柔軟性を高めることは怪我を予防するための基本であると考えられています。しかし、柔軟性を高めることで怪我を防げるケースとそうでないケースがあります。特に肉離れにおいては柔軟性との関係性に疑問が生まれることがありますが、競技や部位によって柔軟性と肉離れのリスクが変わってくることが考えられます。
ポイント
- 柔軟性を高めて肉離れを防ぐのには限界があるようです
- より柔軟性が求められる競技では柔軟性の高さが肉離れ防止につながりやすいようです
柔軟性と肉離れのリスクについて
柔軟性を高めることが必ずしも肉離れのリスクを下げるわけではないという意見があります。というのも過去の研究を調べてみると柔軟性と肉離れのリスクの関係性は弱いという報告がいくつもあります1。
例えば、ハムストリングスの肉離れに関しては肉離れをした選手とそうでない選手の股関節の柔軟性に大きな差はなかったようで、柔軟性よりも筋力のほうが怪我のリスクと強い関係性がある傾向にあったそうです2。
ハムストリングスの肉離れをした選手もそれなりの可動域を確保していましたが、高ければ高いほどいいというわけでないようです。
そして、このようなデータがあるため肉離れ予防に柔軟性は必要ないという発想になることが考えられますが、必ずしも柔軟性は肉離れと関係していないとは言い切れません。
柔軟性が肉離れの予防で大切になるケース
一定程度の柔軟性の確保は肉離れの予防で大切になってきます。
興味深いことにサッカーの内転筋の肉離れのケースにおいては股関節の柔軟性の低下が肉離れと強く関係していたようですが、アイスホッケーやラグビーにおいては柔軟性と肉離れの関係性が弱かったそうです3。
なぜサッカーの内転筋の肉離れは柔軟性との関係が強くなるのか?いくつかの理由が考えられますが、やはりサッカーにおいて求められている股関節の可動域が大きいことが影響しているのではないでしょうか。
その競技で求められている可動域が大きいほどに、柔軟性が肉離れの予防に影響してくる可能性があります。このためハムストリングスの肉離れにおいてはそこまで柔軟性が怪我のリスクとなっていなかったのではないかと考えられます。
まとめ
柔軟性が肉離れの関係は一概に言えるものではなく、競技で求められている可動域を確保できているのかどうか?という視点が役に立つかもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
<参考文献>
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McHugh MP, Cosgrave CH. To stretch or not to stretch: the role of stretching in injury prevention and performance. Scand J Med Sci Sports. 2010;20(2):169-181.
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Liu H, Garrett WE, Moorman CT, Yu B. Injury rate, mechanism, and risk factors of hamstring strain injuries in sports: A review of the literature. Journal of Sport and Health Science. 2012;1(2):92-101.
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Hrysomallis C. Hip Adductorsʼ Strength, Flexibility, and Injury Risk: Journal of Strength and Conditioning Research. 2009;23(5):1514-1517.