怪我をした後には筋力が低下してしまい、これが簡単には元に戻らないことでさらなる怪我の悪化につながる可能性があります。
リハビリを長期間頑張ったとしても怪我により身体や神経へと影響を及ぼし、特に前十字靭帯断裂後は簡単には筋力が元に戻らないと言われています。
ポイント
- 前十字靭帯損傷後はリハビリをしたとしても100%元に戻すことは簡単ではありません
- 前十字靭帯損傷が神経にも影響を及ぼすことも簡単に筋力が戻らない理由のひとつと考えられています
- それでも前十字靭帯損傷後に筋力をつけることは機能回復や、さらなる怪我の予防のためにも大切です
Contents
リハビリをしても簡単には筋力が戻らない?
手術後に長期間にわたってリハビリを行うことで一定程度の筋力を獲得することができますが、
前十字靭帯損傷後はリハビリをしたとしても100%元に戻らない可能性があります。
とある研究で前十字靭帯損傷の2年後に筋力を評価したところ、リハビリにより一定程度は回復しているのですが100%元には戻っていなかったことが確認されています1。
(Palmieri-Smith and Thomas 2009より引用)
これはどれくらい鍛えたのか?という要素も関係していますが、簡単には元に戻らない別の理由があるのではないかと考えられています。
神経の機能低下による影響?
前十字靭帯の損傷が神経にも影響を及ぼし、これが筋力が簡単には戻らない理由のひとつであると考えられています1。
(Palmieri-Smith and Thomas 2009より引用)
例えば、大腿四頭筋の働きが前十字靭帯に負荷を与えてしまう性質があるため、これを本能的にブロックしているのではないか?と考えられています。
痛みや腫れが筋力低下に影響している?
神経の制御を再現するかのように、次の図のように健康な人の膝に食塩水を注入することで大腿四頭筋の神経の働きが鈍くなってしまうということが報告されています3。
(Palmieri et al 2004より引用)
この実験は怪我を完全に再現したものではありませんが、膝の状態が変わることで神経に影響を及ぼし、それが筋力にも影響する可能性があることを示しているかと思います。
大腿四頭筋の筋力不足が怪我のリスクに
大腿四頭筋の筋力が弱いことはスポーツ復帰後の再断裂のリスクや、将来の変形性膝関節症へとつながるリスクがあります。
基本的には筋肉を鍛えることで身体を守る機能があると考えられているため、やはり筋力をしっかりと鍛えておくことは怪我を防ぐ上でもとても重要になってきます。
前十字靭帯断裂後の筋力回復方法
通常の筋力トレーニングだけではなかなか筋力が回復しないことから、前十字靭帯断裂後の筋力回復方には色々な方法が考案されています。詳しくは次の記事をご覧ください。
まとめ
このように膝の怪我をすることで筋力発揮に何らかのブロックがかかってしまい、リハビリをしたとしてもそう簡単には筋肉が元に戻りにくい可能性があります。
筋力が簡単に戻らないことでさらなる怪我へと発展する可能性があるため、しっかりとトレーニングを行い、怪我の予防につとめることが大切になってきます。
<参考文献>
Palmieri-Smith RM, Thomas AC. A neuromuscular mechanism of posttraumatic osteoarthritis associated with ACL injury. Exerc Sport Sci Rev. 2009;37(3):147-153.
Slemenda C, Heilman DK, Brandt KD, et al. Reduced quadriceps strength relative to body weight: a risk factor for knee osteoarthritis in women? Arthritis Rheum. 1998;41(11):1951-1959.
Palmieri RM, Tom JA, Edwards JE, et al. Arthrogenic muscle response induced by an experimental knee joint effusion is mediated by pre- and post-synaptic spinal mechanisms. J Electromyogr Kinesiol. 2004;14(6):631-640.