肩の怪我のメカニズム

肩のスペースとインピンジメント

肩のスペースが小さくなってしまうことも肩のインピンジメントのひとつの原因であり、これによって骨と骨が接触しやすくなってしまい肩のインピンジメントにつながることがあります。肩のスペースは骨格などの影響もありますが、筋肉の働きや姿勢なども肩のスペースに影響を与える可能性があり、肩をしっかりと整えておくことがインピンジメントを防ぐのに役に立つかもしれません。

 

ポイント

  • 肩のスペースが小さくなってしまうと骨と骨が接触しやすくなる可能性があります
  • 肩周りの筋肉による影響で肩のスペースが小さくなっている場合もあります
  • 姿勢や可動域、肩甲骨のポジション次第でも影響を受けるようです

 

肩のスペースと肩のインピンジメント

肩のスペースがインピンジメントに関連していると考えられており、何かしらの理由でこのスペースが小さくなってしまうと骨と骨が接触しやすくなり、肩のインピンジメントを発症しやすくなる可能性があります。

肩のインピンジメント

そもそもの骨の構造や変形などによりスペースが限られている場合がありますし、腱の太くなってスペースが限られてしまいインピンジメントが発生しやすいことも考えられます。

この他にも筋肉による影響で肩のスペースが小さくなっている可能性もあり、実際にインピンジメントを抱えている人達の特徴を調べた研究では肩のスペースが狭くなっていたり、肩甲骨周りの筋力が低下しているケースもみられるようです。

肩のインピンジメント
肩のインピンジメントと筋肉による影響

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肩周りの筋力と肩のスペースの関係

肩周りのたくさんの筋肉がありますが、それぞれ役割が異なっており肩のスペースを広くするものや、中には肩のスペースを狭くするものもあり、うまくバランスを整えていくことが役に立つかと思います。

ローテーターカフ

肩のローテーターカフ

ある研究では肩のローテーターカフの筋力、特に外旋の筋力が強いほど肩のスペースが広い傾向にあったことが報告されています。というのも、これらの筋肉は上腕骨の位置をコントロールしており、上腕骨が上方向に移動するのを防ぐことでインピンジメントの予防に役立っていると考えられています。

 

僧帽筋下部

僧帽筋中部・僧帽筋下部

別の研究では僧帽筋中部や僧帽筋下部の筋力が弱い場合に肩のスペースが減少している傾向にあったそうです。これらの筋肉も肩甲骨の動きをコントロールすることで肩のスペースを広げる役割があると考えられます。

 

広背筋

肩の外転筋や内転筋も肩のスペースに影響すると考えられています。ある実験では肩の内転の筋肉の活動を高めたところ肩のスペースが広くなっていることが確認されたそうです。肩を内転させる筋肉はいくつかありますが、例えば広背筋などが相対的に弱くなりやすいことから鍛えておいたほうがいいかもしれません。

広背筋

広背筋は肩よりも下についているため上腕骨を下側に移動させる機能があり、肩のスペースを広げる可能性がある筋肉と考えられます。

 

三角筋

三角筋

三角筋は肩よりも上についているために、上腕骨を上方に移動させて肩のスペースを小さくしてしまう可能性があります。

献体による研究では三角筋は上腕骨を上方に移動させる可能性があることが示唆されていますし、別の研究では三角筋などの外転筋の活動を高めたところ肩のスペースが小さくなってしまっていたことが報告されています

このため三角筋が過剰に発達していたり硬くなりすぎていたりする場合には肩のインピンジメントにつながりやすくなる可能性があるため、こういった筋肉を緩めたり他の弱い筋肉を鍛えたりすることでバランスを整えることが役に立つのではないでしょうか。

 

顔の筋肉

顔の筋肉

興味深いことに顔の筋肉も肩のスペースに影響している可能性があります。

これに関して明確な科学的根拠はありませんが、顔の筋肉をほぐすことで肩のインピンジメントの症状が緩和したという事例を個人的に経験しており、もしかしたら何かしらの関係があるのかもしないと考えています。

 

肩の可動域と肩のスペース

肩の可動域の低下が肩を圧迫するような負荷を生み出す可能性があります。

肩の検査

  • 肩の内旋の可動域の低下している野球選手は肩のスペースが減少している傾向にあったそうです
  • 一般的に肩の後部の硬さによる肩の内旋の可動域の低下が悪影響を及ぼすと考えられており、肩の後部の硬さがある野球選手は肩のスペースが減少していたことが報告されています

なぜ肩の後部の硬さが肩のスペースを減少させるのかについて詳しいことはわかっていません。可能性としては肩の後部の硬さがある場合などには、必要な筋肉が十分に発達していなかったり、肩甲骨の位置などに変化が生じて肩のスペースが減少しているのではないか?と考えられます。

ピッチャーの投球シーン
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肩甲骨のポジションと肩のスペース

姿勢や肩甲骨のポジション次第では肩のスペースが減少してしまうことがあるようです。

猫背

  • 肩が丸まっていたり、肩甲骨が前に移動していたりすると肩のスペースが減少する傾向にあることが報告されています。やはり猫背などの丸まった姿勢というのは何かと悪影響があるのかもしれません。
  • かといって肩甲骨同士を内側に近づけるような肩甲骨の動きをしても肩のスペースにそこまで影響を与えなかったという報告もあります10

特定のポジションが有利になるというよりも、背中が過度に丸まった姿勢はよろしくないので修正しておいたほうがいいというような位置付けなのかもしれません。

 

まとめ

肩のスペースが狭くなってしまうと骨と骨が接触しやすくなりインピンジメントを引き起こしやすくなりますが、これには筋肉や肩甲骨のポジションなど様々な影響があるかと思います。しっかりと肩周りを整えておきたいところです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

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