前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷と歩行動作の変化について

前十字靭帯の損傷は長い期間のリハビリを要するような大きな怪我となってしまうことが多く、この怪我に苦しめられている人は少なくないかと思います。そして、前十字靭帯の怪我により歩行動作にも変化が生じることがありますが、それはもしかしたら身体を守るための反応であることも、身体にとって負荷がかかる好ましくないものである可能性もあります。

 

ポイント

  • 前十字靭帯損傷後に膝が曲がった状態での歩き方になることが珍しくありません
  • 膝を曲げながらの歩行動作は前十字靭帯への負荷を避けている代償動作かもしれません
  • 膝を曲げながらの歩行動作は軟骨への負荷を高め、変形性膝関節症などにつながる可能性もあります

 

前十字靭帯損傷により歩き方が変わる?

前十字靭帯の損傷によって歩き方が変わる可能性があることが報告されています。

 

膝への影響

大腿四頭筋の力は前十字靭帯に負荷を与える可能性があり、大腿四頭筋の働きを防ぐために膝が曲がった状態での歩行動作が起きていると考えられています1・2

大腿四頭筋

興味深いことに健康な人の膝に生理食塩水を注入して関節が腫れている状態を再現したところ、歩行動作が変わることが確認されています。これに伴って膝が曲がったような歩行動作となり、同時に大腿四頭筋の活動量が低下する一方でハムストリングスの活動量が増えていたそうです。

大腿四頭筋と前十字靭帯損傷について

 

股関節への影響

膝を曲げながらの歩行動作の変化が必ずしも前十字靭帯損傷後に確認されているわけではなく、統計上では前十字靭帯損傷をした人が歩行時に特定の膝の動きをしているわけではないようです

歩き方は怪我の程度やリハビリの状況などよっても個人差があるので、歩行動作は人それぞれ違っていて千差万別であるということを表しているのではないかと思います。

骨盤と大腿骨

前十字靭帯損傷から無事に回復した人達の歩行動作には、膝関節で適応した人もいれば股関節の動きにより適応した人もいたそうです。したがって、ひとつのパターンや正解があるわけではなく、一人一人の状態に合わせて考えることが大切になってくるかと思います。

 

膝を曲げた状態での歩き方と前十字靭帯への負荷

では、膝を曲げながらの歩行動作がどのような影響を与えるのでしょうか?そこには色々な意味がありそうです。

膝の痛みを抱えてる様子

  • レントゲンで歩行時の骨の動きを撮影したところ足を曲げている状態よりも伸ばしている状態の時のほうが前十字靭帯への負荷が大きい傾向にあることが確認されています
  • 膝が曲がっていることで前十字靭帯への負荷が軽減される傾向にあるようです

なぜ膝を曲げながらの歩行動作が前十字靭帯への負荷を軽減させるのかについては議論が残りますが、膝を曲げることでハムストリングスなどの周辺の筋肉をより働かせて負荷が軽減していることがひとつの理由として考えられます。

前十字靭帯損傷とハムストリングスの筋力強化の重要性

 

前十字靭帯を守るためにこのような歩行動作になっているか、あるいは可動域を回復できていないから仕方なくこのような歩行動作になっているのか、その原因はわかりませんが少なくとも膝を曲げながらの歩行動作は前十字靭帯への負荷を軽減させる可能性がありそうです。

 

変形性膝関節症のリスク

膝を曲げながらの歩行動作は前十字靭帯への負荷を軽減させるかもしれませんが、デメリットも存在しています。

変形性膝関節症

  • 膝を曲げながらの歩き方は膝の軟骨の負荷を高める可能性があり、変形性膝関節症へと発展するリスクがあります
  • 大腿四頭筋が弱い状態では変形性膝関節症を発症しやすくなることが報告されており9・10、大腿四頭筋の働きを抑制し続けるような歩き方で身体に負担がかかる可能性があります。

リハビリなどに取り組むことで筋力をしっかりと回復させていくことは大切なことです。

変形性膝関節症と歩行動作の変化について

 

まとめ

膝を曲げながらの歩行動作は前十字靭帯の負荷を軽減させるかもしれませんが、変形性膝関節症のリスクを高める可能性があります。リハビリをしっかりと行い可動域や筋力を回復させて適切な機能を獲得していくことが大切になってくるかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Beard DJ, Soundarapandian RS, O’Connor JJ, Dodd CAF. Gait and electromyographic analysis of anterior cruciate ligament deficient subjects. Gait & Posture. 1996;4(2):83-88.

  2. Branch TP, Hunter R, Donath M. Dynamic EMG analysis of anterior cruciate deficient legs with and without bracing during cutting. Am J Sports Med. 1989;17(1):35-41.

  3. Torry MR, Decker MJ, Viola RW, O’Connor DD, Steadman JR. Intra-articular knee joint effusion induces quadriceps avoidance gait patterns. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2000;15(3):147-159.

  4. Torry MR, Decker MJ, Ellis HB, Shelburne KB, Sterett WI, Steadman JR. Mechanisms of compensating for anterior cruciate ligament deficiency during gait. Med Sci Sports Exerc. 2004;36(8):1403-1412.

  5. Ismail SA, Button K, Simic M, Van Deursen R, Pappas E. Three-dimensional kinematic and kinetic gait deviations in individuals with chronic anterior cruciate ligament deficient knee: A systematic review and meta-analysis. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2016;35:68-80.

  6. Lafortune MA, Cavanagh PR, Sommer HJ, Kalenak A. Three-dimensional kinematics of the human knee during walking. J Biomech. 1992;25(4):347-357.

  7. Shimokochi Y, Shultz SJ. Mechanisms of Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injury. J Athl Train. 2008;43(4):396-408.

  8. Teng H-L, Wu D, Su F, et al. Gait Characteristics Associated With a Greater Increase in Medial Knee Cartilage T1ρ and T2 Relaxation Times in Patients Undergoing Anterior Cruciate Ligament Reconstruction. Am J Sports Med. 2017;45(14):3262-3271

  9. Blackburn JT, Pietrosimone B, Harkey MS, Luc BA, Pamukoff DN. Quadriceps Function and Gait Kinetics after Anterior Cruciate Ligament Reconstruction. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2016;48(9):1664–1670. doi:10.

  10. Pamukoff DN, Montgomery MM, Moffit TJ, Vakula MN. Quadriceps Function and Knee Joint Ultrasonography after ACL Reconstruction. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2018;50(2):211–217.

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