手の怪我のメカニズム

長時間の自転車走行による手の痛みや痺れのメカニズム

手の痛み

自転車に長時間乗っていると徐々に手に痛みが出るようになったり、時には痺れや感覚の異常などを感じることがあるかと思います。長時間の自転車走行では手の神経を圧迫しやすく、これが手の痛みなどの症状につながると考えられています。自転車の乗り方や装備などによっても影響を受けるため、神経を圧迫するメカニズムを知ることで負荷を軽減するのに役に立つかと思います。

 

ポイント

  • 手首を返したり曲げたりすることで神経が圧迫されやすく、手首をニュートラルに保つことで負荷を軽減しやすくなります
  • ハンドルに体重をかけ過ぎることで神経が圧迫されやすくなります
  • ハンドルの握り方やサドルの高さ、グローブの有無など装備面などでも負荷が変わってきます

 

神経の圧迫による痛みや痺れ

自転車を長時間乗っていて手の痛みや痺れが発生するのは神経を圧迫してしまうからだと考えらています。

参照https://totalwomenscycling.com/mountain-biking/how-to-avoid-sore-hands-from-biking

特に自転車においては尺骨神経に負荷がかかりやすいとされており、この神経が小指や薬指まで繋がっているため痺れや感覚の変化などの症状が小指などにも発生することがあります。

(Akuthota et al 2005より引用)

 

長距離ライドによる神経への影響

長時間のサイクリングは手の神経に負荷がかかりやすいと考えられています。

自転車の長距離ライド

  • 自転車の長距離の運転は手の神経に影響を及ぼし、神経の反応が遅くなる可能性があることが示唆されています
  • 長時間のサイクリングにより知覚異常や運動異常なども生じやすくなることが報告されています
  • 経験者か素人かどうかで大きな違いがあるわけではなく、経験者であっても長時間のサイクリングによって神経に影響が起きやすいことが報告されています

こういったことから長時間のサイクリングによって手の神経が圧迫され続けることで、手の痛みや痺れなどにつながるような負荷を生みやすいと考えられています。

 

自転車の乗り方による影響

基本的にはハンドル部分に体重をかけずに、手首をニュートラルの状態を保つことが神経の圧迫を軽減させることにつながります。

ハンドルの握り方を変えて負荷を分散させたり疲労を防ぐことも大切になってきます。

手首の角度による影響

手の角度などによっても神経の圧迫のされ方が変わってきます。

ある研究では手首がニュートラルの状態の時が神経への負荷が軽く、手首を返したり曲げたりすることで神経が圧迫されやすくなることが報告されています

(Rauch et al 2016より引用)

このため手首をニュートラルに保つことが負荷を軽減させるのに役に立つと考えられます。

 

体重のかけ方の影響

体重のかけ方なども神経の圧迫のされ方に影響する可能性があります

重心が前方に移動したり、肘が伸びきってしまったり、立ち漕ぎをしたり、急な下り坂などではハンドルに体重がかかりやすくなり、神経が圧迫されやすくなることが考えられます。

(Brown et al 2014より引用)

ハンドルの握り方も影響します。特にドロップハンドルにおいて体重がかかりやすく神経が圧迫されやすい傾向にあることが報告されています5・6

ドロップハンドルに加えて手首を曲げるような握り方の場合には、さらに神経が圧迫されてしまうことが考えられます。

 

装備による負荷の軽減

グローブやハンドルなどの装備もうまく取り入れることで痛みを軽減させることができる可能性があります。

ある研究ではグローブによって神経の圧迫を軽減できることが報告されています

ロードバイクのハンドル

そして、自転車のハンドルやサドルなどは個人のケースに合わせた調整が必要となります。

基本的な考え方としは、できるだけ手首がニュートラルを保ちつつ、ハンドルに体重をかけないことであり、このような姿勢を楽に取れるように自転車を調整することもひとつの選択肢かと思います。

 

身体のメンテナンスについて

手の痛みを少しでも軽減するために身体のメンテナンスが役にたつことがあります。

男の人の腕

前腕などの筋肉をほぐすことで圧迫される負荷を軽減でき、少し楽になる可能性があります。ただし、次のことに注意が必要です。

  • 患部をほぐさずに周辺をほぐすことがポイントで、患部をほぐすと刺激が強く炎症が悪化する恐れがあります。
  • ストレッチなどでは患部が引き伸ばされるような負荷がかかる可能性もあるので、あまりオススメはしません。
  • 周辺の筋肉をほぐす効果は長時間続くものではなく、数十分で筋肉の硬さが元に戻りやすく、これにともない痛みもまた元に戻ってしまうことが珍しくありません。
  • 筋肉をほぐすことは原因の根本解決にならないことに注意が必要です。

パソコン作業

さらに、手や前腕の筋肉を使うようなものは神経を圧迫する負荷を高めてしまう可能性があります。

このため長時間のパソコンなども筋肉が使われ痛みを助長してしまうことが考えられるので、控えめにすることが無難であると思います。

 

体幹トレーニングについて

ハンドルに体重がかかり過ぎるのを防ぐのに体幹トレーニングが役に立つ可能性があります。

というのも、上体をうまくコントロールできないと身体をうまく支えられずに、手で身体を支えようとして手の神経を圧迫してしまうことが考えられます。

体幹部分を鍛える場合には腹筋だけでなく背筋などバランスよく鍛えることや、高い負荷よりも回数や時間といった持久力などから鍛えることが役に立つかもしれません。

自転車サイクリング
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まとめ

経験者であっても長時間のサイクリングで手の神経に負荷がかかりやすいため、手首の使い方や体重のかけ方といった自転車の乗り方や、グローブやサドルなどの装備面での調整などで負荷を軽減していくことが役に立つかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Akuthota V, Plastaras C, Lindberg K, Tobey J, Press J, Garvan C. The Effect of Long-Distance Bicycling on Ulnar and Median Nerves: An Electrophysiologic Evaluation of Cyclist Palsy. Am J Sports Med. 2005;33(8):1224-1230.
  2. Patterson JMM, Jaggars MM, Boyer MI. Ulnar and Median Nerve Palsy in Long-distance Cyclists: A Prospective Study. Am J Sports Med. 2003;31(4):585-589.
  3. Rauch A, Teixeira P, Gillet R, et al. Analysis of the position of the branches of the ulnar nerve in Guyon’s canal using high-resolution MRI in positions adopted by cyclists. Surgical & Radiologic Anatomy. 2016;38(7):793-799.
  4. Capitani D, Beer S. Handlebar palsy--a compression syndrome of the deep terminal (motor) branch of the ulnar nerve in biking. J Neurol. 2002;249(10):1441-1445.
  5. Brown CK, Stainsby B, Sovak G. Guyon Canal Syndrome: lack of management in a case of unresolved handlebar palsy. The Journal of the Canadian Chiropractic Association. 2014;58(4):413.
  6. Slane J, Timmerman M, Ploeg H-L, Thelen DG. The influence of glove and hand position on pressure over the ulnar nerve during cycling. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2011;26(6):642-648.

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