前十字靭帯損傷後はリハビリをしても、なかなか思うように膝の機能が回復しにくいことが珍しくありません。
これには様々な理由がありますが、知らず知らずのうちに骨の形状が変化したり、軟骨などにダメージが生じていたりと構造的な要因も関わっているかもしれません。
ポイント
- 前十字靭帯損傷後は骨がトゲのように出っ張る骨棘が形成されやすくなります。
- 20代であってもアスリートであっても骨棘が形成されるリスクがあります。
- 骨棘によって痛みやアライメントの変化が生じやすく、繊細で丁寧なケアが大切になります。
前十字靭帯損傷と骨棘の形成
前十字靭帯再建手術後にも膝の骨がトゲのように出っ張るような骨棘が形成される可能性はあります。
(Wong et al 2016より引用)
- 前十字靭帯損傷をした人はアスリートであっても骨棘が形成される可能性があるようで1、手術から約3年の時点で怪我していない脚と比べて多く骨棘が形成されていたという研究結果があります2・3
- 20代の人でも起こりうることで、高齢になるとよりリスクが高まると考えられています1・2。
- さらには栄養状態が悪いと骨がもろくなり骨棘が形成されやすくなると考えられています4・5。
このように前十字靭帯損傷後は膝の骨に骨棘ができる可能性が少なからずあります。
骨棘が形成される影響
膝の骨がトゲのように出っ張るような形になるため、これによって痛みが生じたり膝のアライメントが乱れたり、膝の状態が悪化する可能性が考えられます。
特に前十字靭帯再建手術から一定期間経過してもリハビリがうまくいかなかった人の場合には、知らず知らずのうちに骨棘が形成されている可能性も考えられ、
ちょっとしたことで痛みを感じてしまったり、負荷の高い運動に取り組みにかったりすることも考えられるかもしれません。
この状態に陥ってしまった場合には、通常の前十字靭帯損傷後のリハビリを行っても思うような効果が得られないということもあるかと思います。
前十字靭帯損傷後にリハビリがうまくいっていない期間が一定程度続くと、骨棘だけでなく軟骨や半月板へのダメージも生じている可能性もあり、
そもそもの構造的な違いが生じて、悪循環にはまってしまうことも考えられます。
対処法について
前十字靭帯損傷後の骨棘の形成の診断自体はレントゲンやMRI等がないと正確に評価できないものの、
手術から一定期間経過しているのに膝の機能が十分に回復していないなど、リスクが高い人には慎重に繊細に膝のケアやトレーニングをしていくことが大切だと思います。
私の経験上、こういったケースでは筋力トレーニングで闇雲に負荷をかけるよりも、
膝のアライメントを整え、膝の安定性を確保するなど、身体が安心できる状態を作り上げることが大切だと思います。
そもそも骨棘が形成されるのは膝に過剰な負荷がかかっていることが原因のひとつと考えられており、適度な負荷や心地よい負荷で丁寧に膝をケアしていくことが賢明かと思います。
リハビリなどで膝の状態を回復させるのに一定の効果がありますが、骨棘は骨の変形であるのでやはりリハビリだけでは一定の限界があり、重度で影響度が大きい場合には手術などの際に除去することも考えられます。
まとめ
前十字靭帯損傷後は知らず知らずのうちに骨棘が形成され、膝の状態が悪化しやすくなる可能性があります。
手術後のリハビリがうまくいかずに一定期間経過してしまった場合には、慎重で繊細な対応が大切だと思います。
<参考文献>
- Roemer FW, Jarraya M, Niu J, Silva J-R, Frobell R, Guermazi A. Increased risk for radiographic osteoarthritis features in young active athletes: a cross-sectional matched case-control study. Osteoarthritis Cartilage. 2015;23(2):239-243. doi:10.1016/j.joca.2014.11.011
- Panzer S, Augat P, Atzwanger J, Hergan K. 3-T MRI assessment of osteophyte formation in patients with unilateral anterior cruciate ligament injury and reconstruction. Skeletal Radiol. 2012;41(12):1597-1604. doi:10.1007/s00256-012-1445-y
- Buckland-Wright J, Lynch J, Dave B. Early radiographic features in patients with anterior cruciate ligament rupture. Ann Rheum Dis. 2000;59(8):641-646. doi:10.1136/ard.59.8.641
- Wong SHJ, Chiu KY, Yan CH. Review Article: Osteophytes. J Orthop Surg (Hong Kong). 2016;24(3):403-410. doi:10.1177/1602400327
- Nagaosa Y, Lanyon P, Doherty M. Characterisation of size and direction of osteophyte in knee osteoarthritis: a radiographic study. Ann Rheum Dis. 2002;61(4):319-324. doi:10.1136/ard.61.4.319