前十字靭帯損傷

前十字靭帯再建リハビリで反対の脚もトレーニングをする効果

前十字靭帯断裂後は筋力が簡単に回復せずに、膝の状態がなかなか改善しないことが珍しくありません。

早期の筋力回復のために色々な方法が生み出されていますが、怪我をしていない反対の脚も同時に鍛えるというのもひとつの方法として考えられています。

 

ポイント

  • 片方の手脚をトレーニングすることで反対の手脚にも一定の筋力増強効果があります。
  • 前十字靭帯再建後のリハビリにおいて両脚を鍛えることが筋力回復を早める可能性があります。
  • 反対側の脚を鍛えることの効果には一定の限界はありますが、リスクも小さく取りれやすい方法であると言えるかもしれません。

 

怪我をしていない脚へのトレーニング

片方の手脚へのトレーニングが反対側に対しても効果を生み出すということが言われたりすることがあります。

 

筋力強化の効果

片側レッグエクステンション

反対側への効果にはしっかりとした科学的根拠があり、片方の手脚をトレーニングすることで反対の手脚にも筋力増強効果があることがメタ分析による研究で明らかになっています

このため怪我をしていない脚をトレーニングすることで、怪我をした方の脚も少しばかり恩恵を受けられる可能性があると考えられるわけです。

 

脳神経による筋力への働き

片方の手脚のトレーニングでも反対側の脳神経を活性化されることが筋力増強効果を生み出しているのかもしれません。

  • 片方の脚をトレーニングすることで反対側の筋肉の脳神経の興奮度が高まることが明らかになっています2・3
  • 特にエキセントリック収縮が神経の興奮度を高め、筋力発揮を促進する効果が大きいようです
  • 反対側の筋肉の神経の働きを高めるものの筋肉自体の量が増えるわけではないようです4・5

このため片側のトレーニングによって反対側の筋肉の神経の働きが改善して筋力増加という結果につながっているものと考えられます。

 

前十字靭帯再建後の反対の脚へのリハビリについて

この反対側を鍛えるという方法を前十字靭帯再建後のリハビリへの応用するという方法が提唱されています

というのも前十字靭帯断裂後は筋力回復させることが簡単ではないため、少しでも筋力回復に役に立つ方法があるのならばリハビリに取り入れる価値があるためです。

前十字靭帯損傷後は筋力が簡単に戻らない

 

反対の脚によるリハビリの効果

怪我をしていない反対の脚へのトレーニングも行うことで筋力回復が早まる可能性があります。

トレッドミルランニング

  • ある研究では怪我をしていない方の脚へのトレーニングにより通常よりも筋力改善効果がみられたことが報告されています
  • 前十字靭帯損傷後において怪我をしていない脚も追加でトレーニングをしても怪我をした方の脚の筋力に違いは見られなかったとする研究結果が報告されています
  • 他にも怪我をしていない方の脚をトレーニングしても筋力発揮や膝の状態、片足ジャンプの飛距離などに大きな違いはないという研究結果も報告されています

このように効果の有無に賛否両論ありますが、怪我をしていない方の脚のトレーニングで一定の効果があるかと思います。

しかし、反対側のトレーンングによって神経の働きの改善を期待できるものの、実際にトレーニングをしているわけではないため筋肉量が増えるという効果が得られないため効果に限界があります。

 

エキセントリック収縮との組み合わせ

重りを下げる時に一般的に筋肉が引き伸ばされながら活動し、これをエキセントリック収縮といいます。

このトレーニング様式では通常よりも筋力強化に役立つなどの効果があり、重りをゆっくりとおろすことで筋力トレーニングの効果を高めるといったことが行われています。

  • 前十字靭帯再建後のリハビリで怪我をしてないほうの脚へのエキセントリック収縮へのトレーニングにより筋力がより強化されたことが報告されています10
  • 怪我をしていない方の脚へのエキセントリック収縮のトレーニングを取りれたことで膝の状態も良くなることが報告されています10・11
  • 一方でエキセントリック収縮でものトレーニングでも膝の状態や片足ジャンプの飛距離などに大きな違いはなかったとする研究結果もあります

わずかではあるものの、怪我をしていない方の脚へのトレーニングにおいてもエキセントリック収縮のによって少しだけ大きな効果が期待できるようです。

 

エキセントリック収縮の注意点

反対側の脚へのエキセントリック収縮によるトレーニングによって膝の状態が良くなっているという研究結果がありますが、ただ重りをゆっくりと下げているだけではないということです。特別な器具を使ったり、あるいはかなりの高重量を扱ったりとそのトレーニング方法次第では効果が変わることもあるかもしれません。

 

(Lesley et al 2018より引用)

また、反対側への脚へのエキセントリック収縮によって広範囲の脳神経の機能が改善するという研究結果があるのですが11、私はこれに少しばかり疑問を抱いています。

エキセントリック収縮は普段慣れない動きであるため脳の働きが活性化する効果が生まれるかもしれませんが、慣れれば脳神経を活性化する効果は小さくなっていく可能性があるということに注意したほうがいいかと思います。詳しくは次の記事をご覧ください。

前十字靭帯再建リハビリでのエキセントリック収縮と脳への刺激

 

反対側の脚へのエキセントリック収縮によるトレーニング自体を否定するほどのものではないかとは思いますが、念のため注意点として記載しておきます。

 

まとめ

前十字靭帯再建後は筋力が回復しにくく、少ししでも効果を高めるためには両方の脚をしっかりと鍛えることが役に立つかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Manca A, Dragone D, Dvir Z, Deriu F. Cross-education of muscular strength following unilateral resistance training: a meta-analysis. Eur J Appl Physiol. 2017;117(11):2335-2354. doi:10.1007/s00421-017-3720-z
  2. Kidgell DJ, Frazer AK, Daly RM, et al. Increased cross-education of muscle strength and reduced corticospinal inhibition following eccentric strength training. Neuroscience. 2015;300:566-575. doi:10.1016/j.neuroscience.2015.05.057
  3. Green LA, Gabriel DA. The cross education of strength and skill following unilateral strength training in the upper and lower limbs. J Neurophysiol. 2018;120(2):468-479. doi:10.1152/jn.00116.2018
  4. Farthing JP, Borowsky R, Chilibeck PD, Binsted G, Sarty GE. Neuro-physiological adaptations associated with cross-education of strength. Brain Topogr. 2007;20(2):77-88. doi:10.1007/s10548-007-0033-2
  5. Farthing JP, Chilibeck PD, Binsted G. Cross-education of arm muscular strength is unidirectional in right-handed individuals. Med Sci Sports Exerc. 2005;37(9):1594-1600. doi:10.1249/01.mss.0000177588.74448.75
  6. Lepley LK, Lepley AS, Onate JA, Grooms DR. Eccentric Exercise to Enhance Neuromuscular Control. Sports Health. 2017;9(4):333-340.
  7. Harput G, Ulusoy B, Yildiz TI, et al. Cross-education improves quadriceps strength recovery after ACL reconstruction: a randomized controlled trial. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2019;27(1):68-75. doi:10.1007/s00167-018-5040-1
  8. Zult T, Gokeler A, van Raay JJAM, et al. Cross-education does not accelerate the rehabilitation of neuromuscular functions after ACL reconstruction: a randomized controlled clinical trial. Eur J Appl Physiol. 2018;118(8):1609-1623. doi:10.1007/s00421-018-3892-1
  9. Zult T, Gokeler A, van Raay JJAM, et al. Cross-education does not improve early and late-phase rehabilitation outcomes after ACL reconstruction: a randomized controlled clinical trial. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2019;27(2):478-490. doi:10.1007/s00167-018-5116-y
  10. Papandreou M, Billis E, Papathanasiou G, Spyropoulos P, Papaioannou N. Cross-exercise on quadriceps deficit after ACL reconstruction. J Knee Surg. 2013;26(1):51-58. doi:10.1055/s-0032-1313744
  11. Papandreou MG, Billis EV, Antonogiannakis EM, Papaioannou NA. Effect of cross exercise on quadriceps acceleration reaction time and subjective scores (Lysholm questionnaire) following anterior cruciate ligament reconstruction. J Orthop Surg Res. 2009;4:2. doi:10.1186/1749-799X-4-2
  12. Lepley LK, Grooms DR, Burland JP, et al. Eccentric cross-exercise after anterior cruciate ligament reconstruction: Novel case series to enhance neuroplasticity. Phys Ther Sport. 2018;34:55-65. doi:10.1016/j.ptsp.2018.08.010

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