ダッシュやスプリントなどの全力疾走でハムストリングスの肉離れが起こりやすく、走り方次第ではハムストリングスの負荷へとつながるという考え方もあるかもしれません。
ここで関連する文献を交えながら、走り方とハムストリングスの肉離れの関係についてご紹介していきたいと思います。
ポイント
- 肉離れにつながるようなランニングフォームは少ないようです。
- ランニング中の体幹やお尻の筋肉の活動量の低下は怪我のリスクとなることがあります。
- 走るスピードといった要素もハムストリングスの肉離れに関係しています。
走る動作とハムストリングスの肉離れ
走る動作を分析するには様々な視点があります。それぞれ大きな要素を見ていきたいと思います。
ランニングフォーム
肉離れにつながるようなランニングフォームは少ないことが研究で明らかになっています1。
一般的にハムストリングスの肉離れは筋肉が引き伸ばされて引き起こされると考えられていますが、
ハムストリングスがより引き伸ばされるような走り方などは、決定的な肉離れの要因とまでは言えないようです1。
根拠は弱いのですが、体幹の傾き2、骨盤の前傾3などはハムストリングスの肉離れのリスクを高める可能性があるような走り方も少なからず報告されています。
筋肉の活動量
ランニング時の筋肉の働きが肉離れに関連している可能性があります。
肉離れをしたサッカー選手は体幹の筋肉やお尻の筋肉の活動量が少ない傾向にあることが報告されています4。
原理原則として全ての筋肉には身体を守る役割があり、基本的に筋肉の働きが著しく低下しているのは好ましくありません。
筋肉をバランス良く鍛えることは怪我を防ぐ上でとても大事です。
走るスピード
もしかするとランニングフォームよりも、走るスピードなどのほうが肉離れへの影響が大きいかもしれません。
- 練習よりも試合のほうがハムストリングスの肉離れが多いことが報告されています5。
- ハムストリングスの肉離れをした選手のほうが足が速い傾向にあったという研究結果もあります6。
研究数が少なく強い証明力があるわけではありませんが、少なくとも走るスピードやパワーという要素もハムストリングスの肉離れに影響しているかと思います。
考察
ここからは個人的な考察を書かせて頂きますが、参考程度に読んでいただけたら幸いです。
ランニング動作の分析には様々なものがあり、悪いフォームで走っていないか?効率的なランニングをしているか?
といったことに注目することは珍しくないように思います。
速く走るためのランニングフォームの分析ならまだしも、一般的にランニングフォームを分析することでの怪我予防には限界があります。
どちらかというとランニングフォームよりも、動作の中で筋肉がどのように働いているか?という理解を深めたほうが、怪我予防の効果が生まれやすいと思います。
まとめ
ハムストリングスの肉離れにつながるような決定的なランニングフォームは少なく、
どちらかといえばランニング時の筋肉の働きを改善することなどが役立つかと思います。
<参考文献>
- Kalema RN, Schache AG, Williams MD, Heiderscheit B, Siqueira Trajano G, Shield AJ. Sprinting Biomechanics and Hamstring Injuries: Is There a Link? A Literature Review. Sports. 2021;9(10):141. doi:10.3390/sports9100141
- Kenneally-Dabrowski C, Brown NAT, Warmenhoven J, et al. Late swing running mechanics influence hamstring injury susceptibility in elite rugby athletes: A prospective exploratory analysis. Journal of Biomechanics. 2019;92:112-119. doi:10.1016/j.jbiomech.2019.05.037
- Schuermans J, Van Tiggelen D, Palmans T, Danneels L, Witvrouw E. Deviating running kinematics and hamstring injury susceptibility in male soccer players: Cause or consequence? Gait & Posture. 2017;57:270-277. doi:10.1016/j.gaitpost.2017.06.268
- Schuermans J, Danneels L, Van Tiggelen D, Palmans T, Witvrouw E. Proximal Neuromuscular Control Protects Against Hamstring Injuries in Male Soccer Players: A Prospective Study With Electromyography Time-Series Analysis During Maximal Sprinting. Am J Sports Med. 2017;45(6):1315-1325. doi:10.1177/0363546516687750
- Ekstrand J, Hägglund M, Waldén M. Epidemiology of Muscle Injuries in Professional Football (Soccer). Am J Sports Med. 2011;39(6):1226-1232. doi:10.1177/0363546510395879
- Ishøi L, Thorborg K, Hölmich P, Krommes K. Sprint Performance in Football (Soccer) Players with and without A Previout Hamstrings Strain Injury: An Explorative Cross-Sectional Study. Intl J Sports Phys Ther. 2020;15(6):947-957. doi:10.26603/ijspt20200947
- Edouard P, Lahti J, Nagahara R, et al. Low Horizontal Force Production Capacity during Sprinting as a Potential Risk Factor of Hamstring Injury in Football. IJERPH. 2021;18(15):7827. doi:10.3390/ijerph18157827