野球肘

ウェアラブルセンサーによる投球フォームの改善について

軽量なセンサーを取り付けたスリーブをつけることで投球時の肘のストレスを簡単に評価できるとあって、何かと話題を呼びつつあるMotusのウェアラブルセンサーです。従来ではこのような負荷の分析には数千万円もする設備が必要で、野球場の中ではなくわざわざ研究室で測定しなければならず、しかもデータの分析に数時間もかかってしまうものでした。

MOTUSウェアラブルセンサー

参照https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000047303.html

ポイント

  • 肘への負荷を簡単に測定できることが大きなメリットです
  • 1つのセンサーでの測定なので100%正確な数値が算定されるわけではありません
  • 仕組みを理解し、長所も短所も知った上で使いこなすことが大切です

 

Motusセンサーによる肘のストレスを算定する仕組み

MOTUSウェアラブルセンサーのスリーブ

(Camp et al 2017より引用)

肘に加速度計とジャイロスコープを兼ね備えたセンサーをひとつ付けて、そこから投球動作のデータをスマホなどで見ることができます。加速度計とジャイロスコープが何だかよくわからない人は、超軽量のiPhoneを肘につけるようなものとイメージしてください。スマホと同じようなセンサーを使っています。

MOTUSウェアラブルセンサーの測定項目

参照https://onsideworld.com

この肘へのトルクが投球時の負荷だと考えられているのですが、この数値はアームスロット(リリース時の腕の高さ)、ショルダーローテーション(MER)、アームスピード(腕の振りのスピード)などをもとに算出されていると考えられています。というのも次の図のようにこれら3つの数値が肘のストレスへ強い相関関係があることが確認されています

肘の内反トルクの要素

(Camp et al 2017より引用)

これを語弊を恐れずに単純化するならば、次のような仕組みで算定されていることになります。

  • リリース時の腕の高さが低いほど肘へのストレスが高まる(サイドスローに近いほど肘のストレスが高まる)
  • ショルダーローテーションが高いほど肘へのストレスが高まる(肩の最大外旋角度が大きいほど肘へのストレスが高まる)
  • 腕の振りのスピードが早いほど肘へのストレスが高まる

肘のストレスにはこれ以外の要素も影響するのですが、肘へのセンサーがひとつしかない中で簡便的に算定するための方法と言えるのではないでしょうか。

 

Motusセンサーのメリット

  • 手軽に利用できる
  • 値段が安い
  • 一定の正確性がある
  • フォーム修正による肘への負荷軽減

やはり、このMotusのウェアラブルセンサーの最大の魅力はその手軽さにあると思います。そして、このセンサーの算定の仕組みを理解すればフォームの修正の方向性を理解することができるかと思います。

サイドスロー

基本的にはサイドスローのように腕の位置が低い投球を減らす、テイクバック時に腕を体に近づてコンパクトにする等といったことで数値を改善させる効果が期待できるかと思います。もちろんピッチャーの投球動作はこんなにシンプルなものではなく、もっと色々な要素が絡んでいます。

 

Motusセンサーのデメリット

  • 100%正確な数値ではない
  • 他の人や論文等のデータと比べることにあまり向いていない。
  • 数値を追いかけ過ぎて可能性がある。

まず、Motusのウェアラブルセンサーはあくまでひとつの肘のセンサーにより簡便的に算定された方法であり、より正確性の高いモーションキャプチャーを用いた方法とは算定方法が異なるということを理解する必要があります

モーションキャプチャーによるピッチャーの投球動作の測定の様子

参照https://www.hastings.edu/success-stories/diffendaffer-improves-athletic-safety-performance-through-biomechanical-research/

たとえばMotusのウェアラブルセンサーを使った投球動作の研究では、より正確性の高いモーションキャプチャーを使った測定結果と異なる結果になることがあります。関係者に質問したところ、センサーの数値だけを信頼するのでなくて投球動作をビデオに収めるなど補完的に利用した方がいい、という回答となりました。

 

投球解析の数値だけを追いかけすぎるとと本末転倒になってしまうリスクがあるので注意が必要です。肘へのストレスの数値が少ないほどいいというほどシンプルなものではありませんし、3〜4つの数値だけで投球フォームの全てが決まるわけではありません。

 

まとめ

手軽に利用できるという費用対効果を考えたらこのようなセンサーを導入する価値が大いにあるかと思います。ただ何事もそうですがメリットとデメリットがあるので、しっかりと仕組みを理解してうまく使いこなすことが大切かと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Camp CL, Tubbs TG, Fleisig GS, et al. The Relationship of Throwing Arm Mechanics and Elbow Varus Torque: Within-Subject Variation for Professional Baseball Pitchers Across 82,000 Throws. The American Journal of Sports Medicine. 2017;45(13):3030-3035.

  2. Anz AW, Bushnell BD, Griffin LP, Noonan TJ, Torry MR, Hawkins RJ. Correlation of Torque and Elbow Injury in Professional Baseball Pitchers. The American Journal of Sports Medicine. 2010;38(7):1368-1374.

  3. Okoroha KR, Meldau JE, Jildeh TR, Stephens JP, Moutzouros V, Makhni EC. Impact of ball weight on medial elbow torque in youth baseball pitchers. J Shoulder Elbow Surg. 2019;28(8):1484-1489.

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