テニス選手の中には腰痛に悩まされる人も少なくないかと思います。
ここでテニス選手の腰痛のメカニズムについて、スポーツ医学の研究結果を踏まえながらご紹介していきたいと思います。
ポイント
- 腰を極端に反ったり捻ったりするようなサーブは腰に負担がかかる可能性があります。
- 多少のフォームの違いは、そこまで腰痛に関わっていないようです。
- 体幹の筋肉の働きが低下していると腰に負荷がかかりやすくなります。
腰痛を抱えているテニス選手の特徴
腰痛を抱えているテニス選手にはどのような特徴があるのか、研究結果をみていきたいと思います。
サーブ
腰痛を経験したことがあるテニス選手はサーブ時に体幹部の側屈が大きい傾向にあることが報告されています1。
一般的に背骨を大きく動かすような動きは負荷が大きいとされており、腰の動きが大きいサーブがテニス選手の腰痛に関わっているかもしれません。
一方でサーブの打ち方と腰のMRI検査結果との関係性は低いという研究結果もあり2、
極端に腰を反ったり捻るようなフォームでなければ、そこまで大きな問題にはならないのではないかと思います。
ストローク
腰痛を抱えている人とそうでない人のストロークの打ち方に大きな違いはないことが報告されています3。
ストロークではそこまで大きく腰を捻るような動きではないため、多少のフォームの違いは腰痛への影響が小さいのかもしれません。
柔軟性
興味深いことに柔軟性はテニスにおける腰痛に思っているほど影響しないかもしれません。
腰痛を経験したことがあるテニス選手の体幹や股関節の可動域に大きな違いはないことが報告されています4・5。
しかし、練習後の疲労回復やコンディションを整えるという意味でのストレッチやマッサージは腰痛防止に役に立つかと思います。
可動域向上のためというより、身体を良好な状態に整えることは大切かと思います。
体幹の筋肉
腰痛を抱えているテニス選手は体幹の筋肉の活動量が低いことが報告されています6。
体幹の筋肉がしっかりと働くことで腰の負荷を減らせる可能性があるため、しっかりと体幹を鍛えることが役に立つかと思います。
一方で体幹の筋力はテニス選手の腰痛との関係性が弱く4、むしろ筋持久力のほうがテニス選手の腰痛に関係性がみられるという報告もあります6。
最初は筋持久力をしっかりと鍛えていくことが役に立つかもしれません。
練習量
練習量や試合数が増えてくると腰痛のリスクが高まるという報告があります7。
やはり過度な負荷は腰のダメージへとつながり、適度な休養も大事になってくるかと思います。
考察
適度な練習量が大切な一方で、目指すところはたくさん練習しても怪我しない強靭な身体作りかと思います。
このためしっかりと体幹の筋肉を鍛えていくことが大事になってくるかと思います。
そして極端に腰を捻るような打ち方を改善し、少ない力で効率的に力を伝えられるようなフォームを目指していくことが役に立つかと思います。
そのためには体幹周りだけでなく全身をバランス良く鍛えることで、無駄な力を減らして力をうまく伝えられるような身体に近づいていきます。
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まとめ
腰を過度に使うような打ち方をしていると長時間のテニスで腰痛を引き起こしやすくなる可能性があるため、
しっかりと身体を整え、効率的な打ち方を追求することが役に立つ可能性があります。
<参考文献>
- Campbell A, Straker L, O’Sullivan P, Elliott B, Reid M. Lumbar loading in the elite adolescent tennis serve: link to low back pain. Med Sci Sports Exerc. 2013;45(8):1562-1568. doi:10.1249/MSS.0b013e31828bea5e
- Connolly M, Middleton K, Spence G, Cant O, Reid M. Effects of Lumbar Spine Abnormality and Serve Types on Lumbar Kinematics in Elite Adolescent Tennis Players. Sports Med - Open. 2021;7(1):7. doi:10.1186/s40798-020-00295-2
- Campbell A, Straker L, Whiteside D, O’Sullivan P, Elliott B, Reid M. Lumbar Mechanics in Tennis Groundstrokes: Differences in Elite Adolescent Players With and Without Low Back Pain. J Appl Biomech. 2016;32(1):32-39. doi:10.1123/jab.2015-0122
- Grosdent S, Demoulin C, Souchet M, Tomasella M, Crielaard JM, Vanderthommen M. Trunk muscle profile in elite tennis players with and without low back pain. J Sports Med Phys Fitness. 2015;55(11):1354-1362.
- Moreno-Pérez V, López-Valenciano A, Ayala F, Fernandez-Fernandez J, Vera-Garcia FJ. Comparison of hip extension and rotation ranges of motion in young elite tennis players with and without history of low back pain. BMR. 2019;32(4):629-638. doi:10.3233/BMR-181296
- Correia JP, Oliveira R, Vaz JR, Silva L, Pezarat-Correia P. Trunk muscle activation, fatigue and low back pain in tennis players. J Sci Med Sport. 2016;19(4):311-316. doi:10.1016/j.jsams.2015.04.002
- Johansson F, Gabbett T, Svedmark P, Skillgate E. External Training Load and the Association With Back Pain in Competitive Adolescent Tennis Players: Results From the SMASH Cohort Study. Sports Health. 2022;14(1):111-118. doi:10.1177/19417381211051636