膝の怪我のメカニズム

関節を固めることが怪我のリスクとなっている?

より速く走るために関節を固めたほうがいいということが言われています。これは陸上競技のパフォーマンス向上のために大切なことなのですが、一方で身体への負担も高める可能性があるということを理解することも大切かと思います。ここで関節を固めることとエネルギーの仕組みの関係について解説させていただきたいと思います。

 

ポイント

  • 関節が固いことで衝撃を逃がせずに負荷がかかります
  • ランニングで関節を固めることが最も怪我に関連していたという報告もあります
  • 関節を固めるようなトレーニングは身体が回復できる範囲内で行いましょう

 

硬すぎると衝撃を吸収しにくい

動作中に関節を固めることで弾性エネルギーを利用でき、パフォーマンスの向上に役に立ちます。例えば足首を固めることでより速く走ることができたり、より高くジャンプすることができたりします。

一般的に物質が変形することでエネルギーを逃がすことができるのですが、一方でエネルギーが逃げるということはパフォーマンスも低下する可能性があります。ですので、ジャンプやスプリント動作で関節を固めることで、エネルギーをうまく利用することができるわけです。

 

関節を固めると衝撃を逃しにくくなる

関節を固めることはパフォーマンス向上に役に立ちますが、同時に怪我のリスクもあるということを理解することが大切かと思います。

関節を固めるということはエネルギーをうまく逃すことができず、衝撃吸収能力が低下することも意味しています。

剛性と衝撃吸収能力

参照https://explainopedia.com/mechanical-properties-of-materials-explained/

こういったことから、関節を固めるようなプライオメトリクスと呼ばれるトレーニングでは怪我予防のために回数制限などが提案されたりしています。

 

関節を固めることと怪我の発生率

負荷の高いトレーニングに限らず、普段の走り方でどのくらい関節を固めているのか?というのは怪我のリスクに強く関係している可能性があります。

約300名のマラソンランナーを2年間追跡調査したところ、ランニング中の膝関節を固めていることが最も怪我のリスクに関係していたという報告があります

ランニング中の剛性と怪我の関係性

(Messier et al 2018より引用)

このように動作中に関節を固めすぎることは身体への負担を増やす可能性があります2・3。というのも衝撃吸収が低下することが考えられるからです。

 

関節を固めることが怪我のリスクを下げる場合

一方で関節が不安定になっている状態では身体への負荷が増えてしまうので、この場合には関節を固めるようとすることは怪我のリスクを下げる可能性があります。

このため身体が周辺の筋肉を硬くして関節を固めようとすることは、身体の自然な防御反応なのかもしれません。

このように関節を固めようとすることは状況によって身体への負荷を減らしたり増やしたりします。

 

まとめ

パフォーマンス向上のために身体が回復できる範囲内で関節を固めるようなトレーニングを積むことも必要な場面があります。しかし、慢性的に怪我を繰り返してしまうような場合には関節を過剰に固めすぎていないのかをチェックしてみることが役に立つのかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Messier SP, Martin DF, Mihalko SL, et al. A 2-Year Prospective Cohort Study of Overuse Running Injuries: The Runners and Injury Longitudinal Study (TRAILS). The American Journal of Sports Medicine. 2018;46(9):2211-2221.
  2. Lorimer AV, Hume PA. Stiffness as a Risk Factor for Achilles Tendon Injury in Running Athletes. Sports Med. 2016;46(12):1921-1938.
  3. Brazier J, Maloney S, Bishop C, Read PJ, Turner AN. Lower Extremity Stiffness: Considerations for Testing, Performance Enhancement, and Injury Risk. Journal of Strength and Conditioning Research. 2019;33(4):1156-1166.

-膝の怪我のメカニズム

© 2021 Hero's Body