前十字靭帯損傷

前十字靭帯断裂と感覚入力による筋力発揮の変化について

前十字靭帯断裂をすると身体を守るために筋力発揮が低下すると言われています。これには様々な説がありますが、そのひとつに感覚器の反応が低下して神経伝達に何らかの異常が生じるためという考え方があり、”gamma-loop-dysfunction”などと呼ばれています。

 

ポイント

  • 前十字靭帯断裂をした脚の神経伝達の変化は筋力低下に関わっているようです。
  • 筋力発揮には感覚入力が必要なようで、麻酔などで感覚器からの情報が遮断されると筋力発揮が低下することがあるようです。
  • 反対側の脚の神経伝達にも影響が及び、反対側の脚の筋力低下が起こることもあるようです。

 

前十字靭帯損傷による神経への影響

前十字靭帯損傷した脚は神経の反応が変化すると言われています。

感覚受容器

  • 麻酔を注入すると大腿四頭筋の活動量が減少した
  • 大腿四頭筋に20分の振動を与えたところ健康な脚の筋肉の活動量が減少したが、前十字靭帯断裂した脚と麻酔を注入した脚にはこのような変化はみられなかったそうです
  • 通常ならば振動によって神経伝達の働きが悪くなるため、上記を踏まえると前十字靭帯断裂した脚も同じように感覚器や神経伝達の影響があるのではないか?と考えられています。

このように前十字靭帯損傷により神経に影響が及び、これが大腿四頭筋などの筋力低下につながっているのではないか?と考えられています。

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神経伝達機能異常のメカニズム

振動を与えることによって神経の興奮度が低下するのには、筋紡錘とゴルジ腱器官の働きが関わっていると考えられます

例えば、筋肉が急激に引き伸ばされることで筋紡錘が過剰に働き反射的に筋肉は硬くなります。ここにストレッチで筋肉が伸ばされると腱にある感覚器であるゴルジ腱器官が反応して筋肉をゆるめます。

腱に振動を当て続けることでもこのような神経の反応を引き出せるはずなのに、前十字靭帯断裂した人にはこの反応がみられないというわけです。

参照https://slideplayer.com/slide/9328116/

ここでgamma motor neuronは持続的な筋肉活動に影響を及ぼしており、持続的に腱に振動を当て続けることはgamma motor neuronに対する刺激であると考えられるわけです。

この刺激に対して適切な反応が得られないために”gamma-loop-dysfunction”と言えるわけです。

 

怪我をしていない方の脚も影響を受けている?

前十字靭帯断裂は怪我をした方の脚だけでなく、反対側の脚にも影響が及ぶ可能性があります。

大腿四頭筋

  • 前十字靭帯損傷により怪我をしていない方の脚も大腿四頭筋の筋力発揮が低下する可能性があることが報告されています
  • 前十字靭帯断裂した人の怪我をしていない方の脚は長時間の振動によって大腿四頭筋の活動量が落ちなかったことが報告されています。(通常ならば振動によって神経伝達の働きが悪くなる
  • 手術の前後で神経伝達に大きな違いがないことが確認されています。このことから怪我をしていない方の筋力発揮の変化は前十字靭帯断裂時に起きたのではないかと考えられています。

このように前十字靭帯断裂をしていない方の脚は筋肉量が低下していないものの、神経伝達などの影響により筋力発揮が低下している可能性が示唆されています。

 

まとめ

前十字靭帯断裂により神経伝達に変化が生じる可能性があり、これによって筋力発揮が制限されてしまうという説があるようです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Konishi Y, Fukubayashi T, Takeshita D. Possible mechanism of quadriceps femoris weakness in patients with ruptured anterior cruciate ligament. Med Sci Sports Exerc. 2002;34(9):1414-1418.
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  6. Konishi YU. ACL Repair Might Induce Further Abnormality of Gamma Loop in the Intact Side of the Quadriceps Femoris. Int J Sports Med. 2011;32(04):292-296.

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