前十字靭帯損傷

スポーツの複雑な状況で前十字靭帯への負荷が高まる

スポーツには相手選手やボールの動きなど複雑な状況が生まれやすく、こういった状況下では怪我が発生しやすくなると考えられています。そして脳の認知や処理、反応速度といったことが怪我に関係していることもあり、複雑な処理を要する状況下では身体をうまくコントロールしにくく負荷が高まってしまうのかもしれません。

 

ポイント

  • 相手選手やゴールに向かっている時に怪我が起きやすいことが報告されています
  • 予期せぬ方向転換動作などは身体への負荷が少し高い傾向にあるようです
  • 怪我が発生した選手のほうが脳の認知や反応速度が遅かった傾向にあるようです

 

高度で複雑な処理を求められる状況は怪我をしやすい?

より複雑な処理や判断が大きい方が負荷が大きく怪我をしやすいという考え方があります

スポーツにおいては相手選手やボールの動きなど刻々と状況が変化し、複座な処理や判断が求められることかと思います。

サッカーの方向転換

このため脳に大きな処理が求められ、適切な反応などがしにくくなる瞬間が生まれ、怪我のリスクにつながるのではないか?と考えられています。

 

スポーツ中における動きの変化

スポーツでは相手選手やボールなどがあり、より複雑な判断が求められます。これが身体への負荷も高める可能性があるという考え方があります。

バスケのカッティング動作

  • バスケットボールのボールハンドリング時やディフェン時などに怪我が増えている傾向にあることがアンケート調査で示唆されています
  • バスケ選手を対象にした研究では、パスを出された時やパスを出すフェイクを受けた時のカッティング動作において膝がより内側に入りやすかったことが報告されています
  • ディフェンスの時にも怪我をが少々増えている傾向にあることがアンケート調査で示唆されています
  • 怪我が起きた瞬間の映像を分析した研究では、相手選手やゴールに向かっている時に前十字靭帯損傷が起きやすいことが報告されています

このように相手選手やボールがある状況下など、複雑な状況では身体への負荷が高まる可能性があるのかもしれません。

あるいは相手選手がいること等によって競争が生まれ、運動強度が高まって怪我をしやすいなどの他の可能性も考えられます。

 

次の動きを予測できない状況のほうが負荷が高い?

予期せぬ方向転換動作のほうが、減速の動作などよりも前十字靭帯への負荷が高い傾向にあるようです5・6

サッカーの切り返し

突然の方向転換などによって膝への負荷が高まってしまう可能性があります。選手の熟練度や試合勘などによる予測などによっても反応が変わってくるかもしれません。

 

脳の認知・処理・反応と怪我について

脳の認知や処理といった機能は怪我と何らかの関係があると考えられています。

脳の認知や反応

  • ある研究では脳の認知や処理といった機能が高いグループと低いグループに分けて膝の負荷を調べていますが、脳の認知や処理機能が低いグループのほうが予期せぬ方向転換動作時に膝への負荷が少し高い傾向にあったことが報告されています
  • 別の研究では脳の認知や処理機能が低いグループのほうがジャンプの着地時の膝の負荷が高い可能性があることが報告されています
  • シーズン前に脳の認知や反応速度を調べてその後の怪我を追跡調査した研究では、怪我が発生した選手のほうが脳の反応速度が遅かった傾向にあることが報告されています

このように脳の機能が怪我と関係を示している研究がいくつかありますが。

しかし、まだまだ研究数も少なく詳しいメカニズムも解明されていないことには留意したほうがいいかもしれません。

 

前十字靭帯損傷した人の脳の機能について

反応速度や処理速度といった脳の機能の低下が怪我に関係しているのではないか?という考え方があります。

脳への影響

  • ある研究では前十字靭帯損傷をした人は短期的な記憶力や処理速度、反応速度などが落ちている傾向にあったことが報告されています10

怪我をしたから脳の機能が影響を受けてしまったのか、あるいは脳の機能が少し低下していたから怪我をしたのかは不明です。

研究数も少ないことから脳の機能低下がたまたまなのか、それとも怪我に関係しているのかはわかりません。

 

脳の認知や反応を高めればいい?

脳の認知や反応速度といったことが怪我となんらかの関係がある可能性はありますが、脳の機能を高めれば怪我を予防できるというわけでもなさそうです。

脳の反応速度や認知機能を高めることで怪我を防げる、というような研究結果はほとんど見当たりません。

例えば、脳が若返る携帯ゲームなどに取り組んだとして怪我を減らせるかというと大いに疑問がありますね。

 

現実的には身体を使ったトレーニングの中にボールを取り入れたり、パートナーの動きに反応する、といった要素を加えてみるといったところになるのではないでしょうか。

メディシンボールエクササイズ

こういった方法ならば取り入れて損することも少ないですし、エクササイズのバリエーションも広がるかと思います。

 

まとめ

脳の機能低下と怪我の関係には何らかの関係があると考えられています。身体を使ったトレーニングの中にボールを取り入れたり、パートナーの動きに反応する、といった要素を加えてみるのも悪くないかもしれません。

 

<参考文献>

  1. Grooms DR, Onate JA. Neuroscience Application to Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injury Prevention. Sports Health. 2016;8(2):149-152.
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