脳神経

怪我で身体を動かさないことによる脳神経への影響

怪我をしている人は脳神経の働きが低下しているという研究結果が徐々に増えてきており、脳神経という視点が注目を浴びることがあるかと思います。それと同時に脳科学には怪しさもつきまとうため、基本的な脳神経の科学を知ることが役にたつかもしれません。

 

ポイント

  • 怪我をしている人は脳機能が低下している傾向にあり、これが怪我を引き起こしているではないか?という考え方があります。
  • 一方で怪我をして身体を動かさなくなると脳や神経の機能低下が引き起こされる可能性もあります。
  • 脳機能が低下しているから怪我をしたのか、怪我をしたから脳機能が低下したのか、その因果関係には議論があります。

 

身体活動の低下による脳神経への影響

身体を動かさなくなると筋力や柔軟性の低下を招くだけではなく、脳や神経にも影響を及ぼす可能性があります。

  • 2週間腕を固定して動かさなかったところ大脳皮質の厚みの減少、体性感覚の減少、白質の構造的な変化(fractional anisotropy)などが報告されています
  • 手や腕を固定して動かさないことで皮質脊髄路の興奮度が低下していたことが報告されています2・3
  • 一方で手足を固定して動かさないことで必ずしも皮質脊髄路の興奮度が低下するとは限らないという研究結果もあります4・5

賛否両論ありますが怪我をして身体を動かさなくなると、脳や神経の機能が低下する可能性があるわけです。

 

脳機能の低下が怪我の原因なのか?

脳神経の機能低下がみられることが多く、これが怪我の原因になっているのではないか?と考えてしまうことがあるかと思います。

 

例えば、前十字靭帯損傷において脳神経の機能低下が怪我の原因のひとつではないか?という説があります。

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研究が進まないと真実はわかりませんが、少なくとも怪我をすれば身体活動が減って必然的に脳機能が衰える可能性があるということを考慮しておくことは大切ではないでしょうか。

脳機能が衰えたから怪我をしたのか、怪我をしたから脳機能が衰えたのか、議論の余地が大いにあると思います。

 

脳科学の神話

巷には多くの脳科学に関する神話が溢れています。脳科学の小難しい用語を使うとなんだかそれっぽい雰囲気が醸し出されて説得力があるような気がします。

 

脳の活性化

脳に刺激を与えることがなんだか良いことのように感じることがあるかと思います。

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極端な話ですが慣れないことを体験させれば脳が刺激される可能性があるわけです6・7

例えば、脳トレと呼ばれるようなゲームをやって脳を活性化させることができますが、それが健康に役にたつか?と言われると賛否両論あると思います8・9

このため脳への刺激を与えればいいというわけではなく、それがどのような効果を生み出すのか?という視点も大事になってくるかと思います。

 

脳神経の機能は怪我と関係しているのか?

脳の機能や構造がスポーツのパフォーマンスや怪我の発生率と関係しているのか?という疑問はどうでしょうか。

 

例えば、筋力トレーニングは脳への刺激が小さい傾向にあり、バランスやスキルトレーニングは脳への刺激が大きい傾向にあります。

筋力トレーニングは脳への刺激が小さいからといって筋力トレーニングが不要というわけではないかと思います。

あくまで筋力トレーニングは同じ動きの繰り返しであるため脳への刺激が小さいだけであり、筋力をつけることで防げる怪我は数多くあります。

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いずれにしても脳神経だけでなく、それが筋力や柔軟性、怪我の発生率などのより直接的で実践的な指標にどのように影響するのか?という視点も大事になってくるかと思います。

 

現場での応用について

怪我によって関節を固定したり手術をしたりと運動が制限された結果として脳機能が低下する可能性がある一方で、負傷部位を治療して様々な運動を体験することでも怪我によって低下していた脳機能が高まる可能性もあるわけです。

怪我をした人の脳機能が低下している、というようなデータが示されると脳に対して何か特別なことをしなくてはいけないのではないか?と思うこともあるかもしれませんが、ありふれた運動でも意外と脳に刺激を与えられる可能性があるかと思います。

もっとも、どのような運動が脳に最適な刺激を与えらるのか?ということまではわかりませんが・・・。

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まとめ

脳や神経が怪我に関わっている可能性がありますが、怪我をしてスポーツなどの運動をしなくなることで脳機能の低下が引き起こされる可能性も考えられます。脳神経の機能が怪我の直接の原因となっているかどうかは議論が残ります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Langer N, Hänggi J, Müller NA, Simmen HP, Jäncke L. Effects of limb immobilization on brain plasticity. Neurology. 2012;78(3):182-188. doi:10.1212/WNL.0b013e31823fcd9c
  2. Burianová H, Sowman PF, Marstaller L, et al. Adaptive Motor Imagery: A Multimodal Study of Immobilization-Induced Brain Plasticity. Cereb Cortex. 2016;26(3):1072-1080. doi:10.1093/cercor/bhu287
  3. Facchini S, Romani M, Tinazzi M, Aglioti SM. Time-related changes of excitability of the human motor system contingent upon immobilisation of the ring and little fingers. Clin Neurophysiol. 2002;113(3):367-375. doi:10.1016/s1388-2457(02)00009-3
  4. Zanette G, Manganotti P, Fiaschi A, Tamburin S. Modulation of motor cortex excitability after upper limb immobilization. Clin Neurophysiol. 2004;115(6):1264-1275. doi:10.1016/j.clinph.2003.12.033
  5. Zanette G, Tinazzi M, Bonato C, et al. Reversible changes of motor cortical outputs following immobilization of the upper limb. Electroencephalogr Clin Neurophysiol. 1997;105(4):269-279. doi:10.1016/s0924-980x(97)00024-6
  6. Draganski B, Gaser C, Busch V, Schuierer G, Bogdahn U, May A. Changes in grey matter induced by training. Nature. 2004;427(6972):311-312. doi:10.1038/427311a
  7. Gaser C, Schlaug G. Brain Structures Differ between Musicians and Non-Musicians. J Neurosci. 2003;23(27):9240-9245. doi:10.1523/JNEUROSCI.23-27-09240.2003
  8. Wang G, Zhao M, Yang F, Cheng LJ, Lau Y. Game-based brain training for improving cognitive function in community-dwelling older adults: A systematic review and meta-regression. Arch Gerontol Geriatr. 2021;92:104260. doi:10.1016/j.archger.2020.104260
  9. Mansor NS, Chow CM, Halaki M. Cognitive effects of video games in older adults and their moderators: a systematic review with meta-analysis and meta-regression. Aging Ment Health. 2020;24(6):841-856. doi:10.1080/13607863.2019.1574710

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