前十字靭帯損傷

スキーにおける前十字靭帯断裂のメカニズム

スキーでは急激なスラロームやジャンプ着地など膝に負荷がかかりやすい場面も少なくなく、前十字靭帯断裂につながることも珍しくありません。

前十字靭帯断裂のメカニズムを知ることで、怪我のリスクを少しでも下げられる可能性があるかもしれません。

 

ポイント

  • スキーにおいてはスラロームやジャンプ着地時などに前十字靭帯を断裂するケースが多いようです。
  • 後方重心におけるジャンプ着地での前十字靭帯断裂が少なくないようです。
  • その他にも筋力不足やスキー用品次第でも前十字靭帯断裂のリスクが高まることがあるようです。

 

前十字靭帯断裂の発生状況

スキーにおいては身体が大きく傾く、脚がねじれるなどの状況で前十字靭帯が起こりやすいようです。

(Bere et al 2011より引用)

  • アルペンスキーにおいてはスラロームでの前十字靭帯断裂が多いことが報告されています
  • 世界大会などにおけるスキー選手のビデオ映像を分析した研究ではスリップキャッチ(上の図参照)、後ろ重心の着地、snowplow(下の図参照)などによって前十字靭帯断裂が起きていることが報告されています
  • 別の研究では前方にひねりながら倒れるときに前十字靭帯断裂が多かったことが報告されています

(Bere et a l 2011より引用)

このようにカーブやジャンプの着地には気をつけたいところですね。

 

スキーにおけるジャンプ着地

スキーではジャンプ着地時にも前十字靭帯断裂が起こることから、膝への負荷が高まりやすい着地フォームなどが研究されることがあります。

 

後方重心のジャンプ着地

スキーのジャンプ着地で体幹部の重心が後方に傾くと前十字靭帯の負荷が高まるかもしれません。

(Bere et al 2011より引用)

  • スキーのジャンプ着地時に体幹が後方に傾いていると前十字靭帯の負荷が高まる可能性があることが報告されています4・5
  • コンピューターシミュレーションにおいてはジャンプの高さよりも体幹部が後方に傾くことが前十字靭帯への負荷へつながりやすいという結果になっています
  • 実際に世界大会における前十字靭帯断裂では後方重心の着地の事例も多くあるようです
  • 他の研究では後ろ重心の着地よりも前方重心の着地で前十字靭帯断裂をするケースが多いことが報告されています

このように賛否両論ありますが、基本的には着地した脚から大きく重心が外れると膝への負荷が高まってしまう可能性が考えられます。

ジャンプの着地と前十字靭帯への負荷

 

その他の要素

体幹部の重心だけでなく他の要素でも前十字靭帯への負荷が変わってくる可能性があります。

スキージャンプ

  • ジャンプの着地時に股関節の屈曲や膝関節伸展、足首の背屈が大きいと前十字靭帯に負荷がかかりやすくなる傾向にあるようです
  • また着地時の脚の左右差も前十字靭帯に負荷がかかる要因となるようです

しかし、これはあくまでコンピューターによるシミュレーションの結果に過ぎません。

 

身体的要素と前十字靭帯断裂

筋力不足も前十字靭帯断裂のリスクとなる可能性があります。

  • 前十字靭帯を断裂したスキー選手とそうでない人を比べたところ柔軟性はそんなに違いはみられなかったそうです
  • 前十字靭帯を断裂したスキー選手は腹筋などの体幹や脚の筋力の低下やバランスの乱れが大きい傾向にあったそうです
  • 他にも片脚ジャンプの飛距離の左右差が大きいことも前十字靭帯につながる可能性があると考えられています

このように弱い筋肉はしっかりと鍛えておいたほうがいいかもしれません。

体幹トレーニングと前十字靭帯損傷の関係について

 

スキー用品と前十字靭帯断裂

スキーのブーツや板の種類によっても前十字靭帯への負荷が変わる可能性があるかもしれません。

(Posch et al 2019より引用)

  • スキーのビンディングも前十字靭帯断裂に少なからず関係しており、無理な体勢のときにスキー板が外れることで身体への負荷を和らげる可能性があるのですが、前十字靭帯を完全断裂するケースではうまくスキー板が外れずていなかったことも珍しくないようです6・8
  • 前十字靭帯を断裂した人のスキーブーツのつま先やかかとはよりすり減っている傾向にあったそうです11。スキーブーツがすり減っているとスキー板がうまく外れにくくなることが考えられ10、怪我へとつながる可能性があります。
  • スキー板の後方部分が硬いと前十字靭帯への負荷が高まる可能性があることが報告されています11。これは膝の角度や体幹部などの姿勢に影響があり、それによって筋肉の働きが変わり、結果として膝への負荷が変わる可能性があると考えられているようです。

(Eberle et al 2017より引用)

これらの要素は研究数が少なく、その証明力には限界がありますが、怪我のメカニズムのひとつの要素として頭の片隅に入れておいて損はないかもしれません。

 

まとめ

スキーにおける前十字靭帯断裂のメカニズムには様々な可能性が考えられています。

膝に大きな負荷がかからないように、少しでも怪我のリスクを下げられるといいですね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Westin M, Harringe ML, Engström B, Alricsson M, Werner S. Risk Factors for Anterior Cruciate Ligament Injury in Competitive Adolescent Alpine Skiers. Orthop J Sports Med. 2018;6(4):2325967118766830. doi:10.1177/2325967118766830
  2. Bere T, Flørenes TW, Krosshaug T, et al. Mechanisms of anterior cruciate ligament injury in World Cup alpine skiing: a systematic video analysis of 20 cases. Am J Sports Med. 2011;39(7):1421-1429. doi:10.1177/0363546511405147
  3. Ruedl G, Linortner I, Schranz A, et al. Distribution of injury mechanisms and related factors in ACL-injured female carving skiers. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2009;17(11):1393-1398. doi:10.1007/s00167-009-0860-7
  4. Heinrich D, Bogert AJ van den, Nachbauer W. Peak ACL force during jump landing in downhill skiing is less sensitive to landing height than landing position. Br J Sports Med. 2018;52(17):1086-1090. doi:10.1136/bjsports-2017-098964
  5. Heinrich D, van den Bogert AJ, Nachbauer W. Relationship between jump landing kinematics and peak ACL force during a jump in downhill skiing: a simulation study. Scand J Med Sci Sports. 2014;24(3):e180-187. doi:10.1111/sms.12120
  6. Ruedl G, Webhofer M, Linortner I, et al. ACL injury mechanisms and related factors in male and female carving skiers: a retrospective study. Int J Sports Med. 2011;32(10):801-806. doi:10.1055/s-0031-1279719
  7. Raschner C, Platzer H-P, Patterson C, Werner I, Huber R, Hildebrandt C. The relationship between ACL injuries and physical fitness in young competitive ski racers: a 10-year longitudinal study. Br J Sports Med. 2012;46(15):1065-1071. doi:10.1136/bjsports-2012-091050
  8. Ruedl G, Helle K, Tecklenburg K, Schranz A, Fink C, Burtscher M. Factors associated with self-reported failure of binding release among ACL injured male and female recreational skiers: a catalyst to change ISO binding standards? Br J Sports Med. 2016;50(1):37-40. doi:10.1136/bjsports-2015-095482
  9. Posch M, Ruedl G, Schranz A, Tecklenburg K, Burtscher M. Is ski boot sole abrasion a potential ACL injury risk factor for male and female recreational skiers? Scand J Med Sci Sports. 2019;29(5):736-741. doi:10.1111/sms.13391
  10. Campbell JR, Scher IS, Carpenter D, Jahnke BL, Ching RP. Performance of Alpine Touring Boots When Used in Alpine Ski Bindings. J Appl Biomech. 2017;33(5):330-338. doi:10.1123/jab.2016-0256
  11. Eberle R, Heinrich D, Kaps P, Oberguggenberger M, Nachbauer W. Effect of ski boot rear stiffness (SBRS) on maximal ACL force during injury prone landing movements in alpine ski racing: A study with a musculoskeletal simulation model. J Sports Sci. 2017;35(12):1125-1133. doi:10.1080/02640414.2016.1211309

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