長時間自転車に乗っていると腰痛に悩まされることが珍しくなく、自転車に乗る時の姿勢が腰痛の原因のひとつであると考えられています。
自転車のハンドルやサドルの調整次第では腰への負荷が高まってしまうこともあり、さらに体幹周りの筋肉の働きが低下していることも腰痛につながる可能性があります。
ポイント
- 自転車に乗っているときに背中が丸まっていると腰痛が起きやすい傾向にあります
- ハンドルの高さやサドルの角度など自転車が身体に合っていないと背中が丸まります
- 自転車での腰痛では体幹のインナーマッスルの働きや背筋の持久力などが低い傾向にあります
自転車に乗る姿勢と腰痛の関係
長時間のサイクリングで体幹部を屈曲し続けることが腰痛の原因と考えられています1。
- 背中が丸まっているようなカーブが大きいほど腰痛が起きやすい傾向にあるという研究結果があります2・3。
- 背中が丸まっている状態だと脊柱起立筋の力が発揮する方向が変わり4、重力に対して効率的に力を発揮しにくくなる可能性が考えられます。
このように背中が丸まった状態が長時間続いてしまうと腰痛につながりやすくなります。
自転車の調整と腰痛の関係
自転車が身体に合っていないこともひとつの原因と考えられています。
- ハンドルが低いと背中のカーブが大きくなりやすいことが報告されています6。
- サドルの角度も影響すると考えられており、サドルの角度を調整したことで腰痛が軽減されていることが報告されています1。
(Salai et al 1999より引用)
このように自転車の調整次第では腰に負担がかかりやすくなることもあります。
立位での姿勢と背中のカーブ
普段何気なく立っている姿勢と、自転車に乗っている時の姿勢が違ってくることも珍しくないようです。
自転車の選手は立位で背中が丸まったり腰が反ったりしていても、自転車に乗った状態では背中のカーブが減少することも珍しくないようです7。
このため立位の姿勢だけでなく、自転車に乗った姿勢というより競技動作に近い状態で確かめておいたほうがいいかもしれません。
体幹部の柔軟性や筋力について
体幹部の筋肉を整えることも自転車における腰痛を軽減させるのに役に立つ可能性があります。
- 自転車選手の腰痛と柔軟性に関連性はみられなかったことが報告されています8。
- 腰痛を持っている人は体幹のインナーマッスが小さかったことが報告されています6・8。
- 腰痛と背筋の筋力に関係はみられなかったが、腰痛を持っている人は背筋の持久力が低い傾向にあります8。
長時間同じような姿勢が続くという自転車の性質があり、大きな力を発揮する筋力よりも持久力のほうが重要性が高いのかもしれません。
まとめ
自転車に乗る時に背中が丸まってしまうような姿勢では筋肉を効率的に使うことができず、腰への負荷が高まってしまう可能性があります。
自転車のハンドルやサドルを調整することで良い姿勢にすることや、体幹部などを鍛えることが腰への負担を和らげるのに役に立つ可能性があります。
<参考文献>
- Marsden M, Schwellnus M. Lower back pain in cyclists: A review of epidemiology, pathomechanics and risk factors. International SportMed Journal. 2010;11(1):216-225.
- Rodseth M, Stewart A. Factors associated with lumbo-pelvic pain in recreational cyclists. South African Journal of Sports Medicine. 2017;29(1):1-8.
- Van Hoof W, Volkaerts K, O’Sullivan K, Verschueren S, Dankaerts W. Comparing lower lumbar kinematics in cyclists with low back pain (flexion pattern) versus asymptomatic controls--field study using a wireless posture monitoring system. Man Ther. 2012;17(4):312-317.
- McGill SM, Hughson RL, Parks K. Changes in lumbar lordosis modify the role of the extensor muscles. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2000;15(10):777-780.
- Salai M, Brosh T, Blankstein A, Oran A, Chechik A. Effect of changing the saddle angle on the incidence of low back pain in recreational bicyclists. Br J Sports Med. 1999;33(6):398-400.
- Streisfeld GM, Bartoszek C, Creran E, Inge B, McShane MD, Johnston T. Relationship Between Body Positioning, Muscle Activity, and Spinal Kinematics in Cyclists With and Without Low Back Pain: A Systematic Review. Sports Health. 2017;9(1):75-79.
- Muyor JM, López-Miñarro PA, Alacid F. Spinal Posture of Thoracic and Lumbar Spine and Pelvic Tilt in Highly Trained Cyclists. J Sports Sci Med. 2011;10(2):355-361.
- Rostami M, Ansari M, Noormohammadpour P, Mansournia MA, Kordi R. Ultrasound assessment of trunk muscles and back flexibility, strength and endurance in off-road cyclists with and without low back pain. Journal of Back & Musculoskeletal Rehabilitation. 2015;28(4):635-644.
- https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf (日本整形外科学会 腰痛診療ガイドライン)
- https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034et4-att/2r98520000034mtc_1.pdf(区政労働省 職場における腰痛予防対策指針及び解説)