脳神経

痛みの脳科学〜慢性痛を軽減させるには?

痛みには脳神経が関わっているというのが最近のトレンドとしてあります。

痛みと脳科学に関して解明されていないことがたくさんある中で、脳神経によって増幅されてしまった痛みを軽減させるヒントとして現在の痛みと脳科学に関する研究をご紹介したいと思います。

 

ポイント

  • 痛みに対する認識や恐怖などの心理的要因・社会的要因によって痛みが増幅されることもあるようです。
  • 成功体験を積み重ねてポジティブな認識に書き換えることで痛みが軽減されることがあります。
  • 負傷部位の治療やリハビリも大切であり、脳神経に対するアプローチに強い科学的根拠があるとは限りません

 

前提として

痛みは脳や神経を介して認識されますが、だからといって脳神経の中だけに存在するものではなくて、現実に負傷部位に異常が起きていることで痛みが起きている可能性が十分にあるわけです。

ですので、まずは負傷部位の治療やリハビリの優先度が高く、まずはこちらをしっかりと行うことが大切です。

そうした前提の中で、ちょっとしたことで過剰に痛みを感じてしまう、そんな時に脳神経の働きによって痛みが増幅されている可能性が考えられるわけです。

 

認知行動療法

痛みの脳科学に関する文献では、痛みを軽減させるために認知行動療法が紹介されることがよくあります。

認知行動療法

  • 慢性痛は心理的・社会的要因によっても引き起こされると考えられており、認知行動療法によって慢性的な痛みが改善することが報告されています1・2
  • 主にポジティブ思考、リラクゼーション、痛み以外の感覚に注意を払う、定期的な運動、社会的サポートを得る、症状や痛みに関する教育などが行われています

このように慢性痛に対して効果があるとする研究結果は複数みられるものの、あくまで腰痛などの症状に対する研究が多く、

脳などの中枢神経によって痛みが増幅されている状態、いわゆる中枢性感作(Central sensitization)に対する効果を検証した研究は数が少ない印象を受けています。

 

恐怖による痛みの増幅

恐怖がネガティブな感情が痛みを増幅させる可能性があります。

これは身体に悪いことを遠ざけようとする防衛本能による働きかもしれません。

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このため過剰に恐怖を抱かせるようなものやネガティブな感情になってしまうようなアプローチは避けた方が無難と言えるかもしれません。

しかし、痛みや恐怖を避け続けて何もしないことが最善の選択であるとは限らないことに注意が必要です

 

成功体験の積み重ね

脳には痛みや恐怖といった負の感情が記憶されている可能性があります。

この負の記憶をポジティブなものに書き換えることが重要になってきます。

特に、エクササイズなどを通して、「できる!」という成功体験を積み重ねて自信をつけていくことが痛みを改善するのに役に立ちます

危険を感じないように安心できる環境を保ちつつ取り組む、ということが大切です。

 

言葉にするととても簡単に聞こえるのですが、実際には専門家としての経験に裏付けされた絶妙なさじ加減が必要になってくることが多いかと思います。

 

認知行動療法による脳の変化

認知行動療法によって慢性的な痛みが改善するとともに、痛みと関係があるとされている脳の部位の働きが変化する可能性が示唆されています。

神経伝達ニューロン

  • 認知行動療法により脳の前部のネットワークと扁桃体の機能的結合が変化することが報告されています
  • 脳の前部のネットワークと水道周囲灰白質(PAG)における機能的結合が変化することが報告されています
  • 大脳基底核と体性感覚野(somatosensory cortex)における機能的結合が変化することが報告されています

このように脳の認識を変えることで、痛みに関連する脳の部位の働きが変化する可能性があるようです。

繰り返しになりますが、これは慢性痛に対する効果であり中枢性感作(Central sensitization)に対する効果を検証した研究は数が少ない印象を受けています。

 

まとめ

基本的には負傷部位の治療やリハビリの優先度が高いのですが、状況によっては脳の認識をポジティブなものに書き換えてみる、心理的・社会的要因へのアプローチという選択肢もありかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Shpaner M, Kelly C, Lieberman G, et al. Unlearning chronic pain: A randomized controlled trial to investigate changes in intrinsic brain connectivity following Cognitive Behavioral Therapy. Neuroimage Clin. 2014;5:365-376. doi:10.1016/j.nicl.2014.07.008
  2. Naylor MR, Keefe FJ, Brigidi B, Naud S, Helzer JE. Therapeutic Interactive Voice Response for chronic pain reduction and relapse prevention. Pain. 2008;134(3):335-345. doi:10.1016/j.pain.2007.11.001
  3. Macedo LG, Smeets RJEM, Maher CG, Latimer J, McAuley JH. Graded activity and graded exposure for persistent nonspecific low back pain: a systematic review. Phys Ther. 2010;90(6):860-879. doi:10.2522/ptj.20090303
  4. Nijs J, Lluch Girbés E, Lundberg M, Malfliet A, Sterling M. Exercise therapy for chronic musculoskeletal pain: Innovation by altering pain memories. Man Ther. 2015;20(1):216-220. doi:10.1016/j.math.2014.07.004
  5. Kucyi A, Salomons TV, Davis KD. Mind wandering away from pain dynamically engages antinociceptive and default mode brain networks. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013;110(46):18692-18697. doi:10.1073/pnas.1312902110

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