怪我をしたときにアイシングや電気刺激などの応急処置が行われますが、これらの処置によって筋力発揮にも効果がある可能性があります。怪我をすることで神経伝達に変化が生じ、これによって筋力発揮が抑制されてしまうことがありますが、アイシングや電気刺激にはこういったものを一時的に防ぐことができ、早い回復などを見込めることもあるかもしれません。
ポイント
- 前十字靭帯断裂後などには筋力発揮が抑制されることが珍しくありません。
- アイシングによって筋力抑制を防ぎ、歩行動作の質にも変化が生じるようです。
- 電気刺激によっても一時的に筋力発揮の抑制を防ぐことができます。
怪我による筋力発揮の抑制
前十字靭帯断裂後などには筋力発揮が抑制されることが珍しくありません。このため筋力発揮の回復は怪我からの復帰を早め、その後の怪我予防にも重要となってきます。
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前十字靭帯損傷後は筋力が簡単に戻らない
怪我をした後には筋力が低下してしまい、これが簡単には元に戻らないことでさらなる怪我の悪化につながる可能性があります。リハビリを長期間頑張ったとしても怪我により身体や神経へと影響を及ぼし、そう簡単には筋 ...
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アイシング
アイシングによって怪我にともなう筋力発揮の抑制が軽減される可能性があります。
- アイシングは筋力発揮の抑制を回復させることが報告されています1・2。
- アイシングをすることで歩行動作において膝が機能しやすくなっていることが報告されています3。
- しかし部位や怪我によっては筋力発揮抑制を軽減させる働きがないようです4・5。
一般的にアイシングは神経伝達速度を遅くするため、怪我に伴う神経伝達によって引き起こされる筋力発揮の抑制が機能しなくなったのでは?というのがひとつの理由として考えられます。
アイシングにより一定の効果があり怪我をした直後の応急処置としての一時的な効果が期待できるのではないでしょうか。
経皮的電気神経刺激(TENS)
電気刺激によっても怪我にともなう筋力発揮の抑制が軽減される可能性があります。
- 電気刺激による効果はアイシングほどではありませんが、大腿神経への電気刺激により神経伝達による筋力抑制を抑えることができたことが報告されています3。
- 上記の研究では電気刺激が神経反射(H-reflex)に対して効果があることが検証されており、その他の様々な神経伝達の問題に効果を発揮するかは不明です。
詳しいメカニズムはまだまだ不明ですが、応急処置としての電気刺激によって怪我にともなう筋力発揮の抑制を一時的に防ぐことができそうです。
まとめ
怪我による神経伝達の変化によって筋力発揮の抑制が引き起こされますが、アイシングや電気刺激によってこれを一時的に防ぐことが期待できます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
<参考文献>
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- Hopkins JT, Ingersoll CD, Edwards J, Klootwyk TE. Cryotherapy and Transcutaneous Electric Neuromuscular Stimulation Decrease Arthrogenic Muscle Inhibition of the Vastus Medialis After Knee Joint Effusion. J Athl Train. 2002;37(1):25-31.
- Hopkins JT. Knee Joint Effusion and Cryotherapy Alter Lower Chain Kinetics and Muscle Activity. J Athl Train. 2006;41(2):177-184.
- Doeringer JR, Hoch MC, Krause BA. Ice application effects on peroneus longus and tibialis anterior motoneuron excitability in subjects with functional ankle instability. Int J Neurosci. 2010;120(1):17-22. doi:10.3109/00207450903337713
- Melnyk M, Faist M, Claes L, Friemert B. Therapeutic cooling: no effect on hamstring reflexes and knee stability. Med Sci Sports Exerc. 2006;38(7):1329-1334. doi:10.1249/01.mss.0000227635.86285.3b
- Hopkins JT, Ingersoll CD, Edwards JE, Cordova ML. Changes in soleus motoneuron pool excitability after artificial knee joint effusion. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 2000;81(9):1199-1203.