前十字靭帯損傷

体幹トレーニングと前十字靭帯損傷の関係

体幹の筋肉を鍛えることが重要であるということを耳にすることは珍しくなく、体幹トレーニングに取り組んでいる人も多いかと思います。

前十字靭帯損傷においても体幹部の働きが関わっており、体幹部をうまくコントロールすることは前十字靭帯損傷を予防する効果もあります。

 

ポイント

  • 前十字靭帯断裂時に体幹部が傾いていることが珍しくありません。
  • 特に体幹部の横方向への傾きは前十字靭帯損傷の発生率を高める可能性があります。
  • 競技特性を考慮した体幹トレーニングによって体幹の傾きや膝の負荷を軽減できる可能性があります。

 

前十字靭帯断裂時の体幹部の動き

前十字靭帯断裂した瞬間の映像を分析すると、体幹部が傾いていることが珍しくありません

(Hewett et al 2009より引用)

特に横方向に体幹部が傾いていることで膝への負荷が大きくなる可能性があります

骨盤の位置の変化と膝への負担

(Hewett and Myer 2011より引用)

このように前十字靭帯断裂に体幹部の傾きが関係していることがあります。

 

体幹部の傾きと前十字靭帯損傷の発生率

体幹部の傾きは実際に前十字靭帯断裂の発生率を高めるのか?データをみていきましょう。

前十字靭帯断裂

  • 前十字靭帯損傷をした人はエクササイズ中の体幹部の傾きが大きかったことが報告されています
  • 外部から抵抗を加えられた時に体幹部の傾きが大きいと将来の前十字靭帯損傷の発生率が高かったという研究報告があります。特に体幹部の横の傾きが怪我のリスクとの関係性が強かったそうです。

このように体幹部の傾きやすい人達は前十字靭帯断裂の発生率が少し高まる可能性があるようです。

 

体幹の筋肉と前十字靭帯損傷

体幹部の動きを上手にコントロールするためには体幹部の筋肉の働きが欠かせません。

 

体幹の筋力

一般的に体幹の筋力が強いほうが身体が安定すると考えられています。

腹筋

  • 腹筋の筋力が弱いスキー選手は前十字靭帯断裂をしやすい傾向にあることが研究報告されています
  • 一方で方向転換動作における体幹の筋肉の働きを調べた研究では、体幹の活動量や共同収縮は必ずしも体幹部の傾きに関係していないことが報告されています

体幹の筋肉が強いに越したことはないのですが、それだけで必ずしもスポーツ中の体幹部の傾きを防ぐことにつながるとは限らないことに注意が必要です。

 

体幹の傾きの評価

体幹部の傾き度合いを評価するには様々な方法が考えられますが、バランスボールに座った状態で目を閉じるというのもひとつの方法です。

こちらの方法は研究で使われており、前十字靭帯を断裂した人達はこのエクササイズでの体幹部の傾きが大きい傾向にあったそうです

(Noehren et al 2014より引用)

他にも体幹部に直接抵抗を加えるという方法もあります。この方法で体幹部が傾いていた人達は将来の前十字靭帯損傷の発生率が高かったというデータがあります

(Zazulak et al 2007より引用)

これらの方法にもやはり限界はあり、理想としてはスポーツの動きの中での体幹部のブレを減らすことです。

できるだけスポーツの状況を再現したものが望ましいと言えます。

 

体幹トレーニングの効果

体幹トレーニングに取り組むことで前十字靭帯への負荷を減らせる可能性があります。しかし、トレーニングの仕方などには注意や工夫が大切になります。

プランク

  • 6週間の体幹トレーニングで方向転換動作時の膝の負荷を減らす効果があったことが報告されています
  • 4週間の体幹トレーニングで左右へのジャンプ時の体幹の動きが安定し、膝の負荷も軽減されていることが報告されています
  • 一方で体幹トレーニングに取り組んでも体幹部の安定性が改善されず、膝の負荷も変化がないとする研究結果もあります

体幹トレーニングをやって体幹をガチガチに固めるだけで効果があるとは限らず、やはり競技特性を理解してスポーツに近い状況下で体幹をうまく使えるようになるようなトレーニングを行うことが大事になってくるかと思います。

 

まとめ

体幹部の傾きは身体のバランスを乱し、膝への負荷を高める要因へとなることがあります。

スポーツ中にも体幹部をうまくコントロールできるように、競技特性を考慮した体幹トレーニングを取り入れることが役に立つかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Hewett TE, Torg JS, Boden BP. Video analysis of trunk and knee motion during non-contact anterior cruciate ligament injury in female athletes: lateral trunk and knee abduction motion are combined components of the injury mechanism. Br J Sports Med. 2009;43(6):417-422. doi:10.1136/bjsm.2009.059162
  2. Hewett TE, Myer GD. The mechanistic connection between the trunk, hip, knee, and anterior cruciate ligament injury. Exerc Sport Sci Rev. 2011;39(4):161-166.
  3. Noehren B, Abraham A, Curry M, Johnson D, Ireland ML. Evaluation of proximal joint kinematics and muscle strength following ACL reconstruction surgery in female athletes. Journal of Orthopaedic Research. 2014;32(10):1305-1310. doi:10.1002/jor.22678
  4. Zazulak BT, Hewett TE, Reeves NP, Goldberg B, Cholewicki J. Deficits in Neuromuscular Control of the Trunk Predict Knee Injury Risk: Prospective Biomechanical-Epidemiologic Study. Am J Sports Med. 2007;35(7):1123-1130. doi:10.1177/0363546507301585
  5. Raschner C, Platzer H-P, Patterson C, Werner I, Huber R, Hildebrandt C. The relationship between ACL injuries and physical fitness in young competitive ski racers: a 10-year longitudinal study. Br J Sports Med. 2012;46(15):1065-1071. doi:10.1136/bjsports-2012-091050
  6. Jamison ST, McNally MP, Schmitt LC, Chaudhari AMW. The effects of core muscle activation on dynamic trunk position and knee abduction moments: implications for ACL injury. J Biomech. 2013;46(13):2236-2241. doi:10.1016/j.jbiomech.2013.06.021
  7. Whyte EF, Richter C, O’Connor S, Moran KA. Effects of a dynamic core stability program on the biomechanics of cutting maneuvers: A randomized controlled trial. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2018;28(2):452-462. doi:10.1111/sms.12931
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