前十字靭帯損傷

前十字靭帯の部分断裂について

前十字靭帯損傷

前十字靭帯断裂は長期間のスポーツ離脱を余儀なくされます。

一般的には前十字靭帯を完全に断裂するケースが多いのですが、時には前十字靭帯を部分断裂することもあります。

ここで前十字靭帯の部分断裂ならではの議論についてご紹介したいと思います。

 

ポイント

  • 前十字靭帯の部分断裂はそこまで多いわけではありませんが、評価が難しく見逃されているケースもあるようです。
  • 部分断裂においてスポーツ復帰を目指している場合には手術をしない保存療法では微妙なところです。
  • 残存した靭帯を活かした手術方法によって、膝の機能が高まりやすい場合もあるようです。

 

前十字靭帯の部分断裂

(Van Dyck et al 2012より引用)

一般的には前十字靭帯断裂においては部分断裂よりも完全断裂のほうが多いとされています

本当に部分断裂なのかMRIによる検査でも精度に限界があり2・3、関節鏡などの検査でより確実に評価できるとされています2・5

 

というのも部分断裂においては靭帯周りの出血などによりMRIの信号が不明瞭であり、関節鏡を用いて目視で直接確認したほうがいいとされているためです。

MRIによる診断では前十字靭帯の部分断裂が見逃されているという意見もあるようですが、データも少ないのでこれ以上の議論は難しいところです。

 

部分断裂で手術しない場合

前十字靭帯の部分断裂の場合には、完全に靭帯を断裂していないのだから手術をしなくてもいけるのではないか?という考えもあるかもしれません。

手術をしない場合はその後の経過が微妙なところで、特にスポーツへの復帰を考えている場合には慎重な判断が必要になりそうです。

膝の手術

  • 手術をしない保存療法ではスポーツ制限などの条件下では膝の状態は良好なことが多いようです
  • 膝が不安定な場合には痛みが増しやすく、場合によっては完全断裂へとつながることも珍しくありません4・5
  • 手術をしない場合で変形性膝関節症の発症がそこまでは多くないというデータもあるようです

前十字靭帯の部分断裂において、スポーツに復帰したい場合には手術をしないというのは微妙であり、リスクを伴うように思います。

全体的に研究が少し古く、データも少し曖昧な印象を受けており、判断が難しいと感じています。

 

部分断裂の手術

前十字靭帯の部分断裂においては、残存した無傷の靭帯を活かして手術することもあるようです。

(Sonnery-Cottet and Colombet 2016より引用)

  • 無傷の靭帯を活かしながら行うような手術方法もあり、完全断裂とは違い残存した靭帯が膝の機能回復に役に立つと考えられています。
  • 手術後の膝の状態に大きな問題なしという研究報告がありますが7・8、一方で研究数が少し不足していることや通常と異なる手法であることから不安も残るようです

前十字靭帯の部分断裂に関して様々な議論がありますが、詳しい手術方法などは整形外科医の先生の判断になるかと思います。

 

まとめ

前十字靭帯の部分断裂は完全断裂とは少し違う点もあり、注意が必要かもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Seil R, Mouton C, Coquay J, et al. Ramp lesions associated with ACL injuries are more likely to be present in contact injuries and complete ACL tears. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2018;26(4):1080-1085. doi:10.1007/s00167-017-4598-3
  2. Jog AV, Smith TJ, Pipitone PS, Toorkey BC, Morgan CD, Bartolozzi AR. Is a Partial Anterior Cruciate Ligament Tear Truly Partial? A Clinical, Arthroscopic, and Histologic Investigation. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic & Related Surgery. 2020;36(6):1706-1713. doi:10.1016/j.arthro.2020.02.037
  3. Van Dyck P, De Smet E, Veryser J, et al. Partial tear of the anterior cruciate ligament of the knee: injury patterns on MR imaging. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2012;20(2):256-261. doi:10.1007/s00167-011-1617-7
  4. Pujol N, Colombet P, Cucurulo T, et al. Natural history of partial anterior cruciate ligament tears: A systematic literature review. Orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research. 2012;98(8):S160-S164. doi:10.1016/j.otsr.2012.09.013
  5. Fritschy D, Panoussopoulos A, Wallensten R, Peter R. Can we predict the outcome of a partial rupture of the anterior cruciate ligament? A prospective study of 43 cases. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 1997;5(1):2-5. doi:10.1007/s001670050015
  6. Colombet P, Dejour D, Panisset J-C, Siebold R. Current concept of partial anterior cruciate ligament ruptures. Orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research. 2010;96(8):S109-S118. doi:10.1016/j.otsr.2010.09.003
  7. Perelli S, Ibañez F, Gelber PE, Erquicia JI, Pelfort X, Monllau JC. Selective bundle reconstruction in partial ACL tears leads to excellent long-term functional outcomes and a low percentage of failures. The Knee. 2019;26(6):1262-1270. doi:10.1016/j.knee.2019.09.001
  8. Chouteau J, Testa R, Viste A, Moyen B. Knee rotational laxity and proprioceptive function 2 years after partial ACL reconstruction. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2012;20(4):762-766. doi:10.1007/s00167-012-1879-8
  9. Sonnery-Cottet B, Colombet P. Partial tears of the anterior cruciate ligament. Orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research. 2016;102(1):S59-S67. doi:10.1016/j.otsr.2015.06.032

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