変形性膝関節症

ハムストリングスの内側の筋力が変形性膝関節症に与える影響

ハムストリングスの筋肉

興味深いことに、ハムストリングスの内側の筋力が弱いことで変形性膝関節症につながる膝の負荷が軽減されるのではないか?とする論文がありました。果たして本当にそうなのだろうか?という疑問が湧いてきたので、その内容について考察していきたいと思います。

 

ポイント

  • コンピューターの推定値ではハムストリングスの内側の筋肉が弱いと軟骨への負荷が軽減されるようです
  • しかし、ハムストリングスの内側の筋力が弱いことで変形性膝関節症の発生率を高めるデータはないようです
  • 十分な筋力がないと膝関節を安定させることができませんし、筋力バランスの乱れは好ましくないものと考えられています。

 

本当に軟骨の負荷を軽減できるか?

ハムストリングスの内側の筋力が弱いことで軟骨への負荷を軽減できる、という考え方には疑問が残ります。

軟骨のダメージ

ハムストリングスの内側の筋力が弱いほうが膝関節の接触の負荷が小さく変形性膝関節症を防げるのではないかとする研究報告があり、筋肉が生み出す力も膝関節を圧迫する高める要素であり、筋力が弱ければこの負荷が弱まる可能性が考えられます。

しかし、これはあくまでコンピューターのアルゴリズムに従った推定値に過ぎず、ハムストリングスの内側の筋力が弱いことで本当に変形性膝関節症につながる負荷が軽減されるのか?については疑問が残ります。

骨格筋モデルによる軟骨の負荷の算定

(Schmitz 2020より引用)

一般的には十分な筋力がないと膝関節を安定させることができませんし、筋力バランスの乱れは好ましくないものと考えられています。

 

手術の種類と変形性膝関節症の関係性

ハムストリングスの内側が弱いことで変形性膝関節症を防げるということを裏付けるデータはあまり多くないようです。

前十字靭帯再建手術においてグラフトを用いた場合にはその部分の筋力が落ちる可能性があり、ハムストリングスの内側のグラフトを用いればハムストリングスの内側の筋力が低下すると考えられます。

前十字靭帯のグラフトの種類

参照https://www.youtube.com/watch?v=p8-FNh91GPc

つまり、ハムストリングスの内側のグラフトを用いた場合に変形性膝関節症が減少しているのであれば、ハムストリングスの内側の筋力低下は膝関節の負荷を和らげるのではないか?という考え方を補強材料となり得ます。

  • とある研究においては、ハムストリングス内側のグラフトを使用した場合には前十字靭帯再建手術後10年〜15年後の変形性膝関節症の発症率が低いという報告があります
  • しかし、他の研究において前十字靭帯再建手術後の約10年後を調査したところ、グラフトの種類によって変形性膝関節症の発症率に影響は与えないという結果となっています3・4
  • どのグラフトを使うかよりも、複数の組織をダメージ受けている場合など他の要素が大きいようです

このようなことから、ハムストリングスの内側の筋力が弱いことで本当に変形性膝関節症につながる負荷が軽減される、という考え方にはやはり疑問が残ります。

 

まとめ

膝関節を安定させるためにもハムストリングスの内側の筋肉もしっかりと鍛え、筋力バランスの乱れを解消していくことが役に立つと思われます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Schmitz A. The effect of medial hamstring weakness on knee contact forces during running. Journal of Fundamental and Applied Sciences. 2020;12(1):431-446.

  2. Leys T, Salmon L, Waller A, Linklater J, Pinczewski L. Clinical results and risk factors for reinjury 15 years after anterior cruciate ligament reconstruction: a prospective study of hamstring and patellar tendon grafts. Am J Sports Med. 2012;40(3):595-605.

  3. Holm I, Oiestad BE, Risberg MA, Aune AK. No difference in knee function or prevalence of osteoarthritis after reconstruction of the anterior cruciate ligament with 4-strand hamstring autograft versus patellar tendon-bone autograft: a randomized study with 10-year follow-up. Am J Sports Med. 2010;38(3):448-454.

  4. Lidén M, Sernert N, Rostgård-Christensen L, Kartus C, Ejerhed L. Osteoarthritic changes after anterior cruciate ligament reconstruction using bone-patellar tendon-bone or hamstring tendon autografts: a retrospective, 7-year radiographic and clinical follow-up study. Arthroscopy. 2008;24(8):899-908.

  5. Øiestad BE, Engebretsen L, Storheim K, Risberg MA. Knee osteoarthritis after anterior cruciate ligament injury: a systematic review. Am J Sports Med. 2009;37(7):1434-1443.

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