足のアーチが低い扁平足は様々な問題を生み出すと考えられており、扁平足は外反母趾に関わっているのではないかという考え方があります。
ここで文献を交えながら、扁平足と外反母趾の関係性についてご紹介していきたいと思います。
ポイント
- 外反母趾において扁平足も同時に抱えていることが珍しくありません。
- 関節の不安定さが扁平足や外反母趾を生み出している可能性があります。
- 足部や中足骨のプロネーションにより母趾の負荷が高まる可能性があります。
扁平足と外反母趾の発生率
外反母趾を抱えている人は扁平足であることが珍しくないようです。
- 扁平足と外反母趾の関係がみられ1・2、怪我の重症度や再発可能性などにも関係していることが報告されています3・4。
- 一方で扁平足との関係はみられなかったとする研究結果も多くあります5・6・7・8・9。
必ずしも外反母趾と扁平足が関係しているわけではありませんが、多少なりとも扁平足が影響している可能性が考えられるのではないでしょうか。
扁平足による外反母趾のメカニズム
扁平足がいかにして外反母趾へとつながるのか?そのメカニズムには様々な説があります。
関節の不安定さ
足部の関節の不安定さが外反母趾へとつながる可能性があります。
(Kido et al 2020より引用)
扁平足を抱えている場合には足の筋力不足などにより足部の不安定さが生じやすい可能性が示唆されています10。
扁平足は指先の問題だけではなく指の付け根となる足部の中心部分などからの影響も受け、これが中足骨の角度などに影響を及ぼす可能性があります。
足部のプロネーション
扁平足は足部のプロネーションと関係していることがあり、これによって中足骨の形に影響を及ぼし外反母趾につながるという考え方もあります。
- 具体的には足部のプロネーションを抱えている人達は第一中足骨の先が丸まった形状が多く、これが母趾関節の不安定さへとつながるようです11。
- 手術で第一中足骨のプロネーションを修正することを推奨する意見もあり、その後の経過や再発率などが違ってくるようです12。
(Wagner and Wagner 2018より引用)
衝撃吸収
扁平足を抱えている場合には歩行やランニング時などの衝撃吸収能力に劣る可能性があり13、これが扁平足につながっているのではないかという考え方もあります。
しかしながら、この考え方に対する論文数が少なく科学的根拠は弱いかもしれません。
考察
ここからは考察を書かせていただきますが、いち専門家の意見は客観的な証明力が弱いという前提で読んでいただければと思います。
扁平足がなぜ外反母趾を生み出すのか?について様々な説がありますが、断言できるほどの強い科学的根拠があるわけではありません。
扁平足を抱えている場合には何かしらの機能低下が生じている可能性があり、それが外反母趾にも影響を及ぼす可能性も考えられます。
しかし、扁平足はそもそもの骨格的な構造によって生じていることもあり、必ずしも足部の機能低下が関わっているとは限りません。
このため扁平足と外反母趾の関係性がみられなかったという研究結果も生まれるのではないかと思います。
外反母趾を抱えている場合にはアプローチできることには限りがあるため、目につきやすい扁平足にアプローチするというのは自然なことだと思います。
扁平足が外反母趾の直接の原因かどうかはともかく、足部に対して何らかのアプローチを試みることは足部を整えることへとつながるのではないでしょうか。
まとめ
扁平足が外反母趾の直接の原因となっているかどうかは微妙なところですが、外反母趾の改善のために扁平足に着目することは役に立つ可能性があるかと思います。
<参考文献>
- Atbaşı Z, Erdem Y, Kose O, Demiralp B, Ilkbahar S, Tekin HO. Relationship Between Hallux Valgus and Pes Planus: Real or Fiction? J Foot Ankle Surg. 2020;59(3):513-517. doi:10.1053/j.jfas.2019.09.037
- Komeda T, Tanaka Y, Takakura Y, Fujii T, Samoto N, Tamai S. Evaluation of the longitudinal arch of the foot with hallux valgus using a newly developed two-dimensional coordinate system. Journal of Orthopaedic Science. 2001;6(2):110-118. doi:10.1007/s007760100056
- Heyes GJ, Vosoughi AR, Weigelt L, Mason L, Molloy A. Pes Planus Deformity and Its Association With Hallux Valgus Recurrence Following Scarf Osteotomy. Foot Ankle Int. 2020;41(10):1212-1218. doi:10.1177/1071100720937645
- Tay AYW, Goh GS, Thever Y, Yeo NEM, Koo K. Impact of pes planus on clinical outcomes of hallux valgus surgery. Foot Ankle Surg. Published online April 10, 2021:S1268-7731(21)00082-5. doi:10.1016/j.fas.2021.04.004
- Suh DH, Kim HJ, Park JH, Park YH, Koo BM, Choi GW. Relationship between Hallux Valgus and Pes Planus in Adult Patients. J Foot Ankle Surg. 2021;60(2):297-301. doi:10.1053/j.jfas.2020.06.030
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- Kido M, Ikoma K, Sotozono Y, et al. The influence of hallux valgus and flatfoot deformity on metatarsus primus elevatus: A radiographic study. J Orthop Sci. 2020;25(2):291-296. doi:10.1016/j.jos.2019.03.020
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- Wagner P, Wagner E. Is the Rotational Deformity Important in Our Decision-Making Process for Correction of Hallux Valgus Deformity? Foot and Ankle Clinics. 2018;23(2):205-217. doi:10.1016/j.fcl.2018.01.009
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