マラソンランナーにとって怪我は切っても切り離せないものです。
練習のしすぎはもちろんのこと、怪我のリスクは複雑な要因が絡み合って起こるもので、ランニング時のフォームや身体の使い方など様々な要因が影響していることがあります。
ポイント
- 足部のプロネーションはそこまでアキレス腱障害のリスクを高めるわけではないようです
- ブレーキがかかるようなランニングフォームがアキレス腱障害につながりやすいようです
- エネルギーのロスが大きいフォームは怪我につながりやすい可能性があります
足のアライメントと怪我の関連性
マラソンなどにおいて足部のプロネーションが注目されることが多いですが、アキレス腱障害にはそこまで関係していないかもしれません。
- マラソンランナーの怪我について調べた研究では、足部のプロネーションの角度が大きいからといって必ずしも怪我に繋がるわけではないようです1。
- ある研究で300名のマラソンランナーを2年間追跡調査したところ、足の外反などのアライメントの乱れが怪我と著しく関係しているわけではないという結果になったようです2。
このようにアライメントの乱れがそこまでアキレス腱のリスクが高いというわけではないようです。
足首のアライメントが決定的なリスク要因ではないものの、ひとつのリスク要因であるという点には変わりはなく、
こういったところを改善することで痛みが軽減する事例もあるかと思いますし、シンスプリントなど他の怪我のリスクとなり得えることも忘れてはいけません。
ブレーキがアキレス腱障害の一番のリスク?
ランニング動作中のブレーキが強すぎるとアキレス腱への負荷が増えてしまうかもしれません。
参照https://runpod.ie/braking-forces-and-running-related-injuries/
- 証明力が強いシステマティックレビューによる研究結果では、アキレス腱の怪我のリスクが最も高めるものがbraking forceと言われるものです3。
- 他にもランナー65名を15週間にわたり追跡調査した研究で、braking forceがマラソンの怪我の発生率に関係していたことが報告されています4。
- braking forceは脚がブレーキのように機能することで、地面からの反発力が後方に働く力を示しています。上の図のように進行方向とは逆方向に働く力のことですね。
ランニングで身体を前に進めようとしている時に、ブレーキをかけるような力が大きくなったら余計な負荷がかかってしまいますし、効率よく前に進むことが難しくなると考えられます。
正確な数値に測定するには専用の機器が必要ですが、ランニングフォームのひとつの着眼点になるのではないかと思います。
まとめ
大きな力を生み出してもそれが推進力にうまく変換できていないと身体への負荷が高まってしまう可能性があり、これがアキレス腱障害につながるのかもしれません。
<参考文献>
Williams KR. Biomechanical Factors Contributing to Marathon Race Success: Sports Med. 2007;37(4):420-423.
Messier SP, Martin DF, Mihalko SL, et al. A 2-Year Prospective Cohort Study of Overuse Running Injuries: The Runners and Injury Longitudinal Study (TRAILS). Am J Sports Med. 2018;46(9):2211-2221.
Lorimer AV, Hume PA. Achilles Tendon Injury Risk Factors Associated with Running. Sports Med. 2014;44(10):1459-1472.
Napier C, MacLean CL, Maurer J, Taunton JE, Hunt MA. Kinetic risk factors of running-related injuries in female recreational runners. Scand J Med Sci Sports. 2018;28(10):2164-2172.