野球肩

ピッチャーの股関節の可動域と肩の怪我の関係

野球選手が肩を怪我したときには肩周りを中心としたケアが行われることが多いのですが、投球動作は全身で行う運動であり体幹部や下肢の働きも影響してくる可能性があります。肩周りだけでなく、体幹部や股関節なども忘れずにケアすることが大切になってきます。

 

ポイント

  • 股関節の可動域も肘や肩の怪我に関係している可能性があります
  • 多少の左右差は問題ありませんが極端な左右差は好ましくないと考えられます
  • シーズン中にも可動域が変化していくので定期的にケアすることが大切です

 

股関節の内旋の可動域の低下と野球選手の怪我

股関節の内旋の可動域の低下が野球選手の肘や肩の怪我に関係している可能性があります。

 

怪我の発生率

怪我をしていた選手は股関節の内旋の可動域が低下している傾向にあるようです。

股関節の内旋の可動域の測定

  • ジュニアの野球選手を対象とした研究では肘や肩に痛みを感じていた選手は股関節の内旋の可動域が減少している傾向にあったそうです1・2
  • プロのピッチャー約50名を調べた研究では肩の怪我をした選手は股関節の内旋の可動域が低下していたそうです
  • プロの選手を約250名を調べたところ、肘や肩の怪我と股関節の可動域は関係していなかったという報告もあります
  • プロのピッチャー約200名の股関節の可動域を調べ、その後のシーズンでの怪我の発生状況を調査した研究がありますが、これによると肘や肩の怪我と股関節の可動域に関係性はみられなかったそうです

このように異なるデータもあり決定的とは言えないまでも、少なからず股関節の可動域が肘や肩の怪我に影響する可能性はありそうです。

 

メカニズム

股関節が十分に動かないと全身の運動連鎖が損なわれる可能性があり、地面の力をうまく利用することや身体の連動性をうまく使えずに、いわゆる手投げに近い状態になってしまうことが考えられるかと思います。

ピッチング時の運動連鎖

参照https://www.quora.com/What-does-kinetic-chain-mean

というのも股関節の働きはピッチング時のパワーを伝達するのにとても重要です。

投球時の脚の使い方が怪我や球速に及ぼす影響

 

股関節の可動域の左右差にも注意

野球選手は股関節の回旋の可動域に左右差が生まれやすい傾向があります。

軸足とそうでない足との間に左右差も生まれるという研究結果があり7〜9、意図的に股関節の可動域の左右差を生み出しておいたほうがいいとする意見もあります。

リトルリーグのピッチャー-2

しかしながら、軸足とそうでない足との間での可動域の違いは数度の違いであるという報告が多いことや6〜9、股関節が開きすぎることはエネルギーのロスに繋がる可能性があることから、

左右どちらの可動域も一定程度を確保することが大切で、極端な左右差は好ましくないと考えられます。

 

シーズン中にも可動域が変化していく

長いシーズン中にも身体は徐々に変化していきます。

ピッチャー

シーズンを通して投球数が増えることや球速が速いほどに股関節の可動域が減少しやすいことが報告されています10。股関節の可動域が減少すれば肘や肩への負荷も高まる可能性があります。

このため疲労が溜まっているときにはしっかりと身体のケアやメンテナンスを行い、可動域をしっかりと確保することが怪我防止につながってくるかと思います。

 

まとめ

股関節の可動域の低下、特に股関節の内旋の可動域の低下が肘や肩の負担を高めてしまう可能性があります。定期的に身体のケアを行うことで必要な可動域を確保しておくことが怪我予防などに役に立つ可能性があります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Sekiguchi T, Hagiwara Y, Yabe Y, et al. Restriction in the hip internal rotation of the stride leg is associated with elbow and shoulder pain in elite young baseball players. J Shoulder Elbow Surg. 2020;29(1):139-145.
  2. Saito M, Kenmoku T, Kameyama K, et al. Relationship Between Tightness of the Hip Joint and Elbow Pain in Adolescent Baseball Players. Orthopaedic Journal of Sports Medicine. 2014;2(5).
  3. Scher S, Anderson K, Weber N, Bajorek J, Rand K, Bey MJ. Associations Among Hip and Shoulder Range of Motion and Shoulder Injury in Professional Baseball Players. J Athl Train. 2010;45(2):191-197.
  4. Xinning Li, Ma R, Hanbing Zhou, et al. Evaluation of hip internal and external rotation range of motion as an injury risk factor for hip, abdominal and groin injuries in professional baseball players. Orthopedic Reviews. 2015;7(4):111-115.
  5. Camp CL, Spiker AM, Zajac JM, et al. Decreased Hip Internal Rotation Increases the Risk of Back and Abdominal Muscle Injuries in Professional Baseball Players: Analysis of 258 Player-seasons. J Am Acad Orthop Surg. 2018;26(9):e198-e206.
  6. Laudner KG, Moore SD, Sipes RC, Meister K. Functional hip characteristics of baseball pitchers and position players. Am J Sports Med. 2010;38(2):383-387.
  7. Tippett SR. Lower Extremity Strength and Active Range of Motion in College Baseball Pitchers: A Comparison between Stance Leg and Kick Leg. J Orthop Sports Phys Ther. 1986;8(1):10-14.
  8. McCulloch PC, Patel JK, Ramkumar PN, Noble PC, Lintner DM. Asymmetric Hip Rotation in Professional Baseball Pitchers. Orthop J Sports Med. 2014;2(2).
  9. Picha KJ, Harding JL, Bliven KCH. Glenohumeral and Hip Range-of-Motion and Strength Measures in Youth Baseball Athletes. J Athl Train. 2016;51(6):466-473.
  10. Camp CL, Zajac JM, Pearson D, et al. The Impact of Workload on the Evolution of Hip Internal and External Rotation in Professional Baseball Players Over the Course of the Season. Orthopaedic Journal of Sports Medicine. 2018;6(2):2325967117752105.

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