腰痛のメカニズム

横隔膜と呼吸トレーニングによる腰痛の軽減について

スポーツやエクササイズの中で呼吸が大事だと言われることがあり、呼吸に関するトレーニングが行われることがあるかと思います。

その中でも横隔膜の働きと腰痛への関係について文献を紹介しながら、そのメカニズムについてご紹介していきたいと思います。

 

ポイント

  • 横隔膜が働くことで腹圧が上昇して体幹部が安定しやすくなります。
  • 疲労などにより横隔膜の働きが低下すると体幹部が不安定になる可能性があります。
  • 呼吸のトレーニングによって横隔膜が鍛えられ、腰痛が軽減する可能性があります。

 

横隔膜と体幹部の安定性

腹部の圧力が高いことで腰椎への負荷が軽減することが明らかになっています1。

腹筋

腹圧には様々な筋肉が関わっており、基本的には体幹部周辺の筋肉を収縮させることで圧力を高められると考えられ、

このようなことから横隔膜の筋肉が働くことで腰への負荷を減らせると考えられます

 

横隔膜の疲労による体幹の機能低下

横隔膜の働きが低下することで体幹部分の安定性が低下する可能性があります。

片足バランス

  • 横隔膜が疲労をすると体幹部のブレが大きくなり、バランスを崩しやすいことが研究報告されています
  • 腰痛を抱えている人のほうが横隔膜が疲労しやすい傾向にあることが研究報告されています

 

横隔膜のポジションの影響

横隔膜のポジションは体幹部の安定性に影響を及ぼす可能性があるかもしれません。

  • 脚の動きで横隔膜のポジションが影響を受けることが報告されています
  • 腰痛を抱えている人のほうが手足の動きに伴う横隔膜のポジションが高く、横隔膜の動きが小さい傾向にあることが報告されています
  • 横隔膜の動きが小さいとバランスを崩しやすいという研究結果もあるようです

なぜこのようなことが起こるのか詳細な影響を検証した研究はまだまだ数が少ないのですが、

横隔膜の働きが弱いことや、腹圧が弱まり体幹部の安定性が低下するなどの可能性が考えられます。

 

横隔膜のトレーニングと腰痛への効果

横隔膜を呼吸トレーニングなどで鍛えることで腰痛が軽減される可能性があります。

  • 数週間の呼吸のトレーニングで腰痛の減少することが報告されています8・9
  • 呼吸のトレーニングによりバランスが安定しやすくなることが報告されています8・10・11
  • 呼吸のトレーニングで横隔膜が鍛えられるだけでなく9・11、多裂筋や腹横筋などの体幹の筋肉も鍛えられます

このように呼吸のトレーニングをすることで横隔膜が鍛えられ、体幹部が安定しやすくなり腰への負荷も軽減するようです。

 

考察

横隔膜は大事な筋肉ではありますが、過剰評価されることもあるような気がするので個人的な考察を述べさせていただきます。

いち専門家の意見というのは最も科学的証明力が弱いという前提で読んでいただければと思います。

 

横隔膜があまり機能していないという場合に呼吸のトレーニングが効果を発揮するかもしれませんが、それなりに機能している人に横隔膜に高い負荷をかけるようなエクササイズをやったところで・・・という疑問が残ります。

そもそもが小さい筋肉であるため徹底的に負荷をかけたところで得られる効果は小さいと思いますし、

大きな筋肉のほうが体幹部の安定性に与える影響が大きいため、横隔膜だけトレーニングし続けることは効率が悪いような気がします。

サイドプランク

慣れてきたら徐々に他の体幹のトレーニングに移行して、その複合的なエクササイズの中で息の使い方に意識を向けてみるというようなやり方のほうが効率がいいのではないかと個人的には思います。

 

呼吸トレーニングの一環でお腹を凹ませるようなドローインなどが行われることがありますが、

ドローインで腹圧を高めても体幹部の安定性が高まるとは限らないということに注意が必要です。

腰痛におけるドローイン神話とそのメカニズムについて

 

まとめ

呼吸に関する横隔膜などの筋肉を鍛えることで腰への負担が減り、腰痛が軽減されることがあるかもしれません。

呼吸の機能低下が見受けられる人に効果を発揮するかもしれませんが、呼吸だけが全てではなく、あくまでひとつの要素に過ぎないということに注意が必要です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Hodges PW, Eriksson AEM, Shirley D, Gandevia SC. Intra-abdominal pressure increases stiffness of the lumbar spine. J Biomech. 2005;38(9):1873-1880. doi:10.1016/j.jbiomech.2004.08.016
  2. Hodges PW, Gandevia SC. Changes in intra-abdominal pressure during postural and respiratory activation of the human diaphragm. J Appl Physiol (1985). 2000;89(3):967-976. doi:10.1152/jappl.2000.89.3.967
  3. Janssens L, Brumagne S, Polspoel K, Troosters T, McConnell A. The effect of inspiratory muscles fatigue on postural control in people with and without recurrent low back pain. Spine (Phila Pa 1976). 2010;35(10):1088-1094. doi:10.1097/BRS.0b013e3181bee5c3
  4. Janssens L, Brumagne S, McConnell AK, Hermans G, Troosters T, Gayan-Ramirez G. Greater diaphragm fatigability in individuals with recurrent low back pain. Respir Physiol Neurobiol. 2013;188(2):119-123. doi:10.1016/j.resp.2013.05.028
  5. Kolar P, Sulc J, Kyncl M, et al. Stabilizing function of the diaphragm: dynamic MRI and synchronized spirometric assessment. J Appl Physiol (1985). 2010;109(4):1064-1071. doi:10.1152/japplphysiol.01216.2009
  6. Kolar P, Sulc J, Kyncl M, et al. Postural function of the diaphragm in persons with and without chronic low back pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2012;42(4):352-362. doi:10.2519/jospt.2012.3830
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  9. Finta R, Nagy E, Bender T. The effect of diaphragm training on lumbar stabilizer muscles: a new concept for improving segmental stability in the case of low back pain. J Pain Res. 2018;11:3031-3045. doi:10.2147/JPR.S181610
  10. Ki C, Heo M, Kim H-Y, Kim E-J. The effects of forced breathing exercise on the lumbar stabilization in chronic low back pain patients. J Phys Ther Sci. 2016;28(12):3380-3383. doi:10.1589/jpts.28.3380
  11. Dülger E, Bilgin S, Bulut E, et al. The effect of stabilization exercises on diaphragm muscle thickness and movement in women with low back pain. J Back Musculoskelet Rehabil. 2018;31(2):323-329. doi:10.3233/BMR-169749

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