前十字靭帯損傷

前十字靭帯断裂後の膝伸展制限(Extension Lag)について

脚を挙げた時に膝がまっすぐに伸びないことがあるかと思います。

これはなんだか見栄えが悪いし、ついつい無理にでも改善したくなることもあるかもしれません。

ここで関連する論文を参照しながら、そのメカニズムを考えていきたいと思います。

 

ポイント

  • 膝伸展制限(Extension lag)を抱えている人達は筋力不足が大きい傾向にあるようです。
  • 筋力不足が膝伸展制限を引き起こしているのか?という因果関係はあまり検証されておらず、証明力は限定的です。
  • 痛みや腫れ、柔軟性や神経の働きなど他にも様々な原因が考えられるかと思います。

 

 

膝伸展制限(Knee Extension Lag)

膝伸展制限(Knee extension lag)とは脚を挙げた時に膝がまっすぐに伸びずに、膝が少し曲がってしまう状態のことを指します。

(Stillman 2004より引用)

前十字靭帯再建手術後や人口膝関節の手術後などによくみられるものです。

身体に悪影響を与える可能性があり、その見栄えも悪いことからも、改善した方がいいと考えられています。

 

膝伸展制限のメカニズム

影響する要素の分析について

膝伸展制限には筋力低下などの要因が考えられています。

  • 膝伸展制限を抱えていた人達は膝関節伸展の筋力が弱いこと、そして膝関節屈曲の筋力が相対的に強いことが報告されています。しかし、この研究では筋力不足が膝伸展制限を引き起こしたのか?あるいは怪我をしたから単に筋力が低下していただけなのか?という因果関係は検証されていません。
  • 一方で膝関節の筋力と膝伸展制限の度合いに相関関係はみられなかったそうです

こういった研究などから大腿四頭筋などの筋力不足がひとつの原因ではないか?と考えられているようです。

 

大腿四頭筋のエクササイズについて

大腿四頭筋の筋力不足が膝伸展制限の原因と考えられることがありますが、そこには議論があります。

  • 人工膝関節手術後の人達を対象とした研究では、大腿四頭筋に神経筋電気刺激(NMES)を行ったことで膝伸展制限が少しだけ改善しやすいことが報告されています3・4
  • 一方で前十字靭帯再建後のリハビリにおける研究では大腿四頭筋を鍛えても膝伸展制限に大きな違いはみられなかったことが報告されています

大腿四頭筋の筋力はあくまで要素のひとつということかもしれません。他にも色々な要素を検討することが大切かと思います。

 

痛みや怪我のリスク

膝伸展制限の痛みや怪我のリスクには議論があります。

  • 人工膝関節手術後に膝伸展制限を抱えていた人達は痛みの程度が大きい傾向にあることが報告されています。痛みが膝伸展制限を引き起こしているのか?あるいは膝伸展制限が痛みを引き起こしているのか?という因果関係は検証されていないものの、この因果関係はとても重要な点です。
  • 一方で膝伸展制限は再入院などのリスクとは関係はみられなかったそうです。膝伸展制限を改善したほうがいいという意見は多くありますが、実際に怪我のリスクを高めるというような研究結果は見当たりませんでした。

このように膝伸展制限がなぜ引き起こされるのか?それは怪我につながるのか?、このことを考えると膝伸展制限の隠された意味が見えてくるのではないでしょうか。

私なりの仮説がありますが、研究を行って論文として公表できたらいいなと思います。

 

まとめ

膝伸展制限は筋力不足によるものと考えられていますが、他にも様々な原因が関わっていると考えられます。

現場では思いつく可能性をひとつひとつ検証していくことが役に立つかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Stillman BC. Physiological quadriceps lag: its nature and clinical significance. Aust J Physiother. 2004;50(4):237-241. doi:10.1016/s0004-9514(14)60113-6
  2. Sprague RB. Factors related to extension lag at the knee joint. J Orthop Sports Phys Ther. 1982;3(4):178-182. doi:10.2519/jospt.1982.3.4.178
  3. Dabadghav R, Potdar A, Patil V, Sancheti P, Shyam A. Additional effect of neuromuscular electrical stimulation on knee extension lag, pain and knee range of motion in immediate postsurgical phase (0-2 weeks) in primary total knee arthroplasty patient. Ann Transl Med. 2019;7(Suppl 7):S253. doi:10.21037/atm.2019.09.79
  4. Gotlin RS, Hershkowitz S, Juris PM, Gonzalez EG, Scott WN, Insall JN. Electrical stimulation effect on extensor lag and length of hospital stay after total knee arthroplasty. Arch Phys Med Rehabil. 1994;75(9):957-959.
  5. Shaw T, Williams MT, Chipchase LS. Do early quadriceps exercises affect the outcome of ACL reconstruction? A randomised controlled trial. Aust J Physiother. 2005;51(1):9-17. doi:10.1016/s0004-9514(05)70048-9
  6. McGinn TL, Etcheson JI, Gwam CU, et al. Short-term outcomes for total knee arthroplasty patients with active extension lag. Ann Transl Med. 2018;6(11):204. doi:10.21037/atm.2018.05.38

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