野球肩

疲労によるピッチング動作への影響

ピッチャーの投球数が増えると怪我をしやすいことは広く知られていますが、疲労によってピッチング動作にどのような変化が生じるのか?については意外と知らないこともあるかもしれません。

ここでピッチャーは疲労時にどのように投球動作が変化するのか、いくつかの研究とともにご紹介していきたいと思います。

 

ポイント

  • 疲労によって投球時の筋肉の働きが低下していきます。
  • 疲労時の投球動作において肩や肘に乱れが生じることがありますが、体幹部や脚の働きが低下することも珍しくないようです。
  • 肩関節の動きや角度の検出する感覚の低下も疲労によって生じる可能性があります。

 

疲労と筋肉の働きの変化

ピッチングに伴う疲労によって筋肉の働きが低下していきます。

肩のローテーターカフ

  • 試合後のピッチャーは棘下筋など肩のローテーターカフの筋肉の活動量が低下していることが報告されています1。
  • 疲労によりピッチャーの筋力が低下することが報告されています
  • 体幹の筋肉の疲労によって肩にも影響が及び、結果として肩の筋力が低下することも起こるようです

このようにピッチングの疲労によって筋肉が思うように働かなくなってしまうことが起こり、それによって肩に必要以上の負荷がかかってしまうことが考えられます。

 

疲労と投球動作の変化

疲労によって投球動作に乱れが生じることがあります。

その影響は肩や腕、そして体幹部や下半身にも影響が及ぶ可能性があります。

それぞれ研究結果をみていきましょう。

 

肩周りにおけるピッチング動作の変化

繰り返しの投球による疲労により肩周りのピッチング動作に変化が生じることがあります。

投球動作

  • ユース世代のピッチャーを対象とした研究では、繰り返しの投球によって肩や腕回りのピッチングモーションに変化はみられなかったことが報告されています
  • 大学生のピッチャーを対象とした研究で疲労により肩や腕などの投球動作に変化がみられなかったことが報告されています
  • 大学生を対象とした別の研究では肩の最大外旋の減少や肘の高さの減少の変化などが報告されています
  • 疲労によりピッチング時の肘の高さが減少し、肘の負荷が増す可能性があることが示唆されていますが、肘や肩には大きな変化がみられなかったとする研究結果が多いことがシステマティックレビューで報告されています10
  • ストレートやカーブ、チェンジアップなど球種の違いは、疲労による投球動作の変化にそこまで影響しないことが報告されています11

このようにピッチング時の疲労が投球動作にどのような影響を与えるのかは研究によってバラツキがあり、必ずしも一定ではありません。

 

下半身や体幹部におけるピッチング動作の変化

疲労によって変化するのは腕回りだけでなく、体幹部や脚のピッチング動作にも変化が生じることがあります。

  • ユース世代のピッチャーを対象とした研究では繰り返しの投球により、ピッチングモーションに乱れが生じることが報告されています。興味深いのは肩周りの動作の乱れよりも、体幹部や脚の変化が顕著であった点です。
  • 高校生や大学生を対象とした研究では疲労によりピッチング時のストライドの幅が小さくなる傾向があることが報告されています。より大きなストライドを維持するにはエネルギーが必要であり、ストライドの減少は球速にも関係があるようです
  • 疲労により投球時の体幹部の傾きの減少がみられたが、他に大きな変化はみられなかったことが報告されています
  • ある研究では投球数が増えていくことでスクワットジャンプに大きな変化はみられなかったが、股関節の内外転の力が弱くなり、これが球速の低下と相関関係がみられたことが報告されています

疲労によってピッチング時の肩や肘周りの変化が起こり得ると思いますが、同時に体幹部や脚の影響が意外と大きいところが見逃せない点です。

投球動作のパワーは脚から生み出されていると言われるように、脚の働きや、そこから体幹部を通したエネルギー伝達などに関わってきます。

投球時の脚の使い方が怪我や球速に及ぼす影響

 

疲労と感覚の変化

ピッチング時の疲労は、肩周りの感覚を鈍くするする可能性があります。

野球ピッチャー

  • 複数の研究では疲労によって肩の角度や動きを検出する能力が低下し、実際の動きと頭の中の動きにズレが生じやすいことが報告されています10・12・13
  • 疲労により肩関節や肩甲骨のポジションや可動域に変化があることが報告されています14

このように疲労によって肩の固有感覚が鈍くなり、肩の位置やポジションにもズレが生じる可能性があります。

これによって肩をうまく調整できず、肩に負荷がかかってしまうことも考えられるかと思います。

 

まとめ

ピッチング時の疲労によって筋肉の働きの低下や、ピッチング動作の効率の低下、さらには肩関節周りの感覚の低下などを招く可能性があり、疲労によって肩への負荷が高まりやすい投球動作になることも考えられます。

疲れている時にこそ上手にマネジメントしていきたいところです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Gandhi J, ElAttrache NS, Kaufman KR, Hurd WJ. Voluntary activation deficits of the infraspinatus present as a consequence of pitching-induced fatigue. J Shoulder Elbow Surg. 2012;21(5):625-630. doi:10.1016/j.jse.2011.04.012
  2. Jildeh TR, Okoroha KR, Tramer JS, et al. Effect of Fatigue Protocols on Upper Extremity Neuromuscular Function and Implications for Ulnar Collateral Ligament Injury Prevention. Orthop J Sports Med. 2019;7(12):2325967119888876. doi:10.1177/2325967119888876
  3. Rosemeyer JR, Hayes BT, Switzler CL, Hicks-Little CA. Effects of Core-Musculature Fatigue on Maximal Shoulder Strength. J Sport Rehabil. 2015;24(4):384-390. doi:10.1123/jsr.2014-0216
  4. Erickson BJ, Sgori T, Chalmers PN, et al. The Impact of Fatigue on Baseball Pitching Mechanics in Adolescent Male Pitchers. Arthroscopy. 2016;32(5):762-771. doi:10.1016/j.arthro.2015.11.051
  5. Crotin RL, Kozlowski K, Horvath P, Ramsey DK. Altered stride length in response to increasing exertion among baseball pitchers. Med Sci Sports Exerc. 2014;46(3):565-571. doi:10.1249/MSS.0b013e3182a79cd9
  6. Escamilla RF, Barrentine SW, Fleisig GS, et al. Pitching biomechanics as a pitcher approaches muscular fatigue during a simulated baseball game. Am J Sports Med. 2007;35(1):23-33. doi:10.1177/0363546506293025
  7. Grantham WJ, Byram IR, Meadows MC, Ahmad CS. The Impact of Fatigue on the Kinematics of Collegiate Baseball Pitchers. Orthop J Sports Med. 2014;2(6):2325967114537032. doi:10.1177/2325967114537032
  8. Yanagisawa O, Taniguchi H. Changes in lower extremity function and pitching performance with increasing numbers of pitches in baseball pitchers. J Exerc Rehabil. 2018;14(3):430-435. doi:10.12965/jer.1836196.098
  9. Okoroha KR, Meldau JE, Lizzio VA, et al. Effect of Fatigue on Medial Elbow Torque in Baseball Pitchers: A Simulated Game Analysis. Am J Sports Med. 2018;46(10):2509-2513. doi:10.1177/0363546518782451
  10. Jildeh TR, Okoroha KR, Tramer JS, et al. Effect of Fatigue Protocols on Upper Extremity Neuromuscular Function and Implications for Ulnar Collateral Ligament Injury Prevention. Orthop J Sports Med. 2019;7(12):2325967119888876. doi:10.1177/2325967119888876
  11. Oliver GD, Plummer H, Henning L, et al. Effects of a Simulated Game on Upper Extremity Pitching Mechanics and Muscle Activations Among Various Pitch Types in Youth Baseball Pitchers. J Pediatr Orthop. 2019;39(8):387-393. doi:10.1097/BPO.0000000000000980
  12. Tripp BL, Yochem EM, Uhl TL. Functional fatigue and upper extremity sensorimotor system acuity in baseball athletes. J Athl Train. 2007;42(1):90-98.
  13. Iida N, Kaneko F, Aoki N, Shibata E. The effect of fatigued internal rotator and external rotator muscles of the shoulder on the shoulder position sense. J Electromyogr Kinesiol. 2014;24(1):72-77. doi:10.1016/j.jelekin.2013.10.008
  14. Chopp-Hurley JN, O’Neill JM, McDonald AC, Maciukiewicz JM, Dickerson CR. Fatigue-induced glenohumeral and scapulothoracic kinematic variability: Implications for subacromial space reduction. J Electromyogr Kinesiol. 2016;29:55-63. doi:10.1016/j.jelekin.2015.08.001

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