前十字靭帯損傷

手術で再建した靭帯に生命を宿すことはできるのか?

手術によって獲得した靭帯は人が本来持っている靭帯とは微妙に違い、怪我によって脚の機能が落ちてしまうことがあります。

ここで義足のアスリートのように手術で再建した靭帯であったとしても驚異のパフォーマンスを発揮できる可能性があるのではないか?

浅はかかもしれませんが、そんな可能性について書かせていただきたいと思います。

 

ポイント

  • 手術で再建した靭帯にも血液や神経が通っているようです。
  • 通常の靭帯と比べると感覚器などの量が少ない傾向にあります。
  • パラリンピックアスリートは継続的なトレーニングにより驚異的な脳神経の発達をみせることがあります。

 

靭帯の再建手術について

前十字靭帯断裂をすると靭帯の再建手術が行われますが、再建した靭帯はあくまで手術によって造られたものであり、人が持っている靭帯の本来の機能には及ばないかもしれません。

 

再建後の靭帯の細胞について

再建した靭帯においても血液やコラーゲン細胞などが働いているようです。

膝の手術

  • 再建した靭帯にも一定程度の血液やコラーゲン細胞はあるようです1・2
  • 数年間は再建した靭帯の細胞が適応していき本来の靭帯に近づいていきますが、一定の年数で変化は見られなくなり完全に靭帯と同じようにはならないことが報告されています3・4

 

再建した靭帯の感覚器としての機能について

再建手術による靭帯の感覚器の機能は通常よりも劣る傾向にあり、バランスなどがとりにくい傾向にあります。

片足バランス

  • 前十字靭帯断裂した人の固有感覚は低下しており、通常よりもバランス感覚が低下している傾向にあります
  • 再建した靭帯の細胞を調べたところ固有受容器が確認されたそうですが、通常の靭帯よりも数は少なかったようです6・7
  • 一方で手術の方法などによって固有受容器の数などに違いがあるかもしれないという議論もあります7・8

靭帯を断裂したことで固有受容器の数が少ない傾向にあることから、脚のバランスの低下などが起こりうるようです。

 

手術方法による固有感覚の回復

興味深いことに断裂した靭帯に固有受容器が残存しているようです

これを活かした靭帯の再建術が研究されており、従来のものよりも神経を通わせることができる可能性があるようですが10、実現性は私にはわかりません。

前十字靭帯断裂

 

パラリンピックアスリートのように魂を宿す?

たとえ手術によって再建した靭帯であったとしても、義足のアスリートのように魂を宿すことはできないのか?

ただの思いつきかもしれませんが、そんな可能性について考察していきたいと思います。

義足のランナー

 

驚異のパラリンピックアスリート

パラリンピックアスリートは義足であったとしても驚異的なパフォーマンスを発揮します。

それはまるで、義足に魂が宿っているのではないか?と思わせるほどです。

義足のハードル走

義足以外にもパラリンピックアスリートのパフォーマンスは驚異的であり、例えばベンチプレスの世界記録は健常者を上回ることがあり、アーチェリーにおいても健常者を上回る記録を叩き出したりと、とにかく驚異的なパフォーマンスを発揮することがあるそうです11

そんなパラリンピックアスリートの脳神経は通常では考えられないような発達を見せていることが珍しくありません11

車椅子アーチェリー

このようなことから、義足のアスリートのように手術で再建した靭帯にも魂が宿る、と言えるほどの驚異的な進化をみせる可能性があるのではないか?と考えたわけです。

 

手術で再建した靭帯にも魂を宿すには?

パラリンピックアスリートの脳神経に関する研究をいくつか読み漁ってみたところ、現時点での私の答えは、

「普通の人には簡単にできないような状況下でも継続的にトレーニングや競技を続けたことが大きい」というものです。

車椅子バスケットボール

再建した靭帯の神経細胞を増やすのは困難であるが、継続的なトレーニングによって膝周りの神経が驚異的に発達する可能性はあるかもしれません。

義足のアスリート

ただ、通常の人には難しい運動に継続的に取り組んだことが驚異的な脳神経の機能を引き出す鍵になっていることから、誰でも簡単にできるようなトレーニングでは難しいかもしれません。

それくらいにパラリンピックアスリートは凄く、私の考えは浅はかだったのかもしれません。

 

まとめ

手術で再建した靭帯に血液や神経は通っていますが、通常よりは機能が落ちる傾向にあるようです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Dong S, Xie G, Zhang Y, Shen P, Huangfu X, Zhao J. Ligamentization of Autogenous Hamstring Grafts After Anterior Cruciate Ligament Reconstruction: Midterm Versus Long-term Results. Am J Sports Med. 2015;43(8):1908-1917. doi:10.1177/0363546515584039
  2. Falconiero RP, DiStefano VJ, Cook TM. Revascularization and ligamentization of autogenous anterior cruciate ligament grafts in humans. Arthroscopy. 1998;14(2):197-205. doi:10.1016/s0749-8063(98)70041-6
  3. Zaffagnini S, De Pasquale V, Marchesini Reggiani L, et al. Electron microscopy of the remodelling process in hamstring tendon used as ACL graft. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2010;18(8):1052-1058. doi:10.1007/s00167-009-0925-7
  4. Zaffagnini S, De Pasquale V, Marchesini Reggiani L, et al. Neoligamentization process of BTPB used for ACL graft: histological evaluation from 6 months to 10 years. Knee. 2007;14(2):87-93. doi:10.1016/j.knee.2006.11.006
  5. Kim H-J, Lee J-H, Lee D-H. Proprioception in Patients With Anterior Cruciate Ligament Tears: A Meta-analysis Comparing Injured and Uninjured Limbs. Am J Sports Med. 2017;45(12):2916-2922. doi:10.1177/0363546516682231
  6. D R, Ho M, H S, S HL, A B. Immunohistochemical analysis of sensory corpuscles in human transplants of the anterior cruciate ligament. Journal of orthopaedic surgery and research. 2020;15(1). doi:10.1186/s13018-020-01785-5
  7. Young SW, Valladares RD, Loi F, Dragoo JL. Mechanoreceptor Reinnervation of Autografts Versus Allografts After Anterior Cruciate Ligament Reconstruction. Orthop J Sports Med. 2016;4(10):2325967116668782. doi:10.1177/2325967116668782
  8. Kim SH, Chun CH, Chun KC, Jo HJ, Kim KM. Histological assessment of mechanoreceptors in Achilles allografts after anterior cruciate ligament reconstruction. Am J Sports Med. 2012;40(9):2061-2065. doi:10.1177/0363546512453303
  9. Dhillon MS, Bali K, Vasistha RK. Immunohistological evaluation of proprioceptive potential of the residual stump of injured anterior cruciate ligaments (ACL). Int Orthop. 2010;34(5):737-741. doi:10.1007/s00264-009-0948-1
  10. Chun KC, Lee SH, Kim JW, Jin EJ, Kim KM, Chun CH. Immunohistochemical and immunocytochemical study of mechanoreceptors in anterior cruciate ligament reconstruction with the remnant-preserving technique using Achilles tendon allografts. J Orthop Surg Res. 2017;12(1):93. doi:10.1186/s13018-017-0593-0
  11. 中澤公孝 (2021). 「パラリンピックブレイン」東京大学出版会.

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