股関節唇損傷 股関節インピンジメント

股関節の骨の形状の後天的な変化について

骨の構造は先天的な要素が大きいと思いますが、多少の後天的な要素も骨の形状に微妙に影響を与える場合もあるかもしれません。骨の構造の劇的な変化ではなく、激しい練習などによって骨の一部がわずかに変化するなどの微妙な変化にとどまるかもしれませんが、こういった事例も少なからず報告されているようです。

 

ポイント

  • サッカーやバレーなどの競技で股関節インピンジメントが発生することが少なくないようです
  • ユース世代のサッカー選手を2年間追跡調査したところ、股関節インピンジメントが発生する人が増えたという報告があります
  • 高い柔軟性が必要な競技では骨格異常が有利に働くこともあると考えられています

 

スポーツによって股関節の骨の構造が変化する?

股関節の骨の構造に関する評価方法が多く存在していますが、今回は股関節インピンジメントのひとつであるCam deformityを対象として説明させていただきたいと思います。

 

Cam Deformity

(Nötzli et al 2002より引用)

Cam deformityの定義は微妙に異ることがありますが、一般的にはα角が55°以上の場合や、その他にも多数の項目があります。こういった定義がそれぞれの研究で微妙に異なることがあり、これが結果に影響を及ぼす可能性もあることに注意が必要となります。

 

スポーツとCam deformityの発生について

スポーツと股関節のインピンジメントには関係があるようです

  • 股関節の大きな怪我をしたことがない95名のプロサッカー選手の股関節の骨の形状を調べたところ、半分近くがCam deformityとなっていたという報告があります
  • 他の研究でもサッカー選手、バレーボール選手、陸上選手を対象に股関節の骨の形状を調べたところ、半数近くがCam deformityとなっていたという報告があります

これらの結果をみると股関節の怪我をしていなくとも、スポーツ選手は骨に何かしらの特徴があるのかもしれません。

参照http://arthrohealth.ypo.pw/cam-impingement/

スポーツとの因果関係について

もしかしたら、スポーツによってCam deformityが引き起こされやすくなるのかもしれません。

サッカーの方向転換

  • ユース世代のサッカー選手63名を対象に股関節の骨を調べ、その約2年後にフォローアップ調査をしたところCam deformityの特徴となる傾向が高まっていたという報告があります
  • 約70名のバスケットボール選手と運動をしていない人を比べたところ、バスケットボール選手のほうがCam deformityの傾向がみられたそうです
  • 他の研究でも同様の傾向が確認されており、一般の人達で股関節の怪我がない200名を対象に股関節の骨を調べたところ、14%の人がCam deformityに該当したそうです

骨の構造は先天的な要素が大きいと思いますが、多少の後天的な要素も骨の形状に微妙に影響を与えるかもしれません。

骨の形状の変化と言っても骨の角度が変化するような根本的な構造の変化ではなく、骨の一部が少し膨れるような変化でもCam deformityに該当する可能性が考えられます。

 

野球における肩関節の変化

野球においても肩関節の骨格が刺激に応じて微妙に変化する可能性があることが報告されています。

この場合の骨の適応は、そこまで怪我などへの悪影響がないものと考えられています。

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ただ、股関節においても同じようなことが言えるのかどうかはわかりません。

 

先天的な要素も骨格に影響している?

スポーツに取り組むことで骨の形状に変化が起こるのかはまだまだ不明な点も多く、先天的な要素によって影響されている可能性も十分に考えられます。

 

  • 高い柔軟性が求められるバレエのエリートダンサーは寛骨臼形成不全などを持っている人が多いという報告があります
  • 一方でサッカー選手、バレーボール選手、陸上選手を対象に股関節の骨の構造を調べたところ、約2割が境界型寛骨臼形成不全であったそうです

参照https://hipdysplasia.org/adult-hip-dysplasia/

 

なぜバレエダンサーが寛骨臼形成不全を持っていることが多いのか詳しいことはわかっていませんが、

これは生まれつき柔軟性が高い人が生き残る競技であり、こういった骨格を持つ人が有利に働くためこのような数値になっているのではないか?とする意見もあります。

確かに寛骨臼形成不全の形を考えると、股関節が浅くはまっていて可動性があり、これによって柔軟性が高まる可能性も十分に考えられます。

ただし、この意見に対する論文等を探しておりますが、強い科学的根拠を私は見つけることができていません。

 

まとめ

骨格次第では負荷がかかりやすくなるということは起こりうるのですが、股関節の骨格が先天的なものなのか、スポーツに取り組むことで後天的に起こるものなのか、その因果関係は不明な点が多くありますが、どちらの要因も起こりうる可能性はあるのではないかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Gerhardt MB, Romero AA, Silvers HJ, Harris DJ, Watanabe D, Mandelbaum BR. The Prevalence of Radiographic Hip Abnormalities in Elite Soccer Players. Am J Sports Med. 2012;40(3):584-588.
  2. Kapron AL, Peters CL, Aoki SK, et al. The Prevalence of Radiographic Findings of Structural Hip Deformities in Female Collegiate Athletes. Am J Sports Med. 2015;43(6):1324-1330.
  3. Agricola R, Heijboer MP, Ginai AZ, et al. A cam deformity is gradually acquired during skeletal maturation in adolescent and young male soccer players: a prospective study with minimum 2-year follow-up. Am J Sports Med. 2014;42(4):798-806.
  4. Siebenrock KA, Ferner F, Noble PC, Santore RF, Werlen S, Mamisch TC. The cam-type deformity of the proximal femur arises in childhood in response to vigorous sporting activity. Clin Orthop Relat Res. 2011;469(11):3229-3240.
  5. Hack K, Di Primio G, Rakhra K, Beaulé PE. Prevalence of cam-type femoroacetabular impingement morphology in asymptomatic volunteers. J Bone Joint Surg Am. 2010;92(14):2436-2444.
  6. Harris JD, Gerrie BJ, Varner KE, Lintner DM, McCulloch PC. Radiographic Prevalence of Dysplasia, Cam, and Pincer Deformities in Elite Ballet. Am J Sports Med. 2016;44(1):20-27.
  7. Nötzli HP, Wyss TF, Stoecklin CH, Schmid MR, Treiber K, Hodler J. The contour of the femoral head-neck junction as a predictor for the risk of anterior impingement. J Bone Joint Surg Br. 2002;84(4):556-560.

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