大腿四頭筋の収縮により前十字靭帯に負荷がかかるという考え方があります1。
しかし、その根拠にはコンピューターによる計算の推定値も含まれており2・3、どのくらい実際の人間に当てはまるのかは疑問が残るところです。
そこで大腿四頭筋と前十字靭帯の関係性を解説していきたいと思います。
ポイント
- 一般的に大腿四頭筋は前十字靭帯への負荷を生み出すと考えられています
- 献体による実験では大腿四頭筋の力が前十字靭帯への負荷が高まっていたそうです
- ハムストリングスが働いていると大腿四頭筋の力が大きくなっても前十字靭帯への負荷が軽減されたそうです
大腿四頭筋で前十字靭帯損傷を引き起こすには
大腿四頭筋は前十字靭帯への負荷を高める可能性があります。
献体による実験によると4500Nの力が大腿四頭筋によって生み出されると前十字靭帯の部分断裂や完全断裂が起きるそうです4。
(DeMorat et al 2004より引用)
しかしながら、この結果だけをもって大腿四頭筋が前十字靭帯によくないとは言い切れません。
ハムストリングスの働きで違う結果になる?
ハムストリングスが働くことで大腿四頭筋による筋力もプラスに働く可能性があります。
大腿四頭筋と前十字靭帯への負荷の関係についてジャンプの着地時を再現した実験では、大腿四頭筋の力が大きいことで前十字靭帯の負荷を和らげる結果となったそうです5。
(Lipps et al 2014より引用)
これにより着地時の衝撃を和らげて前十字靭帯への負荷の軽減に繋がったのではないか?と考えることができます。
大腿四頭筋は鍛えたほうがいいのか?
このように大腿四頭筋が前十字靭帯損傷の直接の原因になっているかどうかについては議論が残るところですが、大腿四頭筋は怪我予防のためにある程度は鍛えておいたほうがいいかもしれません。
というのもハムストリングスなどの筋肉との連携で前十字靭帯への負荷を減らせる可能性があること、そして大腿四頭筋が弱いことで膝の不安定さにつながり変形性膝関節症などの別の怪我のリスクも高まる可能性があります。
そして、前十字靭帯損傷を防ぐには大腿四頭筋を鍛えるよりもハムストリングスを鍛えた方が効果的ですし、一般的に大腿四頭筋よりもハムストリングスが弱くなりがちであることを強調させていただきます。
まとめ
大腿四頭筋は前十字靭帯への負荷を高めるという説もありますが、しっかりと身体をバランスよく鍛えることで怪我予防やパフォーマンスアップにつながると考えられます。
<参考文献>
Shimokochi Y, Shultz SJ. Mechanisms of Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injury. J Athl Train. 2008;43(4):396-408.
Pandy MG, Shelburne KB. Dependence of cruciate-ligament loading on muscle forces and external load. Journal of Biomechanics. 1997;30(10):1015-1024.
Isaac DL, Beard DJ, Price AJ, Rees J, Murray DW, Dodd C a. F. In-vivo sagittal plane knee kinematics: ACL intact, deficient and reconstructed knees. Knee. 2005;12(1):25-31.
DeMorat G, Weinhold P, Blackburn T, Chudik S, Garrett W. Aggressive quadriceps loading can induce noncontact anterior cruciate ligament injury. Am J Sports Med. 2004;32(2):477-483.
Lipps DB, Oh YK, Ashton-Miller JA, Wojtys EM. Effect of increased quadriceps tensile stiffness on peak anterior cruciate ligament strain during a simulated pivot landing. J Orthop Res. 2014;32(3):423-430.