脳神経

痛みの脳科学〜痛みを抑制する神経伝達(PAG)

痛みには脳神経が関わっているというのが最近のトレンドとしてありますが、その中でもPAGと呼ばれる部位も脳神経のネットワークや神経伝達に影響を及ぼし、痛みの抑制に関わっていると考えられています。

ここで関連する文献を紹介しながら、PAGの働きについて迫っていきたいと思います。

 

ポイント

  • PAGは脳神経の一部であり痛みの抑制に関わっていると考えられています。
  • 慢性的な腰痛を抱えている人はPAGの活動の低下や、他の脳神経との連携に変化が生じているようです。
  • 鎮痛薬や認知行動療法などによる痛みの軽減には、PAGの働きや周辺の脳神経のネットワークの変化が伴うようです。

 

PAG(Periaqueductal Gray)について

PAGとはperiaqueductal gray(水道周囲灰白質)と呼ばれる脳神経の組織であり、痛みの抑制に関わっていると考えられています

(Linnman et al 2012より引用)

PAGは他にも感覚入力などにも関わっているとされています。

 

痛みの神経伝達(下降性疼痛抑制系)

PAGからRVMを介して脊髄へと下降性の神経伝達により痛みを抑制する働きがあると考えらています。

(Heinricher et al 2009より引用)

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痛みの脳科学〜痛みを伝える神経伝達(RVM)

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PAGの損傷

PAGの損傷で頭痛がひどくなる傾向があることが報告されています

諸説ありますが、PAGが痛みの抑制に関わっていることが考えられるのではないでしょうか。

頭痛

あくまでこの研究は多発性硬化症を対象にしたもので、他の怪我にも同じようなことが起こるかはわかりません。

 

PAGと痛み

PAGの活動量と痛みには関連性があると考えられています。

(Petrovic et al 2002より引用)

  • 鎮痛作用のあるモルヒネを投与すると、PAGを含めた複数の脳神経の活動に変化がみられるようです
  • プラセボ効果とオピオイド鎮痛薬の両方に痛みを減少させる効果、それと同時にPAGの働きを増加させることが確認されています
  • 別の研究でもプラセボに痛みを減少させる効果とPAGの働きを増加させることが確認されています
  • 痛みではなく別のことに集中している時には痛みを感じにくい傾向にあるのですが、この時にはPAGの活動量が増加していたことが報告されています

このようにPAGの活動量が痛みに何らかの影響を及ぼしているのかもしれません。

 

腰痛など

慢性的な腰痛を抱えている人達はPAGが適切に働いていないこともあるようです。

  • 慢性的な腰痛を抱えている人に不快な刺激を与えたところ、PAGの活動量が低い傾向にあったそうです
  • 慢性的な腰痛を抱えている人はPAGと前頭前皮質腹内側部(vmPFC)及び前帯状皮質(ACC)における脳の機能的結合に変化がみられたことが報告されており、強い痛みを与えたときに機能的結合が弱まる傾向にあったそうです
  • 一方で痛みを感じやすい人はPAGの活動が多かったとする研究結果もあります10単純にPAGの活動量が高ければいい、低ければいいというようなシンプルなものではないようです。

PAGの働きが腰痛による痛みの感じ方と何らかの関係があるのかもしれませんね。

 

PAGへの刺激と痛みの変化

PAGに刺激を加えることで痛みが軽減することがあるようです。

  • PAGを刺激することで痛みが軽減されることが報告されています11
  • PAGの刺激には血圧を下げる効果も報告されています12。副交感神経の働きなども関係しているのかもしれません。

しかし、この方法は手術などが伴うためあまり現実的ではないかもしれません。

 

認知行動療法による脳神経の変化

脳神経による痛みの対処として認知行動療法が紹介されることがよくあります。

認知行動療法によって脳の働きが変化し、それが脳神経による痛み改善に関わっている可能性が考えられています。

  • 慢性痛を抱える人達を対象とした認知行動療法により前部の脳のネットワークとPAGの安静時の機能的結合が弱まることが報告されています13

研究数もまだまだ少なく、詳細なメカニズムはわかりませんが、脳の認知などが慢性痛の軽減や脳神経のネットワークに何らかの変化が起こるようです。

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脳神経のネットワーク

痛みは脳の特定の部位だけで決まるわけではなく、複数の脳の部位とのネットワークによる神経伝達が行われています。

(Linnman et al 2012より引用)

これらの脳神経のネットワークを理解することで、より痛みに関する脳科学を理解しやすくなると思います。

 

まとめ

痛みを抑制する神経伝達にPAGの働きが関わっており、さらには周辺の脳神経のネットワークの働きによって痛みの感じ方が変化していくのではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Linnman C, Moulton EA, Barmettler G, Becerra L, Borsook D. Neuroimaging of the periaqueductal gray: State of the field. NeuroImage. 2012;60(1):505-522. doi:10.1016/j.neuroimage.2011.11.095
  2. Heinricher MM, Tavares I, Leith JL, Lumb BM. Descending control of nociception: Specificity, recruitment and plasticity. Brain Res Rev. 2009;60(1):214-225. doi:10.1016/j.brainresrev.2008.12.009
  3. Gee JR, Chang J, Dublin AB, Vijayan N. The association of brainstem lesions with migraine-like headache: an imaging study of multiple sclerosis. Headache. 2005;45(6):670-677. doi:10.1111/j.1526-4610.2005.05136.x
  4. Becerra L, Harter K, Gonzalez RG, Borsook D. Functional magnetic resonance imaging measures of the effects of morphine on central nervous system circuitry in opioid-naive healthy volunteers. Anesth Analg. 2006;103(1):208-216, table of contents. doi:10.1213/01.ane.0000221457.71536.e0
  5. Petrovic P, Kalso E, Petersson KM, Ingvar M. Placebo and opioid analgesia-- imaging a shared neuronal network. Science. 2002;295(5560):1737-1740. doi:10.1126/science.1067176
  6. Scott DJ, Stohler CS, Egnatuk CM, Wang H, Koeppe RA, Zubieta J-K. Placebo and Nocebo Effects Are Defined by Opposite Opioid and Dopaminergic Responses. Arch Gen Psychiatry. 2008;65(2):220. doi:10.1001/archgenpsychiatry.2007.34
  7. Tracey I, Ploghaus A, Gati JS, et al. Imaging Attentional Modulation of Pain in the Periaqueductal Gray in Humans. J Neurosci. 2002;22(7):2748-2752. doi:10.1523/JNEUROSCI.22-07-02748.2002
  8. Giesecke T, Gracely RH, Clauw DJ, et al. [Central pain processing in chronic low back pain. Evidence for reduced pain inhibition]. Schmerz. 2006;20(5):411-414, 416-417. doi:10.1007/s00482-006-0473-8
  9. Yu R, Gollub RL, Spaeth R, Napadow V, Wasan A, Kong J. Disrupted functional connectivity of the periaqueductal gray in chronic low back pain. Neuroimage Clin. 2014;6:100-108. doi:10.1016/j.nicl.2014.08.019
  10. Petrovic P, Ingvar M, Stone-Elander S, Petersson KM, Hansson P. A PET activation study of dynamic mechanical allodynia in patients with mononeuropathy. PAIN®. 1999;83(3):459-470. doi:10.1016/S0304-3959(99)00150-5
  11. Bittar RG, Kar-Purkayastha I, Owen SL, et al. Deep brain stimulation for pain relief: a meta-analysis. J Clin Neurosci. 2005;12(5):515-519. doi:10.1016/j.jocn.2004.10.005
  12. Green AL, Wang S, Owen SLF, et al. Stimulating the human midbrain to reveal the link between pain and blood pressure. Pain. 2006;124(3):349-359. doi:10.1016/j.pain.2006.05.005
  13. Shpaner M, Kelly C, Lieberman G, et al. Unlearning chronic pain: A randomized controlled trial to investigate changes in intrinsic brain connectivity following Cognitive Behavioral Therapy. Neuroimage Clin. 2014;5:365-376. doi:10.1016/j.nicl.2014.07.008

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