前十字靭帯損傷

足部の機能と前十字靭帯への負荷

足部の働きは全身に影響が及ぶと言われることもあり、足部の乱れが前十字靭帯断裂などの膝の怪我につながっていると考えれることもあります。

ここで足部の機能や地面のコンディションといった要素がどのように影響を及ぼすのか、科学的根拠を踏まえつつご紹介していきたいと思います。

 

ポイント

  • 足裏の感覚が鈍くなることは前十字靭帯断裂と関わりがあります。
  • 足部のポジション次第では膝への負荷が高まることがあります。
  • 地面のグリップが強いなど必要以上に力を込めて結果的に膝に負担がくることもあるようです。

 

足部の機能と前十字靭帯損傷

足部の機能には感覚や動きといった様々な要素がありますが、これらの要素がどのように前十字靭帯への負荷へと関わっているのかみていきましょう。

足

 

足裏の感覚への影響

前十字靭帯断裂にともない足裏の感覚が鈍くなる可能性もあるようです。

  • 前十字靭帯断裂した人達は足裏や足首の感覚が鈍い傾向にあることが報告されています
  • 前十字靭帯断裂後の足裏などの感覚低下は膝の外反の負荷や衝撃吸収能力、膝関節の共同収縮などに関連していることが報告されています
  • 前十字靭帯損傷した人達の足裏にマッサージなどで感覚刺激することで足裏の感覚が鋭くなったり歩行時の衝撃が抑えられたという報告があります

前十字靭帯損傷には膝周りだけでなく、時には足元からその影響を受けているかもしれません。

足裏の感覚低下することで膝への負荷が高まったりすることがあるので、足元もしっかりとケアをしてきたいところです。

足部の機能と前十字靭帯への負荷について

 

足部のポジションによる影響

足元の動きは膝へと影響を与え、足部のポジションがよくないことで膝の負荷が高まってしまうこともあります。

(Teng et al 2017より引用)

  • 前十字靭帯断裂した人は歩行時の足首の底屈や背屈などの動きに変化がみられ、有意差はないが足部がプロネーション気味であったことが報告されています
  • 足部のプロネーションなど足のポジション次第では膝の外反の負荷を高める可能性があります5・6
  • 足のポジション次第でハムストリングスの筋活動が変わってくる可能性が示唆されています

足のアライメント

このように足部のポジションや動きが整っていないと、膝への負荷へとつながってしまうことがあります。

 

足底への圧力の違い

前十字靭帯断裂をした脚への体重のかけ方が変化し、足底への圧力にも変化が起こることがあります。

(Sugawara et al 2016より引用)

  • 前十字靭帯断裂した人の歩行動作を分析したところ、怪我をした脚は圧力がかかる範囲が狭い傾向にあったことが報告されています
  • 前十字靭帯断裂した脚は接地時間が短くなっていることが報告されています
  • 前十字靭帯断裂した脚は歩行中のかかとの圧力が減り、つま先への圧力が高まっていることが報告されています
  • 前十字靭帯断裂した脚は足底の圧力が内側に傾いている傾向にあるようです8・9

これらのデータに解釈の余地はありますが、怪我をした脚にあまり体重をかけたくない傾向が読み取れるかと思います。

脚の負荷を避けたい、脚のバランス感覚が低下している、などなど様々な理由によって足底の圧力が変化しているものと考えられます。

 

足部のアーチと前十字靭帯断裂

前十字靭帯損傷と足のアーチは少なからず関係している可能性があります。

(Beckett et al 1992より引用)

  • 前十字靭帯断裂した人は足のアーチが少しばかり柔らかい傾向にあることが報告されています10・11
  • 一方で足のアーチや足関節に大きな違いはないという研究結果もあります12

このように前十字靭帯断裂と足のアーチなどには関係があり、足部からの影響を少なからず受けているかと思います。

しかし、足部だけでなく膝や股関節など他にも様々な要因の影響を受けるため足だけが絶対的な要因ではありませんが、足の機能が高いに越したことはないでしょう。

足のアーチと衝撃吸収という役割について

 

シューズ

足部に何かしらの問題を抱えている人はシューズをその人に合ったものにするというのも選択のひとつの方法です。

インソールの処方

インソールやアウトソール、そしてウェッジなどを用いることで足部を整えることができます13〜15

一般的にインソールなどは効果を発揮することが多く十分な科学的根拠もあります。

 

インソールは様々な怪我に対して効果を発揮していますが、前十字靭帯断裂後のリハビリにおいてインソールやシューズが高い効果を発揮したという科学的根拠は弱い印象を受けています。

前十字靭帯損傷は膝周りの影響をより大きく受けやすいため、シューズを整えるだけで全てが解決するわけではないというところに注意が必要かと思います。

ないよりはあったほうがいいのですが、あくまで選択肢のひとつに過ぎないかと思います。

 

地面やグラウンドの影響

前十字靭帯は地面やグラウンドの状況といった足元の影響を受けることがあります。

 

地面のコンディションと前十字靭帯への負荷の違い

地面やグラウンドの状態次第では前十字靭帯への負荷が少しばかり高まることがあります。

サッカーの方向転換

  • 地面との摩擦が高い状況では方向転換動作時の膝への負荷が高いことが報告されています16。これは地面が滑らないため高いパフォーマンスを発揮できる、ある意味で多少無理な姿勢でも動くことができることの裏返しでもあるかと思います。
  • 天然の芝生が人工芝と比べて前十字靭帯への負荷が軽い傾向にあります17。なお研究では献体の前十字靭帯に実際に負荷をかけて調べています。
  • スパイクのありなしで前十字靭帯への負荷に大きな違いはみられなかったそうです17

このように地面が硬過ぎたり、摩擦が効きすぎる状況では前十字靭帯への負荷が少し高まってしまうのかもしれませんね。

 

地面のコンディションと怪我の発生率

実際の前十字靭帯断裂の発生率はどうなのかというと、晴れた日の乾いた地面での前十字靭帯断裂が多いそうです18〜20

雨の日の地面と比べると力が出しやすいため、結果的に前十字靭帯への負荷が増えているのかもしれません。

こういうデータがあるからといって雨の日のグラウンドがいいとはならない気がしますし、なんだか少し論点がずれてしまっている気もします。

雨の日の芝生グラウンド

 

天然の芝生のほうが怪我をしにくいのか?についても様々な議論があります。詳細は次の記事をご覧ください。

天然芝と人工芝で怪我の発生率に違いはあるのか?

 

いずれにしても、地面との摩擦が強過ぎたり、地面が硬すぎる状況で前十字靭帯への負荷が高まるということを裏付ける結果になっているような気がしますね。

負荷が劇的に増えるというわけでもなく、微増に過ぎないのでそこまで敏感にならなくてもいいと思いますが。

 

まとめ

足部の機能や足元のコンディション次第で前十字靭帯への負荷が高まることがあります。

足元のケアというのも選択肢のひとつとして考えてもいいかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Hoch JM, Perkins WO, Hartman JR, Hoch MC. Somatosensory deficits in post-ACL reconstruction patients: A case–control study. Muscle & Nerve. 2017;55(1):5-8. doi:10.1002/mus.25167
  2. Blackburn JT, Pietrosimone B, Spang JT, Goodwin JS, Johnston CD. Somatosensory Function Influences Aberrant Gait Biomechanics Following Anterior Cruciate Ligament Reconstruction. J Orthop Res. 2020;38(3):620-628. doi:10.1002/jor.24495
  3. Collins KA, Turner MJ, Hubbard-Turner T, Thomas AC. Gait and plantar sensation changes following massage and textured insole application in patients after anterior cruciate ligament reconstruction. Gait Posture. 2020;81:254-260. doi:10.1016/j.gaitpost.2020.08.117
  4. Ursei ME, Accadbled F, Scandella M, et al. Foot and ankle compensation for anterior cruciate ligament deficiency during gait in children. Orthop Traumatol Surg Res. 2020;106(1):179-183. doi:10.1016/j.otsr.2019.07.009
  5. Teng PSP, Kong PW, Leong KF. Effects of foot rotation positions on knee valgus during single-leg drop landing: Implications for ACL injury risk reduction. Knee. 2017;24(3):547-554. doi:10.1016/j.knee.2017.01.014
  6. Tran AA, Gatewood C, Harris AHS, Thompson JA, Dragoo JL. The effect of foot landing position on biomechanical risk factors associated with anterior cruciate ligament injury. J Exp Orthop. 2016;3:13. doi:10.1186/s40634-016-0049-1
  7. Beuchat A, Maffiuletti NA. Foot rotation influences the activity of medial and lateral hamstrings during conventional rehabilitation exercises in patients following anterior cruciate ligament reconstruction. Phys Ther Sport. 2019;39:69-75. doi:10.1016/j.ptsp.2019.06.010
  8. Sugawara K, Okada K, Saito I, Saito A, Wakasa M. Foot Pressure Pattern During Walking in Individuals with Anterior Cruciate Ligament Injury. J Am Podiatr Med Assoc. 2016;106(3):201-206. doi:10.7547/15-006
  9. Huang H, Keijsers N, Horemans H, et al. Anterior cruciate ligament rupture is associated with abnormal and asymmetrical lower limb loading during walking. J Sci Med Sport. 2017;20(5):432-437. doi:10.1016/j.jsams.2016.09.010
  10. Beckett ME, Massie DL, Bowers KD, Stoll DA. Incidence of Hyperpronation in the ACL Injured Knee: A Clinical Perspective. J Athl Train. 1992;27(1):58-62.
  11. Hertel J, Dorfman JH, Braham RA. Lower Extremity Malalignments and Anterior Cruciate Ligament Injury History. J Sports Sci Med. 2004;3(4):220-225.
  12. Jenkins WL, Killian CB, Williams DS, Loudon J, Raedeke SG. Anterior cruciate ligament injury in female and male athletes: the relationship between foot structure and injury. J Am Podiatr Med Assoc. 2007;97(5):371-376. doi:10.7547/0970371
  13. Christopher RC, Drouin JM, Houglum PA. The influence of a foot orthotic on lower extremity transverse plane kinematics in collegiate female athletes with pes planus. J Sports Sci Med. 2006;5(4):646-655.
  14. Bassiri Z, Eslami M. The Effect of Shoe Outsole Containing Nanoilica Particles on Knee Valgus Angle in Athlete Females with Anterior Cruciate Ligament Injury during Drop Jump and Single Leg Landing. Iran J Public Health. 2014;43(10):1466-1467.
  15. Yoshimura I, Naito M, Hara M, Zhang J. The effect of wedged insoles on the lateral thrust of anterior cruciate ligament-insufficient knees. Am J Sports Med. 2003;31(6):999-1002. doi:10.1177/03635465030310064201
  16. Dowling AV, Corazza S, Chaudhari AMW, Andriacchi TP. Shoe-surface friction influences movement strategies during a sidestep cutting task: implications for anterior cruciate ligament injury risk. Am J Sports Med. 2010;38(3):478-485. doi:10.1177/0363546509348374
  17. Drakos MC, Hillstrom H, Voos JE, et al. The effect of the shoe-surface interface in the development of anterior cruciate ligament strain. J Biomech Eng. 2010;132(1):011003. doi:10.1115/1.4000118
  18. Orchard J, Seward H, McGivern J, Hood S. Intrinsic and extrinsic risk factors for anterior cruciate ligament injury in Australian footballers. Am J Sports Med. 2001;29(2):196-200. doi:10.1177/03635465010290021301
  19. Orchard J. Is there a relationship between ground and climatic conditions and injuries in football? Sports Med. 2002;32(7):419-432. doi:10.2165/00007256-200232070-00002
  20. Scranton PE, Whitesel JP, Powell JW, et al. A review of selected noncontact anterior cruciate ligament injuries in the National Football League. Foot Ankle Int. 1997;18(12):772-776. doi:10.1177/107110079701801204

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