前十字靭帯損傷

膝の外反と前十字靭帯損傷について

前十字靭帯損傷の原因として有名なのが膝の外反であるかと思います。膝の外反にアプローチすることには一定の効果があるかと思いますが同時に限界もあり、これが怪我のメカニズムの全てではなく、あくまでひとつの要素に過ぎないかと思います。

膝の外反

(Hewett et al 2005より引用)

 

ポイント

  • スポーツ時に膝のねじれを伴う動きで前十字靭帯損傷したことが多かったそうです
  • 膝関節の靭帯を再現しての実験では膝のねじれが加わることで前十字靭帯への負荷が高まっていたそうです
  • 膝のねじれはひとつの要素に過ぎませんが、そのシンプルさと手軽さから費用対効果に優れた方法であると思います

 

膝の外反と前十字靭帯断裂

スポーツ中のプレーをビデオで分析したところ、前十字靭帯損傷した瞬間には膝の外反を伴うことが多かったそうです

前十字靭帯断裂の瞬間

(Olsen et al 2004より引用)

  • 膝関節の靭帯を再現しての実験では膝の外反や膝のねじれが加わることで前十字靭帯への負荷が高まっていたそうです2・3
  • ここには捻れの方向などの細かい議論もありますが、一般的には膝の捻りが加わることで前十字靭帯への負荷が高まる傾向にあると考えて差し支えないかと思います

このように前十字靭帯断裂時に膝のねじれが伴うことは珍しくありません。

 

怪我の発生率や予防効果について

膝のねじれを解消することでゼロとは言いませんが、ある程度は怪我の発生率を減らすことができるようです。

前十字靭帯の負荷の実験

(Oh et al 2012より引用)

  • 膝の外反と怪我の発生率についても一定の研究報告があります。シーズン前のジャンプの着地の動作を測定しその後の怪我の発生について追跡調査したところ、前十字靭帯損傷をした人は膝の外反が大きかったそうです
  • 膝の外反などを改善する怪我予防エクササイズには前十字靭帯断裂を予防する一定の効果があることが確認されています

こうしたことから膝の外反が前十字靭帯につながるという考え方には一定の科学的根拠があるかと思います。

 

膝の外反を改善するだけで前十字靭帯断裂を防げるのか?

膝の外反を改善することに一定の効果はあるかと思いますが、これだけで全ての前十字靭帯断裂を防げるほど甘いものではないかと思います。これだけで前十字靭帯を防げるのならば、この怪我に泣く人はもっともっと減っているのではないでしょうか。

前十字靭帯の負荷は膝が外反しているかどうかだけで決まるわけではなく、筋肉の働き、膝の屈曲の角度など様々な要素によって前十字靭帯への負荷は変化します。

膝の痛み
ジャンプの着地と前十字靭帯への負荷

前十字靭帯の断裂はジャンプの着地時などにも起こることから、ジャンプの着地の質が前十字靭帯損傷予防などで注目されることがあります。ジャンプのエクササイズは比較的気軽に取り入れることができ、使い勝手がいい ...

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それにもかかわらず膝の外反という要素に注目が集まっています。

これは膝の外反というものは基本的には膝が内側に入らないようにするという、シンプルでわかりやすいことが大きく影響しているかと思います。

「1日10分で英語がペラペラになる」を体現するかのようなコンセプトであり、手軽に効率良く一定の結果を得たい場合には適していると思います。

しかし、膝の外反だけであらゆる膝の負荷の全てを改善することは不可能だと思います。

あくまで、手軽に取り組みやすい入門的な内容といったところでしょうか。

 

まとめ

膝の外反はあくまでひとつの要素に過ぎず、そのシンプルさと手軽さから費用対効果に優れた前十字靭帯損傷の予防方法と言えるのではないでしょうか。これひとつで怪我がすべての怪我が防げるほど甘いものではなく、もっと高い効果を生み出したいという場合には他のことにも取り組む必要があるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Olsen O-E, Myklebust G, Engebretsen L, Bahr R. Injury mechanisms for anterior cruciate ligament injuries in team handball: a systematic video analysis. Am J Sports Med. 2004;32(4):1002-1012.
  2. Bates NA, Nesbitt RJ, Shearn JT, Myer GD, Hewett TE. Knee Abduction Affects Greater Magnitude of Change in ACL and MCL Strains Than Matched Internal Tibial Rotation In Vitro. Clin Orthop Relat Res. 2017;475(10):2385-2396.
  3. Oh YK, Kreinbrink JL, Wojtys EM, Ashton‐Miller JA. Effect of axial tibial torque direction on ACL relative strain and strain rate in an in vitro simulated pivot landing. Journal of Orthopaedic Research. 2012;30(4):528-534.
  4. Shimokochi Y, Shultz SJ. Mechanisms of Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injury. J Athl Train. 2008;43(4):396-408.
  5. Hewett TE, Myer GD, Ford KR, et al. Biomechanical measures of neuromuscular control and valgus loading of the knee predict anterior cruciate ligament injury risk in female athletes: a prospective study. Am J Sports Med. 2005;33(4):492-501.
  6. Hewett TE, Bates NA. Preventive Biomechanics: A Paradigm Shift With a Translational Approach to Injury Prevention. The American Journal of Sports Medicine. 2017;45(11):2654-2664.

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