前十字靭帯損傷

スポーツの方向転換時の前十字靭帯への負荷について

サッカーでの方向転換

スポーツにおける急な方向転換時に前十字靭帯を損傷してしまうケースは珍しくないかと思います。身体に負荷がかかりにくい動作を身につけることは怪我予防につながる可能性があり、どのような動作が前十字靭帯への負荷を高めてしまう可能性があるのか理解することが役に立つ可能性があります。

 

ポイント

  • 着地の足の位置や膝の動きが身体の負荷に影響を与えます
  • つま先着地のほうが膝のねじれが少なくなる傾向にあるようです
  • 実戦的なスポーツの動作では色々な要素が絡んでくるので、ひとつの要素だけで全てが決まるわけではありません

 

カッティング動作と前十字靭帯への負荷

まず基本的なことかと思いますが、方向転換時のスピードが速いと負荷が大きいですし、曲がる角度が大きいほど負荷が高くなる傾向にあります

方向転換動作の基本的なテクニックについて

当然ながら方向転換動作は速さや角度だけでなく、上手いかどうか?という選手のテクニック的な要素も影響してきます。

カッティング動作のテクニック

(Kristianslund et al 2014)

ある研究では膝の負荷にかかわる主なテクニック要素として次のものを挙げています

  • 着地の幅
  • 膝の外反
  • 足の着地の角度

方向転換時の着地の幅が狭い方が膝への負荷が小さい傾向にあるようです。また、膝の外反も負荷を高める要素となっていますが、膝の負荷の測定方法は何十種類もあるため測定方法の違いにより異なる結果となる可能性があるので注意が必要です。

膝の外反と前十字靭帯損傷について

 

ちなみに、方向転換時に利き足かどうかはについては意見が分かれ、色々な論文を調べたところそこまで負荷には影響しないのではないか?と考えられているようです

 

つま先着地 vs かかと着地という議論

方向転換時につま先着地がいいのか?かかと着地がいいのか?という議論があります。

 

つま先着地とかかと着地の床反力

(Ogasawara et al 2020より引用)

  • カッティング動作時に踵着地のほうが膝の外反が大きいし、脛骨の内旋も大きい傾向にあるようです。このメカニズムは主に上の図に集約され、関節と重心の位置が離れるほど身体に及ぼす力が大きくなり、負荷も増えるのではないか?という考え方となっています。
  • つま先着地のほうがハムストリングスの活動量が多く、ハムストリングスは前十字靭帯を守る役割があるため、つま先着地のほうが前十字靭帯への負荷が少ない可能性があります
  • 着地方法だけでなく、体幹部の動きとのコンビネーションでも負荷が変わってきます。かかと重心で体幹部が直立している場合に膝への負荷が高くなる傾向があるようです

このようにつま先着地の方が優れているのではないか?という議論があります。

マラソンにおいてもつま先着地に関する議論があり、つま先着地のほうが力学的に優れているというデータが出ていますが、総合的な怪我の発生率はあまり変わらないという結果になっています。したがって、つま先着地がいいのか踵での着地なのか?というのは簡単に判断できるものではないかと思います。

自然とつま先着地でスポーツができるのならそれに越したことはないけれど、無理やりつま先着地を導入することは逆効果にもなりかねないので注意が必要かと思います。

フォアフット着地はマラソンの怪我を減らすのか?

 

方向転換直前の動きも影響する

方向転換動作の準備動作のタイミングなどによっても膝の負荷が影響されます。

スポーツの方向転換動作の測定

(David et al 2018より引用)

  • コーナーを曲がる時に骨盤の回旋などの身体の準備が早いグループと準備が遅いグループを比べたところ、準備が遅いグループのほうが膝を使う割合が増えている傾向にあり踵で着地する傾向にあるようです。
  • 一方で準備が早いグループのほうが足首を使う割合が高くなっている傾向があるようです。コーナーを曲がる直前の一歩をどこに置くか、その準備動作が大きく影響するようです。

このように曲がる直前の身体の動きも、急な方向転換の質に影響を及ぼすようです。

 

まとめ

方向転換動作により前十字靭帯への負荷がかかる可能性があり、それは膝だけではなく全身の動きによって変わってくる可能性があります。ひとつひとつの要素を丁寧に鍛えて改善していくことが怪我の予防につながるのではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Kristianslund E, Krosshaug T. Comparison of drop jumps and sport-specific sidestep cutting: implications for anterior cruciate ligament injury risk screening. Am J Sports Med. 2013;41(3):684-688.
  2. Dos’Santos T, Thomas C, Comfort P, Jones PA. The Effect of Angle and Velocity on Change of Direction Biomechanics: An Angle-Velocity Trade-Off. Sports Med. 2018;48(10):2235-2253.
  3. Kristianslund E, Faul O, Bahr R, Myklebust G, Krosshaug T. Sidestep cutting technique and knee abduction loading: implications for ACL prevention exercises. Br J Sports Med. 2014;48(9):779-783.
  4. Yoshida N, Kunugi S, Mashimo S, et al. Effect of Forefoot Strike on Lower Extremity Muscle Activity and Knee Joint Angle During Cutting in Female Team Handball Players. Sports Med Open. 2015;2:32.
  5. Dos’Santos T, Bishop C, Thomas C, Comfort P, Jones PA. The effect of limb dominance on change of direction biomechanics: A systematic review of its importance for injury risk. Phys Ther Sport. 2019;37:179-189.
  6. Ogasawara I, Shimokochi Y, Mae T, Nakata K. Rearfoot strikes more frequently apply combined knee valgus and tibial internal rotation moments than forefoot strikes in females during the early phase of cutting maneuvers. Gait Posture. 2020;76:364-371.
  7. David S, Komnik I, Peters M, Funken J, Potthast W. Identification and risk estimation of movement strategies during cutting maneuvers. J Sci Med Sport. 2017;20(12):1075-1080.
  8. David S, Mundt M, Komnik I, Potthast W. Understanding cutting maneuvers – The mechanical consequence of preparatory strategies and foot strike pattern. Human Movement Science. 2018;62:202-210.

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