脳神経

神経への負荷と神経伝達の変化

スポーツの何気ない動きの中でも神経へ負荷がかかることがあります。神経が過度に引き伸ばされたり、圧迫するような負荷は神経伝達に影響を与えることがあり、そのメカニズムを少しでも知ることで怪我を減らすことにつながるかもしれません。

 

ポイント

  • 神経を伸ばしすぎたり圧迫しすぎると神経伝達が低下する可能性があります。
  • 血流の変化など様々な要因によっても神経伝達が変化していきます。
  • 神経を適度に動かしたりすることで負荷を減らせるかもしれません。

 

神経への負荷

スポーツの何気ない動きの中で神経が引き伸ばされたり、圧迫されたりと負荷を受けることがあります。

投球動作

当然ながら負荷の種類や強さによって神経への影響が変わってきます1・2

負荷によって一定程度の時間で完全に回復することがあれば、強すぎる負荷によって神経伝達が完全に遮断されてしまうこともあります

神経

 

神経の構造の変化

構造によって伝達速度が変わってくる可能性があることが示唆されています

神経細胞

神経が引き伸ばされたり圧迫されたりすることで神経の構造が微妙に変化し、神経伝達速度などに影響が及ぶことがあるようです。

 

活動電位による影響

負荷によって神経伝達が阻害される要因のひとつに細胞内での変化が考えられます。

活動電位

神経が引き伸ばされたり圧迫されたり、負荷がかかることで活動電位(Action potential)に影響を及ぼします5・6

ただ、活動電位に加えて神経の腫れや血流量の減少なども同時に観察されており7・8、複数の要因から影響を受けていると考えられます。

 

血流による影響

神経の近くに血管が通っていることが珍しくなく、血流が神経伝達に影響を及ぼしている可能性があります。

神経血管

 

  • 神経への圧迫と血流制限が組み合わさることで神経伝達の低下が大きくなる傾向にあるようです
  • 野球の投球動作において血流制限が起きやすいコッキングフェーズの姿勢において、野球選手の握力と血流量に相関関係がみられたことが報告されています10
  • ピッチャーの利き腕の血流量は減少しやすい傾向にあるようです11・12

投球動作

 

  • 神経を伸ばしすぎると血流量が減少し、神経伝達速度も低下するようです13
  • 神経を適度な力で伸ばすとその後反発的に血流量が増加し、神経伝達速度の大きな低下はみられないようです13

 

このように血流が制限されるとことで神経伝達の働きに影響を及ぼす可能性があります。

血管が神経の近くを通っていることが多いことから、明確に神経と血流の区別が難しいケースも多々あるかとは思います。

 

神経のケアについて

神経をケアするために神経を伸ばしたり動かしたりすることがあります。

例えば、野球選手のストレッチのルーティーンの一環で神経へのアプローチを組み込んでいるチームもあります。(いい写真がみつけられずすいません)

(Coppieters and Butler 2008)

適度に伸ばすことは神経伝達の阻害も少なく血流量が増加します13

そして、ただ神経を伸ばすだけではなく神経をスライドさせているという側面もあります。

神経がある程度自在にスライドできることで、スポーツの動きなどで神経が過度に引き伸ばされるのを防ぎやすくなります。

当然ながら使用するテクニックによって伸ばされ方(tension)やスライド(excursion)など神経への負荷が違ってきます14・15

 

”Motion is lotion” (モーションはローション)という格言があるように、過度に引き伸ばさなくても動かすことで徐々に動きが滑らかになっていきます。

そして神経を動かすことで神経細胞周りの血液などが循環するという効果もあるようです16

 

まとめ

神経への負荷やその種類によって神経伝達や筋肉などにも影響を及ぼす可能性があります。そのメカニズムを理解していくことが役に立つかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Singh A, Kallakuri S, Chen C, Cavanaugh JM. Structural and Functional Changes in Nerve Roots Due to Tension at Various Strains and Strain Rates: An In-Vivo Study. Journal of Neurotrauma. 2009;26(4):627-640.
  2. Fowler SS, Leonetti JP, Banich JC, Lee JM, Wurster R, Young MR. Duration of neuronal stretch correlates with functional loss. Otolaryngol Head Neck Surg. 2001;124(6):641-644.
  3. Wall EJ, Massie JB, Kwan MK, Rydevik BL, Myers RR, Garfin SR. Experimental stretch neuropathy. Changes in nerve conduction under tension. J Bone Joint Surg Br. 1992;74(1):126-129.
  4. Wu LMN, Williams A, Delaney A, Sherman DL, Brophy PJ. Increasing internodal distance in myelinated nerves accelerates nerve conduction to a flat maximum. Curr Biol. 2012;22(20):1957-1961.
  5. Stecker MM, Baylor K, Wolfe J, Stevenson M. Acute nerve stretch and the compound motor action potential. J Brachial Plexus Peripher Nerve Inj. 2011;6(1):4.
  6. Stecker MM, Baylor K, Chan YM. Acute nerve compression and the compound muscle action potential. J Brachial Plex Peripher Nerve Inj. 2008;3:1.
  7. Yoshii Y, Nishiura Y, Terui N, Hara Y, Saijilafu null, Ochiai N. The effects of repetitive compression on nerve conduction and blood flow in the rabbit sciatic nerve. J Hand Surg Eur Vol. 2010;35(4):269-278.
  8. Yayama T, Kobayashi S, Nakanishi Y, et al. Effects of graded mechanical compression of rabbit sciatic nerve on nerve blood flow and electrophysiological properties. J Clin Neurosci. 2010;17(4):501-505.
  9. Kanaya F, Breidenbach WC, Firrell JC. Functional degradation of the rabbit sciatic nerve during noncompressive segmental ischemia. J Orthop Res. 1996;14(2):324-328.
  10. Laudner K, Vazquez J, Selkow N, Meister K. Strong Correlation of Upper-Extremity Blood-Flow Volume With Grip Strength While in a Provocative Shoulder Position in Baseball Pitchers. J Sport Rehabil. 2017;26(4):234-237.
  11. Laudner KG, Selkow NM, Burke NC, Lynall RC, Meister K. Decreased blood flow in the throwing arm of professional baseball pitchers. J Shoulder Elbow Surg. 2014;23(12):1753-1756.
  12. Laudner K, Selkow N, Burke N, Meister K. Upper extremity blood flow changes in professional baseball pitchers between two consecutive seasons. J Shoulder Elbow Surg. 2015;24(7):1069-1073.
  13. Driscoll PJ, Glasby MA, Lawson GM. An in vivo study of peripheral nerves in continuity: biomechanical and physiological responses to elongation. Journal of Orthopaedic Research. 2002;20(2):370-375.
  14. Coppieters MW, Butler DS. Do “sliders” slide and “tensioners” tension? An analysis of neurodynamic techniques and considerations regarding their application. Man Ther. 2008;13(3):213-221.
  15. Coppieters MW, Alshami AM. Longitudinal excursion and strain in the median nerve during novel nerve gliding exercises for carpal tunnel syndrome. Journal of Orthopaedic Research. 2007;25(7):972-980.
  16. Gilbert KK, Smith MP, Sobczak S, James CR, Sizer PS, Brismée J-M. Effects of lower limb neurodynamic mobilization on intraneural fluid dispersion of the fourth lumbar nerve root: an unembalmed cadaveric investigation. J Man Manip Ther. 2015;23(5):239-245.

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