足の怪我のメカニズム

捻挫グセと神経による影響

捻挫をすることで靭帯への損傷だけでなく、筋肉の活動や神経の反応にまで影響が及ぶことがあります。そこで捻挫を繰り返している人の神経がどのように変化をしているのかについて書かせていただきたいと思います。

 

ポイント

  • 捻挫を繰り返している人は足首周りがうまく使えていないことがあります。
  • 足裏からの感覚入力や足首周りの筋肉の神経の働きが抑制されている傾向にあるようです。
  • 必ずしも特別な神経へのアプローチが必要なわけではなく、通常のケアやエクササイズでもこういった神経の問題は改善していく可能性があります。

 

動作パターン

捻挫を繰り返しているとスポーツの動きに変化が生じることがあります。

  • サッカーの蹴る動作において捻挫を繰り返した人のほうが足首周りの筋肉の活動量が少なく、股関節周りの筋肉の活動量が増えていたという研究結果があります1。
  • 一般的には捻挫を繰り返す人はお尻の筋力が弱い傾向にあり、動きの中でお尻の筋肉の活動量が少ない傾向にあります3・4

捻挫を繰り返す人は足首周りがうまく使えないためにこのような身体の使い方になることがあるかもしれない、という点が興味深いところです。

 

足からの感覚入力

捻挫を繰り返す人は足の感覚が鈍くなっている傾向にあるようです。

  • 捻挫を繰り返している人のほうが足の触覚が鈍い傾向にあることが報告されています5・6
  • 足の触覚の感度は片足でのバランスに相関関係があることが報告されています
  • 捻挫を繰り返している人のほうが足で振動を感知することが鈍い傾向にあることが報告されています

足の感覚が鈍いことで身体のバランスがうまく取れない、なんてことがあるのかもしれません。

ただ、ここにはもっと詳しい議論がありますので詳細は以下で説明させていただきます。

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筋肉の反射

捻挫を繰り返している人の足首周りの筋肉の反射が低下している傾向にあるようです。

  • ヒラメ筋のH反射が抑制されている傾向にあることが報告されています8・10
  • 腓骨筋のH反射が抑制されている傾向にあり8〜10、急に足場が崩れるよう状況でも腓骨筋の反応が小さい傾向にあるようです
  • 前脛骨筋のH反射に大きな違いは見られなかったようです10
  • 大腿四頭筋の筋力発揮が高まり、ハムストリングスの筋力発揮が抑制されることが報告されています11
  • 内側広筋および腓骨筋のH反射に大きな違いは見られなかったとする研究もあります12

人や状況によって反応が違うこともあり一定のパターンを示すわけではないものの、捻挫を繰り返している人の足首周りの筋肉の反応が低下することが起こり得るようです。

 

足首の捻挫
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中枢神経

捻挫は末梢神経だけでなく、中枢神経に影響を及ぼしていることもあるようです。

 

筋肉への神経伝達

捻挫を繰り返している人は中枢神経における神経伝達も低下している可能性も考えられます。

(Pietrosimone and Gribble 2012)

  • 長腓骨筋における皮質脊髄路(Corticospinal tract)の興奮度が低下している傾向にあることが報告されています12・13
  • ヒラメ筋における皮質脊髄路の興奮度が低下し、足首の機能が低下している傾向にあることが報告されています14
  • 捻挫を繰り返す人は捻挫を繰り返さない人と比べて大臀筋の皮質脊髄路の興奮度が高まっていたことが報告されています15
  • 長腓骨筋が反応する運動野の領域が小さい傾向にあることが報告されています16

このように捻挫を繰り返す人には何らかの中枢神経の変化が生じていることもあるわけです。

 

脳波

捻挫を繰り返している人の脳波に大きな違いはみられなかったようです。

 

  • 足首に負荷がかかると体性感覚皮質(somatosensory cortex)の脳波が反応が大きくなる傾向にあるようです17
  • 捻挫を繰り返している人とそうでない人との間に体性感覚皮質の大きな違いは見られなかったようです17

捻挫と脳波に関する研究数は少ないため何とも言えないですが、一応このような研究結果となっていました。

 

脳の構造

捻挫を繰り返す人の脳をMRIで調べると、その一部に何らかの構造的な変化が生じることもあるようです18

(Terada et al 2019より引用)

  • 拡散テンソル画像法(diffusion tensor imaging, DTI)によって慢性的に捻挫を繰り返す人とそうでない人の脳の神経線維の走行状態を解析したところ違いがあったそうです(厳密にはプロトン原子が動く方向の違いを解析している、といったところでしょうか)。

 

似たような特徴は前十字靭帯断裂をした人の脳にも見られたという報告もあり19、もしかしたら筋力発揮の抑制などに関係しているのかもしれません。

脳
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トレーニングによる改善

こういった神経の問題というのはエクササイズやトレーニングによって徐々に改善していく可能性があります。

定期的に身体のケアをして、弱った筋肉を鍛えるといった基本的なことでも継続的に取り組むことで知らず知らずのうちに神経の問題は改善されていくようです20

神経を過大評価し過ぎるとアプローチが複雑怪奇になってしまうことがありますが、意外とシンプルなことでも効果があります。

 

ただ、前十字靭帯断裂といった大きな怪我や構造的な損傷を抱えるケースでは神経の問題がなかなか思うように改善しないことも珍しくありません。

膝を押さえている様子
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まとめ

捻挫を繰り返してしまう人には何らかの神経の変化が生じている可能性があります。しっかりと身体のケアやトレーニングに取り組むことが大事になってくるのではないかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Rios JL, Gorges AL, dos Santos MJ. Individuals with chronic ankle instability compensate for their ankle deficits using proximal musculature to maintain reduced postural sway while kicking a ball. Hum Mov Sci. 2015;43:33-44. doi:10.1016/j.humov.2015.07.001
  2. Friel K, McLean N, Myers C, Caceres M. Ipsilateral Hip Abductor Weakness After Inversion Ankle Sprain. J Athl Train. 2006;41(1):74-78.
  3. Webster KA, Gribble PA. A comparison of electromyography of gluteus medius and maximus in subjects with and without chronic ankle instability during two functional exercises. Phys Ther Sport. 2013;14(1):17-22. doi:10.1016/j.ptsp.2012.02.002
  4. Fatima S, Bhati P, Singla D, Choudhary S, Hussain ME. Electromyographic Activity of Hip Musculature During Functional Exercises in Participants With and Without Chronic Ankle Instability. J Chiropr Med. 2020;19(1):82-90. doi:10.1016/j.jcm.2019.07.002
  5. Burcal CJ, Wikstrom EA. Plantar Cutaneous Sensitivity With and Without Cognitive Loading in People With Chronic Ankle Instability, Copers, and Uninjured Controls. J Orthop Sports Phys Ther. 2016;46(4):270-276. doi:10.2519/jospt.2016.6351
  6. Powell MR, Powden CJ, Houston MN, Hoch MC. Plantar cutaneous sensitivity and balance in individuals with and without chronic ankle instability. Clin J Sport Med. 2014;24(6):490-496. doi:10.1097/JSM.
  7. Hoch MC, McKeon PO, Andreatta RD. Plantar vibrotactile detection deficits in adults with chronic ankle instability. Med Sci Sports Exerc. 2012;44(4):666-672. doi:10.1249/MSS.0b013e3182390212
  8. Kim K-M, Ingersoll CD, Hertel J. Altered postural modulation of Hoffmann reflex in the soleus and fibularis longus associated with chronic ankle instability. J Electromyogr Kinesiol. 2012;22(6):997-1002. doi:10.1016/j.jelekin.2012.06.002
  9. Palmieri-Smith RM, Hopkins JT, Brown TN. Peroneal activation deficits in persons with functional ankle instability. Am J Sports Med. 2009;37(5):982-988. doi:10.1177/0363546508330147
  10. McVey ED, Palmieri RM, Docherty CL, Zinder SM, Ingersoll CD. Arthrogenic muscle inhibition in the leg muscles of subjects exhibiting functional ankle instability. Foot Ankle Int. 2005;26(12):1055-1061. doi:10.1177/107110070502601210
  11. Sedory EJ, McVey ED, Cross KM, Ingersoll CD, Hertel J. Arthrogenic Muscle Response of the Quadriceps and Hamstrings With Chronic Ankle Instability. J Athl Train. 2007;42(3):355-360.
  12. McLeod MM, Gribble PA, Pietrosimone BG. Chronic Ankle Instability and Neural Excitability of the Lower Extremity. J Athl Train. 2015;50(8):847-853.
  13. Pietrosimone BG, Gribble PA. Chronic ankle instability and corticomotor excitability of the fibularis longus muscle. J Athl Train. 2012;47(6):621-626.
  14. Harkey M, McLeod MM, Terada M, Gribble PA, Pietrosimone BG. Quadratic Association Between Corticomotor and Spinal-Reflexive Excitability and Self-Reported Disability in Participants With Chronic Ankle Instability. J Sport Rehabil. 2016;25(2):137-145. doi:10-1123/jsr.2014-0282
  15. Thompson T, Suttmiller AMB, Ringle B, McCann RS. Corticomotor excitability of the gluteus maximus in individuals with chronic ankle instability: A pilot study. Translational Sports Medicine. 2021;4(1):65-71. doi:https://doi.org/10.1002/tsm2.199
  16. Kosik KB, Terada M, Drinkard CP, McCann RS, Gribble PA. Potential Corticomotor Plasticity in Those with and without Chronic Ankle Instability. Med Sci Sports Exerc. 2017;49(1):141-149. doi:10.1249/MSS.
  17. Needle AR, Swanik CB, Schubert M, et al. Decoupling of laxity and cortical activation in functionally unstable ankles during joint loading. Eur J Appl Physiol. 2014;114(10):2129-2138. doi:10.1007/s00421-014-2929-3
  18. Terada M, Johnson N, Kosik K, Gribble P. Quantifying Brain White Matter Microstructure of People with Lateral Ankle Sprain. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2019;51(4):640–646.
  19. Lepley AS, Ly MT, Grooms DR, Kinsella-Shaw JM, Lepley LK. Corticospinal tract structure and excitability in patients with anterior cruciate ligament reconstruction: A DTI and TMS study. NeuroImage: Clinical. 2020;25:102157.
  20. Sefton JM, Yarar C, Hicks-Little CA, Berry JW, Cordova ML. Six weeks of balance training improves sensorimotor function in individuals with chronic ankle instability. J Orthop Sports Phys Ther. 2011;41(2):81-89. doi:10.2519/jospt.2011.3365

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