コラム

靭帯を鍛えて強くするという発想について

靭帯断裂などの怪我は数カ月から1年といった長い戦線離脱を強いられることが珍しくなく、選手生命を左右しかねない怪我です。もしも、靭帯を鍛えて強くすることでこういった怪我を防ぐことができるのならば・・・こんなにいいことはありません。しかし、これはあまり現実的ではないのが現状のようです。

 

ポイント

  • トレーニングで靭帯が大きくなることがありますが、これは靭帯の耐久性を表しているわけではありません
  • 靭帯を鍛えようとしても負荷を間違えると怪我をしていまいます
  • 靭帯を安全に鍛える方法は科学的に確立されていません

 

靭帯の大きさが変化することもある

身体を鍛えている人の靭帯が大きくなっていることがあるそうで、靭帯の強さや耐久力というのは靭帯の怪我のリスクに関係しています。

前十字靭帯断裂を起こした人は、すでに靭帯が弱くなっていために断裂が起こったという可能性も考えられます。日々の練習の中で人体には小さな炎症を繰り返されていることが確認されており、こういった疲労の蓄積がもしかしたら靭帯の耐久性を低下させ、ある日突然ブチッと靭帯の断裂を引き起こしてしまうのかも知れません。

その一方で、ウェイトレーニングに長く取り組んでいる人の前十字靭帯が大きくなっていることも報告されています。もしかしたらウェイトトレーニングによる刺激は筋肉だけでなく、靭帯にも及ぶのかもしれません。

前十字靭帯
前十字靭帯の耐久性も怪我の原因のひとつかもしれない

筋肉を鍛えることができても靭帯は鍛えることができない、という発言が話題になったことがあります。しかし近年の研究ではトレーニングや疲労などで靭帯の強さも変わってくる可能性があるのではないか?という考え方 ...

続きを見る

このようなことから、適度な刺激を靭帯に与えることで靭帯を強くできるのではないか?という発想もあるかと思います。

 

靭帯の大きさと耐久力について

靭帯の大きさは必ずしも靭帯の強さを表しているわけではありません。

靭帯がダメージを受けて炎症を起こすと、靭帯に水分が集まり靭帯の体積が大きくなるという可能性もあります。

例として、足底筋膜炎を発症した場合には体積自体は大きくなりますが、弾力性が低下して結果的に弱い状態であることが報告されています。

足底筋膜炎の解剖図
足底筋膜炎とその構造の変化について

足底筋膜炎はランナーにとっての悩みのひとつであり、練習量が多すぎたり慣れないシューズなどの環境の変化で足の裏の痛みへと繋がることがあります。足底筋膜の構造という点に着目すると、厚さや弾力性、重心や接地 ...

続きを見る

 

靭帯の構造を評価するのには大きさだけで決まるわけではなく、他にもたくさんの指標があります。そして、靭帯の構造と怪我との関係についてはまだまだ解明されていないことも多く、さらなる研究が望まれるところです。

 

靭帯を強くするためのトレーニングで痛めてしまうリスクがある

意図的に靭帯に刺激を与えてトレーニングをすることにはリスクがつきまといます。私自身が肘の靭帯に軽い負荷をかけてトレーニングをしてみたところ、肘に痛みが走り、それが数週間も続くような状態になってしまったことがあります。

靭帯に刺激を与えることで靭帯が強くなるのかもしれませんが、負荷の設定を誤ってしまうと靭帯に大きなダメージを与えることにも繋がりかねません。

現在のスポーツ医学においては、靭帯を強くするような科学的トレーニングは確立されておらず、捻挫などで靭帯を損傷した場合に靭帯の強さは簡単には元に戻すことすらできないという考え方が主流となっているかと思います。

もしも、靭帯を強くするようなトレーニングが存在したとしても、靭帯に負荷をかけることにはリスクを伴うため、安全性を確保するという点でも科学的検証がない方法はあまりオススメできません。

靭帯の断裂を予防するのならば靭帯を直接鍛えるよりも、科学的根拠が確立され広く取り入れられている方法を採用したほうがはるかに安全で効果的であると思います。

 

まとめ

靭帯の大きさと怪我との関係性はまだまだ不明点が多く、靭帯に刺激を与えて直接強くするよりも、周辺の筋肉などをしっかりと鍛えていくほうが怪我予防には効果があるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

-コラム

© 2021 Hero's Body