前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷と脳の活動の変化

前十字靭帯断裂などの怪我をすると神経や脳にも影響が及ぶと考えられています。このような脳の活動の変化を理解することが怪我予防やパフォーマンスアップに役に立つかもしれません。

 

ポイント

  • 前十字靭帯を断裂した人は身体を動かす際に脳に大きな処理が求められる可能性があるようです。
  • 前十字靭帯断裂をした脚は感覚の精度が低下する傾向にあり、身体の動かし方により大きな注意が求められる可能性があります。
  • スポーツへの復帰に近づくにつれて無意識にコントロールできるようにすることが役に立つかもしれません。

 

前十字靭帯断裂と脳の働き

前十字靭帯断裂した人の脳の活動には違いがみられたそうです。

(Grooms et al 2015より引用)

  • 前十字靭帯を断裂した人は体性感覚(somatosensory)の活動が増えており1・2、意図的に動かす必要があるため処理量が増えている可能性が考えられます。
  • 前十字靭帯を断裂した人はバランスやコーディネーションに関わる小脳の活動量が増えていたそうです
  • 前十字靭帯断裂は言葉の認知に関わる舌状回(lingual gyrus)の活動が増えていたことや、視覚の認知に関わる下側頭回(inferior temporal gyrus)の活動が増えていた傾向にあったそうです
  • 前十字靭帯を断裂した人は感覚運動皮質の活動が低下していた傾向にあったそうです

要するに前十字靭帯を断裂した人は身体を動かすことに対して脳に大きな処理が求められる可能性があるというところでしょうか。

脳の活動の変化には様々な理由が考えられますが、そのひとつが負傷部位の感覚機能の低下が関係しているかもしれません。

 

前十字靭帯断裂と膝の感覚が鈍くなること

前十字靭帯断裂した人は関節の動きなどにより大きな注意や集中が必要であることが報告されています。

脳への影響

  • 関節を指定の角度に動かすように指示したところ、前十字靭帯断裂した人は処理の複雑さや注意を司る部分の脳波が増えていたそうです
  • これは前十字靭帯損傷によって感覚を司る神経の一部などがダメージを受けて機能低下していること等が考えられます。前十字靭帯断裂をした脚は感覚が少し鈍くなる可能性があり、脚がどこにあるのか?という位置感覚の精度が低下している傾向があったそうです

こういったことから前十字靭帯損傷をしてしまうと、関節の動きを把握しコントロールするのにより大きな注意が必要となる可能性があり、その結果脳の活動パターンも変化していることが考えられます。

前十字靭帯損傷におけるバランス感覚の低下について

 

無意識にコントロールできるように

前十字靭帯損傷をすると膝の関節の動きに意識が向きやすいことがあるかもしれませんが、スポーツへの復帰には無意識にコントロールできるようにすることが大切かもしれません。

特にスポーツでは相手選手やボールといった複雑な状況が生まれやすいことから、無意識下でも身体を適切にコントロールできることは重要になってくるかと思います。

スポーツにおける脳の認知や反応速度と前十字靭帯損傷

 

リハビリの初期においてはそれぞれの筋肉を細かく鍛えるために、身体の動かし方への意識が大切になりますが、スポーツの復帰に近づくにつれてボールの動きなど、徐々に外に意識を向けさせてみて無意識下での関節のコントロールに慣れさせていくことが役に立つかもしれません。

メディシンボールエクササイズ

しかしながら、こういった脳に対するアプローチによる怪我予防の効果は研究数が少ないため、経験や勘によるところが大きいかもしれません。

 

まとめ

前十字靭帯損傷などの怪我をすると関節の動きなどに意識が向けられ、より大きな処理が脳に求められることもあるようです。スポーツの復帰に近づくにつれて徐々に無意識化でも上手に身体をコントロールできるようにしていくことが役に立つかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

<参考文献>

  1. Grooms DR, Page SJ, Onate JA. Brain Activation for Knee Movement Measured Days Before Second Anterior Cruciate Ligament Injury: Neuroimaging in Musculoskeletal Medicine. J Athl Train. 2015;50(10):1005-1010.
  2. Kapreli E, Athanasopoulos S, Gliatis J, et al. Anterior Cruciate Ligament Deficiency Causes Brain Plasticity: A Functional MRI Study. Am J Sports Med. 2009;37(12):2419-2426.
  3. Baumeister J, Reinecke K, Weiss M. Changed cortical activity after anterior cruciate ligament reconstruction in a joint position paradigm: an EEG study. Scand J Med Sci Sports. 2008;18(4):473-484
  4. Kim H-J, Lee J-H, Lee D-H. Proprioception in Patients With Anterior Cruciate Ligament Tears: A Meta-analysis Comparing Injured and Uninjured Limbs. Am J Sports Med. 2017;45(12):2916-2922.

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