野球肩

肩関節の内旋の可動域の低下とピッチャーの怪我のリスク

ピッチャーの投球シーン

一般的には可動域が低下しているほど怪我のリスクが高まると考えられており、柔軟性を高めるためにストレッチなどを行うことが多いことかと思います。確かに柔軟性が低下することはいいことではないのですが、実はそれが身体を守るために必要なことだったりする場合があります。

 

ポイント

  • 内旋の可動域が低下すると怪我のリスクが高まる可能性があります
  • 骨が適応して内旋の可動域が低下した場合にはそこまで怪我のリスクは高まらないようです
  • 筋肉や関節包などの硬さによる可動域の低下が怪我のリスクに関係しているようです

 

肩関節の内旋の可動域の低下

肩関節の内旋の可動域の低下には、骨や筋肉といった異なる原因が考えられます。

肩関節の内旋の可動域低下はピッチャーなど肩を挙上するスポーツによくみられる症状で、肩や肘などの怪我のリスクを高めます。諸説ありますがこれはGIRDと呼ばれ、内旋の可動域が反対側と比べて20°減少する場合などに怪我のリスクを高めると考えられています1〜4

肩の内旋の可動域の低下

参照https://mikereinold.com/3-ways-to-gain-shoulder-internal-rotation/

しかしながら、肩関節の内旋の可動域の低下が必ずしも悪いわけではないという議論もあり、肩を守るための機能のために引き起こされたものではないか?という考え方もあります。ここで内旋の可動域が減少する要因として主に二つあります。

 

骨の形状の変化による影響

骨の適応による可動域の変化ならばそこまで大きなリスクにならないという考え方があります。

肩の外旋の可動域の適応

参照https://mikereinold.com/gird-glenohumeral-internal-rotation-deficit/

  • 内旋の可動域が減少していても外旋の可動域が増加し、下の図のように内旋と外旋の可動域の合計に変化がないときは骨が適応している状態だと考えるそうです。
  • 怪我のないピッチャーでもある程度の骨がストレスに適応し、このような状態になりやすいそうです
  • このような骨の変化があると球速も上がるという研究結果もあります

このように内旋の可動域の低下が必ずしも悪いこととは言えない場合もあります。

 

肩の後部の関節包や筋肉などの硬化による影響

同じ肩の内旋の可動域の減少でも筋肉などが硬くなることは怪我のリスクが高まると言われています。これは下の図のように内旋と外旋の可動域の合計が減少している状態を指します 。

筋肉による肩の内旋の可動域の低下

参照https://mikereinold.com/gird-glenohumeral-internal-rotation-deficit/

ピッチャーの多くがある程度の可動域の減少がありますが、 内旋の可動域が反対側と比べて20°以上減少し、かつ内旋と外旋の可動域の合計が反対側と比べて5°以上減少した場合に怪我のリスクが高まります

 

肩関節が単純に柔らかければいいのか?

肩関節の柔らかさと安定性を同時に高めていくことが大切かと思います。

可動域が減少しているのだからストレッチなどで肩の柔らかさを増した方がいいと考えることは少なくないと思います。しかし単純にやわからいほうがいいというわけでもないようです。

肩のローテーターカフ

  • ローテーターカフを怪我した人の再発率を調べた研究があるのですが、興味深いことに肩が硬い人のほうが怪我の再発率が低かったという報告があります
  • 怪我をしていないピッチャーも肩周りがある程度硬くなることが報告されています

なぜ肩周りが硬くなるのか?そのメカニズムを考慮したうえで、可動域を改善していくと同時に肩周りを安定させるエクササイズもしっかりと取り入れると怪我予防に役に立つかもしれません。

 

まとめ

肩の可動域が低下することで怪我をしやすくなってしまう可能性がありますが、筋肉が硬くなることで身体にとって良い影響も悪い影響も起こり得ます。その人の状態やバランスを見極めたうえでのアプローチが大切になってくるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Kibler WB, Sciascia A, Thomas SJ. Glenohumeral internal rotation deficit:  pathogenesis and response to acute throwing. Sports Med Arthrosc Rev. 2012;20(1):34-38.

  2. Burkhart SS, Morgan CD, Kibler WB. The disabled throwing shoulder: spectrum of pathology Part I: pathoanatomy and biomechanics. Arthrosc J Arthrosc Relat Surg Off Publ Arthrosc Assoc N Am Int Arthrosc Assoc. 2003;19(4):404-420.

  3. Rose MB, Noonan T. Glenohumeral internal rotation deficit in throwing athletes: current perspectives. Open Access J Sports Med. 2018;9:69-78.

  4. Tokish JM. Acquired and adaptive changes in the throwing athlete: implications on the disabled throwing shoulder. Sports Med Arthrosc Rev. 2014;22(2):88-93.

  5. Takenaga T, Sugimoto K, Goto H, et al. Posterior Shoulder Capsules Are Thicker and Stiffer in the Throwing Shoulders of Healthy College Baseball Players: A Quantitative Assessment Using Shear-Wave Ultrasound Elastography. Am J Sports Med. 2015;43(12):2935-2942.

  6. Manske R, Wilk KE, Davies G, Ellenbecker T, Reinold M. Glenohumeral motion deficits: friend or foe? Int J Sports Phys Ther. 2013;8(5):537-553.

  7. Kim I-B, Jung D-W. A Rotator Cuff Tear Concomitant With Shoulder Stiffness Is Associated With a Lower Retear Rate After 1-Stage Arthroscopic Surgery. Am J Sports Med. 2018;46(8):1909-1918.

  8. Takenaga T, Sugimoto K, Goto H, et al. Posterior Shoulder Capsules Are Thicker and Stiffer in the Throwing Shoulders of Healthy College Baseball Players: A Quantitative Assessment Using Shear-Wave Ultrasound Elastography. The American Journal of Sports Medicine. 2015;43(12):2935-2942.

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