練習のしすぎなどでアキレス腱炎を発症することがあります。練習のしすぎによる慢性的な怪我は痛みが長期化することも珍しくなく、その怪我の原因から改善していくことがとても大事です。
アキレス腱の役割を理解し、アキレス腱がどのようにパフォーマンスや怪我のリスクと関係しているのかを知ることで、少しでも状態がよくするためのヒントになる可能性があります。
ポイント
- アキレス腱にはエネルギー伝達の役割があり、ランニングなどの推進力に貢献しています
- アキレス腱炎を持っている人はアキレス腱の強度が低下している傾向にあります
- ストレッチなどの柔軟性とアキレス腱炎の関係性には議論があり、必ずしも効果があるとは限らないようです
アキレス腱にはエネルギー伝達の役割がある
アキレス腱があることでバネのようにエネルギーを効率的に利用することができます。
- アキレス腱がバネのようといっても実際はかなり硬くほんの数ミリ単位の変化であることが多いと言われていますが、このアキレス腱の働きがランニング動作に大きく貢献しています1。
- ある研究ではアキレス腱が強いほどエネルギー消費量が少ない傾向にあるという結果が出ています2。これはランニング動作時の酸素消費量とアキレス腱の硬さの関係性を分析した結果となっています。
- 興味深いことにアキレス腱がマラソンの後半の失速と関係している可能性があるようで、実験で90分走った後はアキレス腱の強さが低下していたそうです3。そして同じ速度で走っても酸素消費量が増えていたようです。
このようにアキレス腱はラニング動作のパフォーマンスと大きな関わりを持っている可能性があります。
アキレス腱の強さが怪我の原因にもなりうる?
アキレス腱の強度の低下で怪我が起きやすくなる可能性があります。
- アキレス腱障害を持っているランナーの方が同じ動きでもアキレス腱により大きな負荷がかかっていたそうです4。
- ある研究でアキレス腱障害を持っている人達はアキレス腱の強さが低下していたことが報告されています5。
このようにアキレス腱障害を持っている人達のアキレス腱は弱くなっていることが原因ではないかと考えられています。
アキレス腱の強さは怪我と関係している可能性があり、エクササイズなどでアキレス腱の強さを改善していくことが大事になってきます。
足首の可動域による影響
足首の可動域がアキレス腱障害と関係しているのかについては意見がわかれています6。アキレス腱障害を持っていた人は足首の可動域が低下していたと報告する研究があれば、そうでないという研究結果もあります。
いずれにしても足首の硬さを改善するためのストレッチやケアの方法は比較的シンプルなものも多く、大きな手間がかからないことからストレッチなどのケアをして損することは少ないのではないかと思います。
シューズによる影響
身体に合わないシューズは怪我のリスクとなり、身体を痛めてしまうことへとつながります。
アキレス腱障害においても同様のことが起こる可能性があり、足元からしっかりと身体のバランスを整えていきたいとところです。
まとめ
アキレス腱の強さはランニング動作のパフォーマンスや怪我のリスクと関わってきます。
定期的なケアやエクササイズなどで、アキレス腱を良い状態に保つことが役に立つ可能性があります。
<参考文献>
Lai A, Schache AG, Lin Y-C, Pandy MG. Tendon elastic strain energy in the human ankle plantar-flexors and its role with increased running speed. Journal of Experimental Biology. 2014;217(17):3159-3168.
Fletcher JR, Esau SP, MacIntosh BR. Changes in tendon stiffness and running economy in highly trained distance runners. Eur J Appl Physiol. 2010;110(5):1037-1046.
Fletcher JR, MacIntosh BR. Changes in Achilles tendon stiffness and energy cost following a prolonged run in trained distance runners. PLoS ONE. 2018;13(8):1-17.
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