前十字靭帯損傷

前十字靭帯断裂後の固有感覚器への刺激について

前十字靭帯損傷などの怪我により固有感覚受容器もダメージを受け、関節の位置を把握する能力や身体がどのように動いているかを察知する能力などが低下する傾向があります。これによって膝の機能が低下し、リハビリや日常生活などに影響を与えている可能性があります。

 

ポイント

  • 予期せぬ負荷を与えるようなトレーニングは膝の安定性を高めます
  • 予期せぬ負荷に反応することは筋肉が過剰に働くのを減らしてタイミングよく働くのを促します
  • 筋肉が過剰に働きすぎることは膝を圧迫するような負荷を高め、変形性膝関節症などに関係しています

 

バランス感覚のトレーニング

こういったいわゆるバランス感覚を改善するトレーニングのひとつに予期せぬ負荷を与える方法があります。これは摂動トレーニング(pertubation training)などと呼ばれています。バランス感覚を鍛えるのはもちろんのこと、それ以外にもさらなる効果がある可能性があります。

摂動トレーニングの実施例

参照https://musculoskeletalkey.com/rehabilitation-of-the-surgically-reconstructed-and-nonsurgically-treated-anterior-cruciate-ligament/

 

感覚器のトレーニングで筋力が回復しやすくなる?

感覚器のトレーニングも筋力に影響を与える可能性があります。

感覚刺激による筋力回復

  • 前十字靭帯再建手術をした人に摂動トレーニングを行うことで大腿四頭筋の筋力が大きく回復したという研究結果があります
  • 感覚器からのフィードバックが筋力発揮に影響しているためではないか?というのがひとつの理由として考えられています

前十字靭帯を損傷し、それに伴い感覚器にもダメージを受けてしまうことで、筋力発揮がなかなか思うようにいかないという可能性があるわけです。そのため、感覚器に刺激を与えることで筋力回復にも役に立つのではないか?という考え方です。

神経伝達

 

筋力回復の効果の度合いについて

しかし、上記の研究におけるデータには疑問が残る点があり、ここまで良くなるかの?と個人的には思ってしまいます。次の図のように摂動トレーニングを行うグループと通常の筋トレを行うグループの最初の筋力に大きな差があります

前十字靭帯損傷による摂動トレーニングの筋力回復の効果

(Hartigan et al 2009より引用)

摂動トレーニングにより大腿四頭筋の筋力強化に役に立つ可能性は否定できませんが、筋力が大きく回復するというのは少々誇張しすぎではないか?という疑問が残るわけですね。

費用対効果を考えれば試す価値が大いにあるトレーニング方法だと思いますし、さらなる研究結果がどうなるのか?楽しみなところです。

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適切なタイミングで筋肉が活動するようになる?

感覚器のトレーニングには適切なタイミングで筋肉を働かせる効果もあるかもしれません。

  • 前十字靭帯損傷をした人に摂動トレーニングのセッションを10回行なったところ、歩行動作における関節をガチガチに固めてしまうような筋肉の共同収縮が減少したという研究報告があります

筋肉が過剰に働きすぎることは膝関節を圧迫してまう可能性があるため、前十字靭帯損傷後における変形性膝関節症と関係しています。

摂動トレーニングでは予期せぬ外部からの負荷に反応して筋肉を動かすわけですから、筋肉を必要なタイミングで必要な分だけ働かせるという点において理にかなっているのではないでしょうか。

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感覚器のトレーニング実践例

固有感覚器官を改善するための摂動トレーニングの実施方法を説明させていただきます。

摂動トレーニングの実施方法

(Hartigan et al 2009より引用)

基本的なトレーニング方法としては以下のものが挙げられています

  • バランスボードを使い前後、左右へとランダムに負荷を与える。
  • 最初は両足で初めて、慣れてきたら片足へと進む。
  • 転倒に備えていざという時に何かに捕まることができる場所で行う。

ポイントとしては、大きな力を発揮して関節を固めるのではなく、外部からの刺激に対して同程度の力で釣り合いがとれるように反応することです。筋肉の共同収縮を減らし、適切なタイミングでの筋力を発揮することがひとつの目的であるからです。

 

まとめ

摂動トレーニングに対する科学的根拠に疑問はまだまだ残りますが、手軽に導入できコストも安いことから費用対効果に優れた手法と言えるのではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Hartigan E, Axe MJ, Snyder-Mackler L. Perturbation Training prior to ACL Reconstruction Improves Gait Asymmetries in Non-Copers. J Orthop Res. 2009;27(6):724-729.

  2. Konishi Y, Fukubayashi T, Takeshita D. Possible mechanism of quadriceps femoris weakness in patients with ruptured anterior cruciate ligament. Med Sci Sports Exerc. 2002;34(9):1414-1418.

  3. Chmielewski TL, Hurd WJ, Rudolph KS, Axe MJ, Snyder-Mackler L. Perturbation training improves knee kinematics and reduces muscle co-contraction after complete unilateral anterior cruciate ligament rupture. Phys Ther. 2005;85(8):740-749; discussion 750-754.

  4. Fitzgerald GK, Axe MJ, Snyder-Mackler L. Proposed practice guidelines for nonoperative anterior cruciate ligament rehabilitation of physically active individuals. J Orthop Sports Phys Ther. 2000;30(4):194-203.

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