前十字靭帯損傷

ジャンプの着地と前十字靭帯への負荷

前十字靭帯の断裂はジャンプの着地時などにも起こることから、ジャンプの着地の質が前十字靭帯損傷予防などで注目されることがあります。ジャンプのエクササイズは比較的気軽に取り入れることができ、使い勝手がいいものですが、ジャンプの着地だけで前十字靭帯の負荷を改善するのには限界があることにも注意が必要かもしれません。

 

ポイント

  • 柔らかいジャンプの着地は前十字靭帯への負荷を減らせる可能性があります
  • ジャンプの着地の質と前十字靭帯損傷との関係性は微妙なところです
  • ジャンプのエクササイズは手軽にできる前十字靭帯損傷予防のプログラムのひとつと捉えるのがいいかもしれません

 

ジャンプの着地動作と前十字靭帯の関係性

前十字靭帯損傷予防プログラムの中で、ジャンプなどの着地の際に膝を柔らかく使って衝撃吸収を推奨しているものがあります1。これは膝を柔らかくすることが前十字靭帯の負荷を和らげることができると考えられているためです。

 

柔らかく膝を使うこと

膝を柔らかく使うことは着地のテクニックのひとつであると考えられています。

膝の構造上の理由などから膝の角度によって前十字靭帯への負荷も変わり、膝が伸ばされている時よりも膝が曲がっている時のほうが前十字靭帯への負荷がかかりにくい傾向にあります。このため膝を柔らかく使うことで膝が自然と曲がり、前十字靭帯への負荷が減るのかもしれません。

ジャンプの着地

 

しかし、柔らかい着地でも前十字靭帯の負荷はそこまで変わらないのではないか?とする見解もあります。ジャンプの着地において膝を柔らかく使う方法と固めた状態で比べたところ、前十字靭帯の引き伸ばされ方にそこまで大きな違いはなかったという報告があります

これはジャンプのテクニックだけ前十字靭帯への負荷が決まるのでなく、筋肉の影響などの他の要素によっても変わってくることを示唆しているのかもしれません。あくまで着地の方法のひとつと考えるのがいいのかもしれません。

柔らかい着地は比較的簡単に取り入れられるものなので、取り組んだ方がいいかと思います。

 

実際の怪我の発生率は?

ジャンプの着地は前十字靭帯損傷の予防などに使われていますが、実際の怪我の発生率は微妙なところかもしれません。

前十字靭帯断裂

ジャンプ着地時ではそこまで前十字靭帯損傷を関係なかったという研究結果もあれば4・5、予測できたというも研究結果もあります6・7

これは一定の効果はあるのもの、一貫して強い効果を発揮するわけではないことの表れではないでしょうか。

やはり、ジャンプの着地による前十字靭帯損傷はあくまでひとつの方法に過ぎないということなのかもしれませんね。

 

よりスポーツに近い動作がカギになる?

実際のスポーツの場面ではジャンプの着地にも色々な動作が組み合わさって不安定な態勢になるなど、スポーツの動きは複雑で高度になるかと思います。

ジャンプの着地によって前十字靭帯への負荷を評価することよく用いられていますが、ジャンプの着地と方向転換動作の関係性には限度があり、ジャンプの着地だけで方向転換動作時の負荷を予測しきれない部分があるかと思います。

 

実際のスポーツにおいては、複雑な身体の動かし方やテクニックなどの要素もあり、ジャンプの着地だけではこのようなよりスポーツに近い動きを拾いきれない場合が少なくないのかもしれません。

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さらに、筋力や筋肉の活動タイミング、疲労などの影響もあり、ジャンプのテクニックだけで前十字靭帯の負荷が決まるわけではないかと思います。ジャンプの着地はあくまでひとつの要素ではないでしょうか。

前十字靭帯損傷の予防プログラムでは色々な動きのエクササイズを取り入れていることが多いかと思います。

 

まとめ

ジャンプ動作はあくまで前十字靭帯損傷プログラムの一部であり、簡易的な評価方法の一部というような位置付けがいいのかもしれません。このためジャンプの着地動作を含め、色々な動きのエクササイズを取り入れることが役に立つかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Gilchrist J, Mandelbaum BR, Melancon H, et al. A randomized controlled trial to prevent noncontact anterior cruciate ligament injury in female collegiate soccer players. Am J Sports Med. 2008;36(8):1476-1483.
  2. Shimokochi Y, Shultz SJ. Mechanisms of Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injury. J Athl Train. 2008;43(4):396-408.
  3. Myers CA, Torry MR, Peterson DS, et al. Measurements of Tibiofemoral Kinematics during Soft and Stiff Drop Landings Using Biplane Fluoroscopy. Am J Sports Med. 2011;39(8):1714-1723.
  4. Smith HC, Johnson RJ, Shultz SJ, et al. A Prospective Evaluation of the Landing Error Scoring System (LESS) as a Screening Tool for Anterior Cruciate Ligament Injury Risk. The American Journal of Sports Medicine. 2012;40(3):521-526.
  5. Krosshaug T, Steffen K, Kristianslund E, et al. The Vertical Drop Jump Is a Poor Screening Test for ACL Injuries in Female Elite Soccer and Handball Players: A Prospective Cohort Study of 710 Athletes. Am J Sports Med. 2016;44(4):874-883.
  6. Padua DA, DiStefano LJ, Beutler AI, de la Motte SJ, DiStefano MJ, Marshall SW. The Landing Error Scoring System as a Screening Tool for an Anterior Cruciate Ligament Injury-Prevention Program in Elite-Youth Soccer Athletes. J Athl Train. 2015;50(6):589-595.
  7. Leppänen M, Pasanen K, Kujala UM, et al. Stiff Landings Are Associated With Increased ACL Injury Risk in Young Female Basketball and Floorball Players. Am J Sports Med. 2017;45(2):386-393.
  8. Kristianslund E, Krosshaug T. Comparison of drop jumps and sport-specific sidestep cutting: implications for anterior cruciate ligament injury risk screening. Am J Sports Med. 2013;41(3):684-688.

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