前十字靭帯損傷

前十字靭帯断裂と筋肉の反応速度の低下

前十字靭帯を守るための筋肉がいくつかありますが、これらの筋肉の反応が遅れることで膝に負荷がかかる可能性が考えられます。筋肉が適切なタイミングで働くことは怪我予防の上で大切なことなのですが、どのようなトレーニングをしたらいいのか?まだまだわからないことも多くあります。

 

ポイント

  • 前十字靭帯断裂をした脚はハムストリングスの反応が遅延している傾向にあったようです。
  • 麻酔状態で前十字靭帯が引っ張られる負荷がかかるとハムストリングスの反応が鈍くなるようです。
  • 筋肉の反応の遅延が前十字靭帯断裂の直接の原因なのかは不明です。

 

前十字靭帯損傷したケース

前十字靭帯断裂をしていると筋肉の反応速度が遅くなる可能性があります。

ハムストリングス

  • 前十字靭帯損傷した脚は、前十字靭帯への負荷に対するハムストリングスの反応は約2倍ほど遅延していることが報告されています
  • 別の研究でも前十字靭帯断裂後に膝が不安定な人は、前十字靭帯への負荷に対するハムストリングスの反応が遅延している傾向にあることが報告されています

 

このように前十字靭帯が損傷したことで、負荷がかかっていることを検知しにくくなって反応が鈍くなっているなどの可能性が考えられます。

 

前十字靭帯への負荷による筋肉への変化

膝の感覚器としての状態によっては周辺の筋肉の反応に変化が生じる可能性があります。

ある研究で膝に麻酔を与えた上で前十字靭帯を直接引っ張るような負荷を与えたところ、ハムストリングスの反応が鈍くなったことが報告されています

(Friemert et al 2005より引用)

 

これは膝周りからの感覚器からのフィードバックが鈍くなったことで、前十字靭帯への負荷に対する筋肉の反応が鈍くなったのではないかと考えられています。

関連記事
前十字靭帯断裂後の固有感覚器への刺激について

続きを見る

 

トレーニングへの応用?

ハムストリングスの反応を改善することで前十字靭帯断裂を防げるのではないか?という発想が生まれることかと思います。しかし、現時点では実用性にいくつかの疑問が残ります。

 

まず、客観的な測定が簡単ではなくトレーニングの成果がわかりにくいことです。

そもそも筋肉の反応を計測するにはそこそこの設備を整えることが必要であり、セットアップ方法の違いなどによってうまく計測できないことも十分に起こり得ます

(Schoene et al 2009より引用)

次に、ハムストリングスの反応の遅延を改善することで前十字靭帯断裂を防げるのか?という因果関係について不明な点が残ります。

ハムストリングスの反応遅延が前十字靭帯断裂を引き起こしているのか、トレーニングによって怪我のリスクを下げられるのか?といった因果関係を直接調べた研究はまだまだ少なく、明確な結論が出せないのが現状ではないでしょうか。

 

とても興味深い考え方ではありますが、現時点では実用面で疑問が残りもう少し研究が必要ではないかと思います。

 

まとめ

前十字靭帯損傷により筋肉の反応の遅延が引き起こされ、これが膝の不安定さにつながる可能性があります。しかしながら因果関係についてはまだまだ不明な点もあり、効果的なトレーニング方法の確立などが待たれるところです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Beard DJ, Kyberd PJ, O’Connor JJ, Fergusson CM, Dodd CA. Reflex hamstring contraction latency in anterior cruciate ligament deficiency. J Orthop Res. 1994;12(2):219-228.
  2. Melnyk M, Faist M, Gothner M, Claes L, Friemert B. Changes in stretch reflex excitability are related to “giving way” symptoms in patients with anterior cruciate ligament rupture. J Neurophysiol. 2007;97(1):474-480.
  3. Friemert B, Faist M, Spengler C, Gerngross H, Claes L, Melnyk M. Intraoperative Direct Mechanical Stimulation of the Anterior Cruciate Ligament Elicits Short- and Medium-Latency Hamstring Reflexes. Journal of Neurophysiology. 2005;94(6):3996-4001.
  4. Schoene M, Spengler C, Fahrbacher B, Hartmann J, Melnyk M, Friemert B. The reliability of a method for measuring the anterior cruciate ligament-hamstring reflex: an objective assessment of functional knee instability. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2009;17(9):1107-1116.
  5. Abulhasan JF, Anley CM, Snow MD, Grey MJ. Hamstring stretch reflex: could it be a reproducible objective measure of functional knee stability?". J Exp Orthop. 2016;3(1):4.

-前十字靭帯損傷

© 2021 Hero's Body