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投球時の脚の使い方が怪我や球速に及ぼす影響

ピッチャーは足腰の強さが大事だと言われたり、股関節の働きが大事だと言われたり、投球時の下半身の働きはとても重要であると考えられています。

ここでピッチャーの脚の機能や地面への力の加え方が投球動作にどのような影響を及ぼすのか、投球動作に関する研究を交えながらその役割についてご紹介していきたいと思います。

 

ポイント

  • 怪我をしたピッチャーは片脚でのバランスや股関節の可動域が劣る傾向にあるようです。
  • 地面に大きな力を加えるほど球速が速い傾向にあるようです。
  • 地面に力を加えるタイミングや方向が運動連鎖といったエネルギー伝達効率に影響を及ぼします。

 

脚と怪我の関係

ピッチングにおけるパワーは下半身で生み出され、そのエネルギーが体幹部を通じて、手先やボールに伝わると考えられています。

このため脚の働きも怪我に影響すると考えられています。

ピッチング時の運動連鎖

参照https://www.quora.com/What-does-kinetic-chain-mean

 

片脚バランスと怪我の関係

怪我をしたピッチャーは片脚でうまくバランスがとれない傾向にあります。

(Hannon et al 2014より引用)

  • 肘内側側副靱帯を損傷した選手は、両脚ともに片脚でのバランス機能が低下していたことが報告されています
  • 肩を怪我したピッチャーも片脚でのバランス機能が低下していたことが報告されています
  • ちなみに片脚バランスは球速にはあまり関係がないようです

このように怪我予防のためには片脚でのバランスをしっかりと鍛えておいたほうがいいかもしれません。

 

股関節の可動域と怪我

股関節の可動域低下も怪我につながる可能性があります。詳しくは次の記事をご覧ください。

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ピッチャーの股関節の可動域と肩の怪我の関係

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脚の使い方と肘や肩への負荷

脚の使い方次第では肘や肩への負荷が高まる可能性があるようです。

(Tocci et al 2017より引用)

  • 脚の使い方次第では肩の負荷が増える可能性もあるようで、具体的にはストライドの幅が小さいこと、股関節の傾きが大きいことなどが肩関節を圧迫する負荷を高める可能性があるようです
  • 一方でストライドの幅が大きく、股関節の傾きが小さいと肘への負荷が高まる傾向にあるという研究結果もあります。球速が高まると必然的に肘への負荷が高まるので、データの解釈に議論の余地が残りますね。
  • カウンタージャンプにおいて脚力が弱いと肘の怪我のリスクを高める可能性があることが示唆されています

基本的には肘や肩関節の負荷を抑えつつ球速をあげることが怪我をしにくい効率的な投球動作といえるため、このあたりの研究がもう少し必要かもしれませんね。

 

ストライドの幅

投球時のストライドの幅は球速に影響を及ぼすと考えられています。

(Yanagisawa and Taniguchi 2020より引用)

  • 約7割のピッチャーは身長の85〜90%まではストライドの幅が大きいほど球速がアップするという研究結果があります
  • ジュニア世代のピッチャーを対象とした研究では、ストライドの幅はジャンプ力やピッチングの経験年数、片脚でのバランスなどと関係があることが報告されています
  • ストライドの幅の長さは身長や脚の長さ、股割りがどれくらいできるか?といったこととあまり関係していないようです
  • 大学生を対象とした研究では球速が速いグループと遅いグループとの間にストライドの幅に大きな違いはみられなかったそうです10

投球時のストライドが大きいと球速が速い傾向にあり、ストライドが大きくても身体をうまく制御できなかったら逆効果になってしまう可能性があります。

ストライドが大きいことが良いというよりも、下半身で生み出した力をボールに伝えることがポイントであり、脚が大きなパワーを発揮すると結果的にストライドの幅が大きくなるということが起こるのかもしれません。

 

地面を蹴る力と球速の関係

ピッチャーには下半身の強化が欠かせず、強い足腰というのはとても大事だと言われています11。ここで地面を蹴る力(床反力)とピッチング動作に関する研究をみていきましょう。

  • 軸足の床反力とストライドの幅に相関関係がみられたことが報告されています12
  • 軸足の床反力と球速に相関関係がみられたことが報告されています13
  • 軸足ではなく踏み出し脚(stride leg)にも床反力と球速に強い相関関係がみられたことが報告されています14
  • ストライドの幅が大きいと踏み出し脚のブレーキにかかる床反力も大きくるなるようです12

軸足で力強く地面に力を加え、踏み出し脚で力強く支える、このどちらも大切なのかもしれませんね。

 

地面への力の加え方

ただ地面に大きな力を加えればいいというわけではなく、そのタイミングや力を加える方向も大切になってきます。

  • 地面に力を加えるタイミングによって球速が左右される可能性があります15
  • 地面に力を加える方向がエネルギー伝達効率に影響を及ぼす可能性があることが報告されています16
  • ストライドの幅が大きいと体幹部を前方移動させる力が大きく働く傾向にあるようです17

これらの地面に力を加えるタイミングや方向が運動連鎖や力の伝達という観点でとても重要で、地面に大きな力を加えればいいというわけでも、ストライドの幅が大きければいいわけではなく、

そのエネルギーが体幹部や腕にうまく伝わっているのか?というところがポイントになってきます。

 

まとめ

足腰の力がピッチング時のパワーを生み出していて、球速の速いピッチャーは脚力が強かったり、ストライドの幅が大きかったり、地面に大きな力を加えていますが、

いかに下半身の力をいかに指先に伝えるのか?というところも大切になってくるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Garrison JC, Arnold A, Macko MJ, Conway JE. Baseball Players Diagnosed With Ulnar Collateral Ligament Tears Demonstrate Decreased Balance Compared to Healthy Controls. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2013;43(10):752-758. doi:10.2519/jospt.2013.4680
  2. Nakase K, Shitara H, Tajika T, et al. The Relationship Between Dynamic Balance Ability and Shoulder Pain in High School Baseball Pitchers. Sports Health. Published online June 8, 2021:19417381211019680. doi:10.1177/19417381211019682
  3. Yanagisawa O, Futatsubashi G, Taniguchi H. Side-to-side difference in dynamic unilateral balance ability and pitching performance in Japanese collegiate baseball pitchers. J Phys Ther Sci. 2018;30(1):58-62. doi:10.1589/jpts.30.58
  4. Keeley DW, Oliver GD, Dougherty CP, Torry MR. Lower Body Predictors of Glenohumeral Compressive Force in High School Baseball Pitchers. Journal of Applied Biomechanics. 2015;31(3):181.
  5. Tocci NX, Howell DR, Sugimoto D, Dawkins C, Whited A, Bae D. The Effect of Stride Length and Lateral Pelvic Tilt on Elbow Torque in Youth Baseball Pitchers. Journal of Applied Biomechanics. 2017;33(5):339-346. doi:10.1123/jab.2016-0305
  6. Mayberry J, Mullen S, Murayama S. What Can a Jump Tell Us About Elbow Injuries in Professional Baseball Pitchers? Am J Sports Med. 2020;48(5):1220-1225. doi:10.1177/0363546520905543
  7. Knudson D. A method to determine the stride length for baseball pitching. Applied Research in Coaching and Athletics Annual. 2002;17:75-84.
  8. Fry KE, Pipkin A, Wittman K, Hetzel S, Sherry M. Youth Baseball Pitching Stride Length: Normal Values and Correlation With Field Testing. Sports Health: A Multidisciplinary Approach. 2017;9(3):205-209. doi:10.1177/1941738116679815
  9. Yanagisawa O, Taniguchi H. Relationship between stride length and maximal ball velocity in collegiate baseball pitchers. J Phys Ther Sci. 2020;32(9):578-583. doi:10.1589/jpts.32.578
  10. Kageyama M, Sugiyama T, Takai Y, Kanehisa H, Maeda A. Kinematic and Kinetic Profiles of Trunk and Lower Limbs during Baseball Pitching in Collegiate Pitchers. J Sports Sci Med. 2014;13(4):742-750
  11. Yanagisawa O, Wakamatsu K, Taniguchi H. Functional Hip Characteristics and Their Relationship With Ball Velocity in College Baseball Pitchers. J Sport Rehabil. 2019;28(8):854-859. doi:10.1123/jsr.2018-0122
  12. Ramsey DK, Crotin RL. Stride length: the impact on propulsion and bracing ground reaction force in overhand throwing. Sports Biomech. 2019;18(5):553-570. doi:10.1080/14763141.2018.1442872
  13. Oyama S, Myers JB. The Relationship Between the Push Off Ground Reaction Force and Ball Speed in High School Baseball Pitchers. Journal of Strength and Conditioning Research. 2018;32(5):1324-1328. doi:10.1519/JSC.0000000000001980
  14. McNally MP, Borstad JD, Oñate JA, Chaudhari AMW. Stride Leg Ground Reaction Forces Predict Throwing Velocity in Adult Recreational Baseball Pitchers. Journal of Strength and Conditioning Research. 2015;29(10):2708-2715. doi:10.1519/JSC.0000000000000937
  15. Elliott B, Grove JR, Gibson B. Timing of the Lower Limb Drive and Throwing Limb Movement in Baseball Pitching. International Journal of Sport Biomechanics. 1988;4(1):59-67. doi:10.1123/ijsb.4.1.59
  16. Howenstein J, Kipp K, Sabick M. Peak horizontal ground reaction forces and impulse correlate with segmental energy flow in youth baseball pitchers. J Biomech. 2020;108:109909. doi:10.1016/j.jbiomech.2020.109909
  17. Ramsey DK, Crotin RL, White S. Effect of stride length on overarm throwing delivery: A linear momentum response. Hum Mov Sci. 2014;38:185-196. doi:10.1016/j.humov.2014.08.012
  18. Hannon J, Garrison JC, Conway J. Lower extremity balance is improved at time of return to throwing in baseball players after an ulnar collateral ligament reconstruction when compared to pre-operative measurements. Int J Sports Phys Ther. 2014;9(3):356-364.

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