手首の使いすぎなどにより手の痺れや痛みといった手根管症候群を発症することがあります。スポーツをやっている人達だけでなく、オフィスワークをしている人達もこういった症状に苦しむことがあります。
参照https://www.nashvilleneurosurgery.com/conditions/carpal-tunnel-syndrome/
ポイント
- 神経周りの結合組織の状態で負荷が変わってくる可能性があります
- 手のアーチ構造次第で負荷が変わる可能性があります
- 手首の骨の構造次第で負荷が変わる可能性があります
周辺組織が神経を守る役割がある?
周辺の組織による衝撃吸収の低下で負荷が高まる可能性があります。
参照https://www.researchgate.net/figure/Subsynovial-connective-tissue_fig1_268791629
- 神経周りの結合組織には衝撃の吸収などの役割があり、神経への負荷を軽減させる働きがあります1。
- 手根管症候群の人達はどのように負荷がかかっているのかを調べた研究があり、検体から神経を覆っている組織を取り出して調べたところ、手根管症候群の人達のほうが衝撃吸収能力が低い傾向にあるようです2。
- 他の研究でも似たような傾向が確認されており3、同じ力を加えてもより大きな負荷がかかっていることがあるようです。
手根管症候群を発症している人は、この神経を守るための組織が変化し、その機能が低下していることがあるそうです。
アーチの構造の違いで負荷が軽くなる?
アーチの構造次第では負荷が軽減される可能性があります。
(Marquardt et al 2016より引用)
エコー検査によってアーチの構造を評価した研究があり、外から力を加えることでどのようにアーチが変化しているのかを調べたところ、力が加えられたときにアーチの構造が変わりこれによって神経への負荷も変わる可能性があることが示唆されています4。
このアーチの構造によって神経への負荷が変わるとして、具体的にどのように変えていったらいいのか?というところはまだまだ議論の余地がありそうです。しかし、その仕組みがわかれば、どの筋肉を緩めて、どの筋肉を鍛えたらいいのかというヒントになりそうな気がしますね。
手術がアーチに影響を及ぼす?
手根管症候群の手術によりアーチの構造が変化する可能性があります。
手術による影響を調べた研究があり、その結果手術により周辺の靭帯を緩めることでアーチの高さに変化が生じる可能性があるようです5。
(Guo et al 2007より引用)
これによって結果的に神経への負荷が減るかもしれません。
色々な手術の方法があるので一概に言えませんし、データの解釈に意見がわかれそうな点であります。現時点では手術によってアーチ構造が変化し、神経への負荷が変わる可能性があるという点だけにとどめておいたほうが無難かもしれません。
骨格の違いにより神経へ負荷がかかりやすい?
手の骨の構造によっても神経への負荷に影響を及ぼす可能性があります。
ある研究ではMRIを使い骨の構造と神経周りのスペースを調べていますが、特定の骨の構造は神経周りのスペースが小さくなる傾向があるようです6。
(Cha et al 2019より引用)
つまり、神経が圧迫されやすい状態にあるのではないか?と考えられるわけです。このように骨格の違いでも負荷が変わってくる可能性が考えられます。
まとめ
一概に手首の使いすぎという理由だけでなく色々な要素が怪我へと繋がっている可能性があります。神経の周辺組織の変化や、筋肉、骨の構造などにより神経への負荷が変わってくる可能性があります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
<参考文献>
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Werthel J-DR, Zhao C, An K-N, Amadio PC. Carpal tunnel syndrome pathophysiology: role of subsynovial connective tissue. J Wrist Surg. 2014;3(4):220-226.
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Osamura N, Zhao C, Zobitz ME, An K-N, Amadio PC. Evaluation of the Material Properties of the Subsynovial Connective Tissue in Carpal Tunnel Syndrome. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2007;22(9):999-1003.
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Filius A, Thoreson AR, Ozasa Y, An K-N, Zhao C, Amadio PC. Delineation of the Mechanisms of Tendon Gliding Resistance Within the Carpal Tunnel. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2017;41:48-53.
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Marquardt TL, Evans PJ, Seitz WH, Li Z-M. Carpal arch and median nerve changes during radioulnar wrist compression in carpal tunnel syndrome patients. Journal of Orthopaedic Research. 2016;34(7):1234-1240.
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Guo X, Fan Y, Li Z-M. Three Dimensional Finite Element Analysis on the Morphological Change of the Transverse Carpal Ligament. In: 2007 IEEE/ICME International Conference on Complex Medical Engineering. ; 2007:1866-1869.
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Cha SM, Shin HD, Song SH. Cross-sectional Area Just Proximal to the Carpal Tunnel According to the Ulnar Variances: Positive Ulnar Variance and Carpal Tunnel Syndrome. Ann Plast Surg. 2019;82(1):76-81.