています。

 

吻側延髄腹内側部(RVM)

吻側延髄腹内側部は英語でRVM(rostral ventromedial medulla)などと呼ばれ、脊髄における痛みなどの神経伝達を調整する働きがあると考えられています。

(Bliss et al 2016より引用)

特に脳から脊髄への信号である下降性の神経伝達にRVMが関わっているとされています。

 

痛みを変える〜オン細胞とオフ細胞

RVMには痛みを増幅させるオン細胞と痛みを抑制させるオフ細胞、ニュートラル細胞の3種類があると考えられています2・3

  • オン細胞の働きにより痛みが増幅される可能性があることがマウスなどの動物実験により報告されています4・5
  • オフ細胞の働きにより痛みが減少する可能性があることがマウスなどの動物実験により報告されています6・7

これらの実験は主にマウスのRVMに化学物質を注入するといった方法がとられています。

どのような条件でオン細胞とオフ細胞が働くのかについて、まだまだわからないことはたくさんあるようです。

 

痛みを感じやすい状態

怪我を抱えている人達の中には痛みを感じやすくなっている人もいます。こういった事例にはRVMの働きが関わっていることもひとつの可能性として考えられます。

 

変形性膝関節症

変形性膝関節症とともに神経の働きにより痛みを感じやすくなっている人達の膝に刺激を加えた時の脳の働きをfMRI で調べたところ、痛みを感じやすい人達はRVMの働きが少しだけ高い傾向にあったことが報告されています

研究数もまだまだ少ないので、そこまで強い証明力があるわけではありません。

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中枢性感作(Central sensitization)

中枢神経の働きの異常により、人より痛みを感じやすくなっている状態を中枢性感作などと言います。

痛みと脳神経

中枢性感作を抱えている人の皮膚に刺激を加えたところ、脳幹(Brain stem)の働きが大きかったことが報告されています

RVMの直接の変化を捉えたわけではありませんが、脳幹とRVMの位置が近く、脳幹からRVMに神経伝達が行われることから関係性があるのではないか?と考えられています。

 

神経のネットワーク

痛みの神経伝達はRVMだけで決まるものではなくて、脳や脊髄の他の神経細胞の働きにも影響されます

痛みを感じやすい時には脳の他の部位の活動も変化し10、そういったところからの下降性神経伝達の中でRVMが関係してきます。

(Heinricher et al 2009より引用)

PAG; periaqueductal gray(水道周囲灰白質)

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ACC; anterior cingulate cortex(前帯状皮質)

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Amy; amygdala(扁桃体)

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そして、痛みには脳神経だけの働きだけでなく末梢神経の働きなども関与してきます。

数多くの要素が関与しているため、どのように痛みを認識し神経伝達しているのか?痛みと脳科学はとても奥が深い分野です。

感覚受容器

 

まとめ

RVMは痛みを増強したり抑制する働きがあり、他の脳の部位とのネットワークによって機能していると考えられます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Bliss TVP, Collingridge GL, Kaang B-K, Zhuo M. Synaptic plasticity in the anterior cingulate cortex in acute and chronic pain. Nat Rev Neurosci. 2016;17(8):485-496. doi:10.1038/nrn.2016.68
  2. Heinricher MM. Pain Modulation and the Transition from Acute to Chronic Pain. Adv Exp Med Biol. 2016;904:105-115. doi:10.1007/978-94-017-7537-3_8
  3. Heinricher MM, Tavares I, Leith JL, Lumb BM. Descending control of nociception: Specificity, recruitment and plasticity. Brain Res Rev. 2009;60(1):214-225. doi:10.1016/j.brainresrev.2008.12.009
  4. Heinricher MM, Neubert MJ. Neural basis for the hyperalgesic action of cholecystokinin in the rostral ventromedial medulla. J Neurophysiol. 2004;92(4):1982-1989. doi:10.1152/jn.00411.2004
  5. Kovelowski CJ, Ossipov MH, Sun H, Lai J, Malan TP, Porreca F. Supraspinal cholecystokinin may drive tonic descending facilitation mechanisms to maintain neuropathic pain in the rat. Pain. 2000;87(3):265-273. doi:10.1016/S0304-3959(00)00290-6
  6. Buhler AV, Choi J, Proudfit HK, Gebhart GF. Neurotensin activation of the NTR1 on spinally-projecting serotonergic neurons in the rostral ventromedial medulla is antinociceptive. Pain. 2005;114(1-2):285-294. doi:10.1016/j.pain.2004.12.031
  7. Urban MO, Smith DJ. Localization of the antinociceptive and antianalgesic effects of neurotensin within the rostral ventromedial medulla. Neurosci Lett. 1994;174(1):21-25. doi:10.1016/0304-3940(94)90109-0
  8. Soni A, Wanigasekera V, Mezue M, et al. Central Sensitization in Knee Osteoarthritis: Relating Presurgical Brainstem Neuroimaging and PainDETECT-Based Patient Stratification to Arthroplasty Outcome. Arthritis Rheumatol. 2019;71(4):550-560. doi:10.1002/art.40749
  9. Lee MC, Zambreanu L, Menon DK, Tracey I. Identifying brain activity specifically related to the maintenance and perceptual consequence of central sensitization in humans. J Neurosci. 2008;28(45):11642-11649. doi:10.1523/JNEUROSCI.2638-08.2008
  10. Zambreanu L, Wise RG, Brooks JCW, Iannetti GD, Tracey I. A role for the brainstem in central sensitisation in humans. Evidence from functional magnetic resonance imaging. Pain. 2005;114(3):397-407. doi:10.1016/j.pain.2005.01.005

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