僧帽筋は複数の筋肉に分かれていますが、中でも僧帽筋の下部が怪我を予防する上でとても重要になってきます。この筋肉は簡単に意識しにくく、うまく働いているのかわかりにくいですが、しっかりと鍛えておくことが大切です。
僧帽筋下部の役割
腕の挙上動作には肩甲骨の動作が関わっており、次の図のように僧帽筋などの複数の筋肉が働いて肩甲骨が適切に動くことができると考えられています1。
(Chepeha, Bouliane, Sheps 2015より引用)
ですので、次の図のように僧帽筋の上部・中部・下部のそれぞれの筋肉がバランスよく働くことが大切です。
参照https://baselinehealing.com/technique/upper-body-to-Base-Line-connection-the-trapezius-muscles.php
僧帽筋下部と怪我のリスクの関係性
僧帽筋下部の筋力低下は肩甲骨の動きに影響を与え、肩の怪我などへと繋がる可能性があります。特に上部に対して下部の働きが低下することなどが怪我の原因になりやすいと考えられています。
僧帽筋下部のエクササイズ
僧帽筋下部のエクササイズとして有名なものが腕を挙上した状態で行うエクササイズです。この姿勢でダンベルを上げ下げするのですが、これが意外とキツかったりします。
(Ekstrom et al 2003より引用)
いくつかのエクササイズを比べた時にこのエクササイズが最も僧帽筋下部の活動量が大きかったそうです1。しかし、このエクササイズは僧帽筋上部の活動量も高めてしまうというデメリットも確認されています。そのため僧帽筋下部がうまく使えない人のためのエクササイズというよりも、すでにある程度のレベルにある人のエクササイズなのではないか?という意見もあります2。
(Ekstrom et al 2003より引用)
別の研究では他のエクササイズも測定しており、僧帽筋下部の活動量が高いエクササイズは他にもあるようです3。まずは比較的簡単に狙った筋肉を使いやすいエクササイズから初めてみるのもありかと思います。
(Arlotta et al 2011より引用)
このエクササイズを実施するポイントとして、
- 肩甲骨を寄せた状態をキープするようにエクササイズを行いましょう。
- チューブを引く動作よりも、肩甲骨をできるだけ下に保持することを心がけましょう。
- 狙った筋肉に効かせるためにも軽い負荷で行いましょう。重すぎると別の筋肉が働きやすくなりますし、負荷がかかりすぎる可能性もあります。
僧帽筋下部をうまく使いながらエクササイズをすることは意外と難しく、正しいフォームでやっていても感覚がわからないという場合もあります。そのような時には他の原因が考えられるので、プロの指導を受けることをオススメしています。
<参考文献>
-
Chepeha, J., Bouliane, M & Sheps, D. (2015). Rotator Cuff Pathology In. Magee, D., Zacharzewski, J., Quillen, W., & Manske, R. Pathology and intervention in musculoskeletal rehabilitation. (Second ed., Musculoskeletal rehabilitation series). Elsevier.
-
Ekstrom RA, Donatelli RA, Soderberg GL. Surface electromyographic analysis of exercises for the trapezius and serratus anterior muscles. J Orthop Sports Phys Ther. 2003;33(5):247-258.
-
Py Gonçalves Barreto R, Cabral Robinson C, Sperotto dos Santos Rocha C, et al. Lower trapezius and serratus anterior activation: which exercise to use for scapular neuromuscular reeducation? ConScientiae Saude. 2012;11(4):660.
-
Arlotta M, Lovasco G, McLean L. Selective recruitment of the lower fibers of the trapezius muscle. J Electromyogr Kinesiol. 2011;21(3):403-410.