膝痛

腸脛靭帯炎で腸脛靭帯が硬くなる原因

腸脛靭帯

腸脛靭帯が硬い選手は多く、腸脛靭帯への負荷がかかり続けると腸脛靭帯炎などの怪我へと発展する可能性があります。

ここで腸脛靭帯が硬くなるメカニズムを理解することが腸脛靭帯炎を予防するために役に立つかもしれません。

 

ポイント

  • 腸脛靭帯には膝を安定させたりエネルギー伝達の役割があります
  • 特定の走り方や膝の不安定さが腸脛靭帯に多くの負荷を与え、硬くなる可能性があります
  • 赤ちゃんや車椅子の人など運動をしていない人の腸脛靭帯は硬くないようです

 

腸脛靭帯炎の原因

一般的に腸脛靭帯炎はランニングなどで腸脛靭帯は擦れて引き起こされていると考えられていますが、近年の研究でこの可能性の誤りが指摘されています。

健康的な人や腸脛靭帯炎を持っている人の膝をMRIで撮影したり解剖してみたところ、腸脛靭帯は強固に固定されており、動いて擦れることが難しいということが発見されています1・2

腸脛靭帯の動きと膝の曲げ伸ばし

(Fairclough et al 2006より引用)

他にも腸脛靭帯は膝の安定性に貢献している、などの考え方もいくつか提唱されています。近い将来には腸脛靭帯炎に対する考え方がもっと変わっていくのかもしれません。

 

腸脛靭帯は負荷に適応して硬くなろうとする

ランニングで腸脛靭帯にも負荷がかかり、これに適応して硬くなる可能性があります。

人とチンパンジーの腸脛靭帯

(Eng et al 2015より引用)

  • 赤ちゃんや車椅子の人のように歩行動作をあまりしない人の腸脛靭帯はとても小さいと言われています。というのも腸脛靭帯にあまり負荷がかかっていない状態では、負荷に適応して大きくならないというのがひとつの理由ではないでしょうか。
  • 人の腸脛靭帯はチンパンジーの腸脛靭帯と比べてエネルギー伝達機能に優れているそうです。これは人とチンパンジーの歩行動作の違いがその発達度合いへと反映されているのかもしれません(上の図で左がチンパンジーで、右が人間の腸脛靭帯です)。

いずれにしても、腸脛靭帯も負荷に適応して変化していく可能性があります。

 

腸脛靭帯が安定性やエネルギー伝達に貢献している

人のランニング動作においては、次の図のように腸脛靭帯がエネルギー伝達に貢献していると考えられています

腸脛靭帯の骨格筋モデル

(Eng et al 2015より引用)

腸脛靭帯には前部と後部に別れていて、前部(次の図でB)は大腿筋膜張筋に繋がっていて、後部(次の図でC)は大臀筋に繋がっていると考えられています

これは筋肉で生み出した力が腸脛靭帯を通して膝に伝えられているということを表している可能性があり、ランニング時のエネルギー伝達や関節の安定性の確保のために腸脛靭帯が徐々に硬くなっていくのではないかと考えられます。

腸脛靭帯と周辺の筋肉

(Eng et al 2015より引用)

ある研究でランニング動作の解析時には健康なランナーを被験者とし、その後2年以内に腸脛靭帯炎を発症した人達はランニング時に大きな負荷がかかっている傾向があり、より急激に腸脛靭帯が引っ張られている可能性が高いことがわかっています

 

ランニング時の骨盤の動きと腸脛靭帯へ影響

ランニング時の骨盤や膝の働き次第では腸脛靭帯への負荷が増える可能性があります。

骨盤の動きと腸脛靭帯の負荷の測定

(Tateuchi et al 2016より引用)

色々な片足での立位姿勢をとらせてエコーで腸脛靭帯の状態を調べたところ、骨盤が下がったり膝が内側に入ったりすることにより腸脛靭帯への負荷を高める可能性があるようです

股関節や膝関節に不安定さがあるとこのような動きを誘発する可能性が考えられ、腸脛靭帯への負荷を高めてしまうことが考えられます。

そのため周辺の筋肉を鍛えることや、片足の不安定な状態でのトレーニングで膝や骨盤を安定させるような身体のバランスを獲得することが役に立つのではないかと思います。

 

筋肉の働きと腸脛靭帯炎の関係について

膝や骨盤を安定させる筋力が低下していると腸脛靭帯で安定性を代償する可能性があります。

大臀筋

  • 腸脛靭帯炎を発症しているランナーは筋肉の使われ方が違う可能性が示唆されています。特にランニングの接地時に大臀筋や中臀筋の筋肉の働きが遅延している可能性があります。

お尻の筋肉は片足立ちの安定性や走るパワーを生み出す機能があり、こういった筋肉が適切に働かないことで腸脛靭帯が膝を安定させたりする負荷が大きくなり、結果的に腸脛靭帯炎の原因となる可能性があります。

こういった腸脛靭帯のメカニズムを考えると、お尻の筋肉を鍛えることが腸脛靭帯炎を防ぐのに大事になってくるというわけです

 

まとめ

腸脛靭帯の硬さはエネルギー伝達や膝の安定性に役に立つ可能性がありますが、過度に硬くなってしまうと腸脛靭帯炎へと発展しやすくなる可能性があるのではないでしょうか。

 

<参考文献>

  1. Fairclough J, Hayashi K, Toumi H, et al. The functional anatomy of the iliotibial band during flexion and extension of the knee: implications for understanding iliotibial band syndrome. J Anat. 2006;208(3):309-316.

  2. Fairclough J, Hayashi K, Toumi H, et al. Is iliotibial band syndrome really a friction syndrome? Journal of Science and Medicine in Sport. 2007;10(2):74-76.

  3. Geisler PR, Lazenby T. Iliotibial Band Impingement Syndrome: An Evidence-Informed Clinical Paradigm Change. International Journal of Athletic Therapy & Training. 2017;22(3):1.

  4. Eng CM, Arnold AS, Biewener AA, Lieberman DE. The human iliotibial band is specialized for elastic energy storage compared with the chimp fascia lata. Journal of Experimental Biology. 2015;218(15):2382-2393.

  5. Eng CM, Arnold AS, Lieberman DE, Biewener AA. The capacity of the human iliotibial band to store elastic energy during running. J Biomech. 2015;48(12):3341-3348.

  6. Hamill J, Miller R, Noehren B, Davis I. A prospective study of iliotibial band strain in runners. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2008;23(8):1018-1025.
  7. Tateuchi H, Shiratori S, Ichihashi N. The effect of three-dimensional postural change on shear elastic modulus of the iliotibial band. J Electromyogr Kinesiol. 2016;28:137-142.
  8. Baker RL, Souza RB, Rauh MJ, Fredericson M, Rosenthal MD. Differences in Knee and Hip Adduction and Hip Muscle Activation in Runners With and Without Iliotibial Band Syndrome. PM R. 2018;10(10):1032-1039.

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