前十字靭帯損傷はとても大きな怪我であり、前十字靭帯を断裂してしまうとそのシーズン内での復帰は絶望的となることが多いです。
前十字靭帯への負荷を減らすためにはハムストリンスグスの筋肉を鍛えることなどが一般的ですが、それに限らずたくさんの細かい要素も影響しています。
その細かくて忘れ去られそうな要素のひとつに股関節の可動域があり、股関節の内旋の可動域も前十字靭帯に関係している可能性があります。
ポイント
- 前十字靭帯損傷をした人は股関節の内旋の可動域が減少している可能性があります
- 股関節の内旋の可動域の低下が前十字靭帯への負荷をわずかに高める可能性があります
- 股関節の可動域を確保しておくと役に立つかもしれません
股関節の内旋の可動域が減少しやすい?
前十字靭帯損傷をした人は股関節の内旋の可動域が低下している可能性があります。
- アメフト選手324名を対象に調べたところ、前十字靭帯損傷をしたことがある選手は股関節の内旋の可動域が減少している傾向にあったそうです1。
- 他の研究においてもこのように前十字靭帯損傷をした人達は股関節の内旋の可動域が減少傾向にあるようです2。
怪我をしたから可動域が落ちた可能性なども考えられますが、前十字靭帯損傷後は股関節の可動域が低下していることがあります。
股関節の内旋と前十字靭帯への負荷の関係
股関節の内旋の可動域の低下が前十字靭帯への負荷をわずかに高める可能性があります。
(Beaulieu et al 2014より引用)
- コンピューターシミュレーションによる実験において内旋の可動域が減少することで前十字靭帯への負荷が増える結果となっているようです1・2。
- 献体を使った実験においても股関節の内旋の可動域が減少することで前十字靭帯への負荷が高まっていることが確認されているようです2・3。
- 股関節の内旋の可動域が10度減少すると前十字靭帯への負荷が約1%上昇し3、負荷が劇的に増加するわけではないようです。
なぜこのようなことが起こるのかといいますと身体はつながっているためであり、
股関節による負荷の軽減が行われないと、それが膝へと影響してしまうのではないかと考えられます。
まとめ
股関節の可動域を改善させることが前十字靭帯への負荷を和らげるのに役に立つ可能性があります。
これだけが決定的な要因ではありませんが、こうした小さな要素の積み重ねが大切になってくるのではないでしょうか。
<参考文献>
Bedi A, Warren RF, Wojtys EM, et al. Restriction in hip internal rotation is associated with an increased risk of ACL injury. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2016;24(6):2024-2031.
Boutris N, Byrne RA, Delgado DA, et al. Is There an Association Between Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injuries and Decreased Hip Internal Rotation or Radiographic Femoroacetabular Impingement? A Systematic Review. Arthroscopy. 2018;34(3):943-950.
Beaulieu ML, Oh YK, Bedi A, Ashton-Miller JA, Wojtys EM. Does Limited Internal Femoral Rotation Increase Peak Anterior Cruciate Ligament Strain During a Simulated Pivot Landing?: The American Journal of Sports Medicine. Published online September 22, 2014.