ハムストリングスの肉離れには様々な要因がありますが、筋持久力や筋疲労なども肉離れの原因となります。
関連する文献を交えながら、そのメカニズムについてご紹介していきます。
ポイント
- 肉離れは試合の後半など筋疲労があるときに起こりやすい傾向にあります。
- ハムストリングスの肉離れをした選手は持久力が低い傾向にあります。
- ハムストリングスの筋持久力が低い選手は肉離れのリスクがあります。
筋疲労によるハムストリングスの肉離れ
ハムストリングスの肉離れはどのような状況で起きやすいのか?それを理解することでハムストリングスの肉離れの予防につなげることができます。
肉離れの発生状況
肉離れは疲労が溜まっている時に起こりやすい傾向にあります。
- ヨーロッパサッカーを複数シーズン分析した研究では肉離れは試合の後半のほうが多いことが明らかになっています2。
- 試合後半になるとハムストリングスの活動量が落ちやすく3、大腿四頭筋と比べてハムストリングスの筋力が落ちやすい傾向にあります4・5。
このように激しい試合や大会などで筋肉が疲労していくと、ハムストリングスの肉離れへとつながる可能性があります。
疲労による肉離れのメカニズム
疲労した筋肉は衝撃吸収能力が低下していることが明らかになっており、これが肉離れにつながっていることが示唆されています6。
(Mair et al 1996より引用)
一般的に肉離れは筋肉が引き伸ばされることが原因と考えられていますが、筋肉が疲労した状態でも筋肉は同じ長さで肉離れが起こることが動物実験で明らかになっています6。
筋持久力とハムストリングスの肉離れ
ハムストリングスの筋持久力が低い選手は肉離れを起こしやすい可能性があります。
- ハムストリングスの肉離れをした選手は持久力が低く、ダッシュやスプリントを繰り返す持久力が低い傾向にあります7・8。
- 持久力が低い選手がダッシュやスプリントの回数を増やすとハムストリングスを肉離れしやすいようです9。
- ハムストリングスの筋力が大腿四頭筋に対して弱いと肉離れをしやすいのですが、これも疲労を考慮した上で考えたほうがいいのではないか?という意見もあります10。
このようにハムストリングスの筋持久力の弱さが肉離れにつながる可能性があるため、しっかりと持久力も鍛えておきたいところです。
まとめ
ハムストリングスの肉離れは筋肉が疲れている時に起こりやすいため、持久力もしっかりと鍛えておきたいところです。
<参考文献>
- Huygaerts S, Cos F, Cohen DD, et al. Mechanisms of Hamstring Strain Injury: Interactions between Fatigue, Muscle Activation and Function. Sports (Basel). 2020;8(5). doi:10.3390/sports8050065
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- Marshall PWM, Lovell R, Jeppesen GK, Andersen K, Siegler JC. Hamstring Muscle Fatigue and Central Motor Output during a Simulated Soccer Match. Hug F, ed. PLoS ONE. 2014;9(7):e102753. doi:10.1371/journal.pone.0102753
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- Mair SD, Seaber AV, Glisson RR, Garrett WE. The Role of Fatigue in Susceptibility to Acute Muscle Strain Injury. Am J Sports Med. 1996;24(2):137-143. doi:10.1177/036354659602400203
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