腸脛靭帯炎

腸脛靭帯が硬くなってしまうメカニズム

腸脛靭帯

腸脛靭帯が硬い選手は多く、腸脛靭帯をほぐそうとすると痛くて苦手だという選手も少なくないと思います。腸脛靭帯への負荷がかかり続けると腸脛靭帯炎などの怪我へと発展する可能性があります。ここで腸脛靭帯が硬くなるメカニズムを理解し、どのようなエクササイズを行えばいいのかを理解することが腸脛靭帯炎を予防するために役にたつかもしれません。

 

ポイント

  • 赤ちゃんや車椅子の人など運動をしていない人の腸脛靭帯は硬くないようです
  • 腸脛靭帯には膝を安定させたりエネルギー伝達の役割があります
  • 特定の走り方や膝の不安定さが腸脛靭帯に多くの負荷を与え、硬くなる可能性があります

 

腸脛靭帯は負荷に適応して硬くなろうとする?

ランニングで腸脛靭帯にも負荷がかかり、これに適応して硬くなる可能性があります。

  • 赤ちゃんや車椅子の人のように歩行動作をあまりしない人の腸脛靭帯はとても小さいと言われています。というのも腸脛靭帯にあまり負荷がかかっていない状態では、負荷に適応して大きくならないというのがひとつの理由ではないでしょうか。
  • 人の腸脛靭帯はチンパンジーの腸脛靭帯と比べてエネルギー伝達機能に優れているそうです。これは人とチンパンジーの歩行動作の違いがその発達度合いへと反映されているのかもしれませんね(次の図で左がチンパンジーで、右が人間の腸脛靭帯らしいです)。

人とチンパンジーの腸脛靭帯

(Eng et al 2015より引用)

 

腸脛靭帯が安定性やエネルギー伝達に貢献している?

人のランニング動作においては、次の図のように腸脛靭帯がエネルギー伝達に貢献していると考えられています

腸脛靭帯の骨格筋モデル

(Eng et al 2015より引用)

そして腸脛靭帯には前部と後部に別れていて、前部(次の図でB)は大腿筋膜張筋に繋がっていて、後部(次の図でC)は大臀筋に繋がっていると考えられています

腸脛靭帯と周辺の筋肉

(Eng et al 2015より引用)

ここで腸脛靭帯炎を発症しているランナーの走る動作を解析したところ、ランニング時の脚のねじれ、膝や骨盤の不安定性などによって腸脛靭帯により大きな負荷がかかっていたそうです。

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ランニング時のエネルギー伝達や関節の安定性の確保のために腸脛靭帯が刺激されることで徐々に硬くなっていくのではないかと考えられます。腸脛靭帯の硬さには意味があり、それをうまく活かすことが大事になってくると思いますが、過度に硬くなってしまうと腸脛靭帯炎へと発展しやすくなる可能性があります。

 

筋肉の働きと腸脛靭帯炎の関係について

膝や骨盤を安定させる筋力が低下していると腸脛靭帯で安定性を代償する可能性があります。

  • 腸脛靭帯炎を発症しているランナーは筋肉の使われ方が違う可能性が示唆されています。特にランニングの接地時に大臀筋や中臀筋の筋肉の働きが遅延している可能性があるのではないか?と考えられています。

大臀筋

お尻の筋肉は片足立ちの安定性や走るパワーを生み出す機能があり、こういった筋肉が適切に働かないことで腸脛靭帯が膝を安定させたりする負荷が大きくなり、結果的に腸脛靭帯炎の原因となる可能性があります。

こういった腸脛靭帯のメカニズムを考えると、お尻の筋肉を鍛えることで腸脛靭帯炎を改善できる可能性があるのではないでしょうか。

 

まとめ

腸脛靭帯の硬さはエネルギー伝達や膝の安定性に役に立つ可能性がありますが、過度に硬くなってしまうと腸脛靭帯炎へと発展しやすくなる可能性があるのではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Geisler PR, Lazenby T. Iliotibial Band Impingement Syndrome: An Evidence-Informed Clinical Paradigm Change. International Journal of Athletic Therapy & Training. 2017;22(3):1.

  2. Eng CM, Arnold AS, Biewener AA, Lieberman DE. The human iliotibial band is specialized for elastic energy storage compared with the chimp fascia lata. Journal of Experimental Biology. 2015;218(15):2382-2393.

  3. Eng CM, Arnold AS, Lieberman DE, Biewener AA. The capacity of the human iliotibial band to store elastic energy during running. J Biomech. 2015;48(12):3341-3348.

  4. Baker RL, Souza RB, Rauh MJ, Fredericson M, Rosenthal MD. Differences in Knee and Hip Adduction and Hip Muscle Activation in Runners With and Without Iliotibial Band Syndrome. PM R. 2018;10(10):1032-1039.

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